第3話 100万人に一人の個性

営業事務部と総務部は一つの部屋を共有している。なので、自然と隆司と紗代子は会話する機会も増えていった。


話をしていくと、驚くことがたくさんあった。隆司と紗代子は1歳の年齢差があるが、隆司が生まれ、祖父母、叔母夫婦、いとこが暮らし、隆司にとってとても身近だった街で紗代子が生まれ育ったこと、紗代子も隆司を見て、「どこかで会ったことがある」と思ったこと、しかしお互いの経歴を確認すると、全く接点がなかったこと。隆司が愛着を持ち、紗代子が生まれ育った街で、二人ともが同じ場所、その地方を代表する大きな川にかかっていた、一風変わった歴史を持つ橋を大好きだったことなどなど。


さらに、隆司と紗代子の経歴は全く一致点はなかったのだが、紗代子の話を聞くと、実はこれまでにもニアミスをしていたことも分かった。紗代子は高卒で、隆司は大学を出て就職をしたが、隆司が大学時代、2週間インターンでお世話になった会社に、紗代子はその1年前まで働いていたのだ。隆司がインターン中、職場のいろいろな方から何度も、


「去年まで在籍していた子がいてね~」


という前振りとともにユニークなエピソードがいくつも語られていた。思い出を語る人はみんな、ニコニコと懐かしそうに、そのユニークなエピソードを語っていたことを、隆司は覚えていた。


この営業所に来て、紗代子のことを知るうちに、その「ユニークな子」が紗代子であることを隆司は確信した。誰にもまねのできないユニークさを持ちつつ、誰からも親しまれる不思議な女性である紗代子。彼女でなければ、あれだけたくさんユニークなことをして、あれだけの人からニコニコと思い出話をされるわけがない。



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