言質を取ったど~!
「それで、いつまでこの状態でいるつもりなんですか?」
翔哉は大体、話も済んだにも関わらず、いつまでも白い空間に二人して居続ける状態が堪らなくなり、そう彼女に質問したのである。
「ん? 良いじゃない? キスするくらい!」
また意味不明な返しをされて流石に呆れてしまう翔哉。
彼女はだんだんと近付いてきて、ついに翔哉の肩を掴んで顔を近付けてきたのだ。
「えっ? 触れられないんじゃ無かったの?」
「ん? 肉体的にはね! 霊体同士で触れ合う事はできるわよ!」
彼女はそう言うと翔哉の事を好き勝手に貪り始めた。
「この流れのまま合体しちゃいましょう♡」
そう言って翔哉の局部に手をやるマリーザ。
「ダッ、ダメです! まだアスともした事無いんですから!」
「お姉さんと練習! そう男子は予め練習しとく事が大事なのよ? それくらい言われなくてもわかるでしょ?」
「あっ、あぁーーーっ!」
事が終わってマリーザは言う。
「小屋の表に転移陣を設置しておいたからね! 会いたくなったら、いつでもすぐに会いに来れるわよ♡」
挙動不審な翔哉の様子を見てマリーザは更に釘を刺す。
「私の言う事をちゃんと聞いてくれないなら、巨パイちゃんにこの事バラシちゃうからね! て言うかあなたは元々、私の物なんだし、本来、気を遣う必要なんて何処にも無いんだけどね......」
「もう何でも良いです......とにかく良くわからないけど、世界を救う為に頑張ります!」
「あら? 飲み込みが早いわね! ちゃんとわかっているんじゃない?」
「だって和睦するって事は、戦争しないって事でしょ? それって世界平和って事ですよね?」
「そうね...ただ確かに人間とは和睦するけど、どの道、戦争にはなっちゃうわよ? 天使ちゃん達とね!」
「そうなんですね......まあ、いろいろと最善を尽くしてみますよ!」
「うん! 期待してるわね! それじゃこれ!」
そう言って彼女が渡してきたのは、紫色の宝石が付いた指輪であった。
「何ですかこれ?」
「転移陣を起動する為の鍵みたいな物よ! 誰でもここに気軽に来れたりしたら、困っちゃうでしょ? だから、これを持っている者とその従者しか転移できないようにしてあるわ!」
いつまでも名残惜しそうに翔哉に抱きついて離れないマリーザに彼は言う。
「あの? 今回は時間とか大丈夫なんですか?」
「ん? 大丈夫に決まってるでしょ? 私のテリトリーなんだから! あの時はあなたが急にこの世界に転移させられそうになっている事に気付いて、慌ててあなたの事をジャックしたのよ。神気持ちだって気付かれたら、きっと始末されちゃうでしょ?」
「そのまま助け出すとかは、出来なかったんですか?」
「それが出来たなら勿論そうしてたわよ! こちらにもいろいろと都合って物が有るの! 一応ね」
何となくでは有るが、ようやくいろいろとわかってきた翔哉は、そろそろ暇したい雰囲気を目で訴えかける。
「何よ! 冷たいじゃない! そんなに私の事が嫌いなの? どいつもこいつも私の何処が一体いけないって言うのよ!」
目に涙を浮かべながらそう言うマリーザに対して、良くはわからないが同情心が芽生える翔哉。彼は彼女の肩を抱き、無言で口づけをした。
彼女は翔哉の首に即座に手を回し、ガッチリとホールドして彼を離そうとはしない。
そうして再びマリーザの蹂躙劇が繰り広げられたのだ。
二回目の行為も致して、すっかり満足したマリーザは、翔哉に対して念押しする。
「ねぇ、翔哉くん! 絶対に頻繁に会いに来てくれるって約束してね! あんまり間をあけると、お姉さんいじけちゃうからね!」
「はい! わかりました女神様!」
翔哉の返事に不満そうにマリーザは言う。
「二回も致しといて女神様は無いでしょ? マリーって呼んで欲しいわね!」
「マ、マリー?」
「愛してるよって言って!」
「えっ? そ、それは......」
「博愛よ博愛! 広く愛する事は良い事よ?」
「じゃ、じゃあ......愛してるよ!マリー」
その言葉を聞いたマリーザは、まるで言質を取ったと言わんばかりに急に不敵な笑みを浮かべ叫び出す。
「言った言った言った! 言ったよね!? これであなたは完全に私だけの物ね!」
「えっ? 博愛は?」
「そんなの嘘に決まってるでしょ? 大体、私に取ってその言葉は、一番ヘドが出る言葉なのよね! そんな事を言って毎度毎度、女を周りに侍らせてばかり! もうウンザリなのよ!」
何だか謂れの無い事ばかり言われて、責められているのはおかしいとは思いつつも、下手に反抗的な態度を取れば永遠に終わりそうもなかったので、もうどうにでもなれと思った翔哉は、彼女の事を抱き締めながら「ごめんねマリー」と言って彼女の頭を撫でてやったのである。
そんな彼の行為に落ち着きを取り戻す女神様。
「もう一回して~♡」
翔哉の局部を触れながら、彼女はまたとんでもない事を言い出したのだ。
三度目の行為も無事終了し、二度目の念押しをするマリーザ。
「絶対、絶対、絶対だからねー! 頻繁に私に会いに来てね!」
「うん、わかったよ。何かまたわからない事が出てきたら聞きに来るね!」
「やりに来るの間違いだよね?翔哉くん!」
「聞きに来ます!」
「やりに来て♡」
「はい...やりに来ます......」
いつまでも終わらないので、仕方なくそう返事する翔哉。
「はぁ♡ 早く肉体同士でもしたいわね? そう言うわけだから、1日でも早く鍵を取って来てね!」
「うん、わかった! 頑張るよ!」
翔哉がニッコリ微笑みなからそう言うと、再び空間は歪み始め各々の風景が変わって行く。
「大丈夫?マリー?」
翔哉達が寛いでいたログハウスの居間と同じような部屋で、短めの髪型をした銀髪の少年が、彼女を気遣ってそう言った。
「心配かけてごめんねアッシュ! 死ぬほど神気を使っちゃったけど、少し休めば大丈夫よ!」
「マッサージする?」
「うん、神気が回復したらね☆ 霊体だけの合体だと生殺しも良いところだから、アッシュには後でたっぷりと御奉仕してもらう事にするわ♡」
「まさかマリー? 浮気してきたの!? 僕と言うものが有りながら!?」
「そんな事するわけないでしょ? もうアッシュったら、そんな事を心配して本当お馬鹿さんね☆」
そう言って彼の頭を優しく撫でるマリーザ。彼は目を細めて、とても気持ち良さそうである。
一方、翔哉の方も元いた居間に戻って来ており、アス達の無事を確認した後で彼女達を揺り起こしていた。
「う、う~ん......ハッ! 女神様は?」
「あっ、女神様もう来てるの?」
「女神様、来てるのにゃか?」
アス、メル、ニケの順でそう叫んだ。
「ううん、もう帰ったよ!」
「えっ!『はぁ?』にゃんでにゃ!」
「話なら僕が全部、聞いておいたよ......」
少しアスに対して後ろめたそうに、視線を逸らしながらそう言う翔哉。
メルが質問する。
「神託は? どんなだったの?」
「武闘大会を開いて優勝した者が、樹海の王様になって統一国家を築けだってさ。巫女達にも神託を出したって...だったらわざわざ来させる必要有ったの?って思うけどね!」
翔哉の言い様に三人は固まった。ここは紛いなりにも女神様のお家なわけである。何処に目が有り耳が有るとも限らない。
メルは周りをキョロキョロしながら、小声で彼を窘める。
「ショ、ショウヤ! そんな失礼な事、言うもんじゃないだろ!?」
心配する彼女の気持ちもわかるので、翔哉は「うん、ごめんね」とだけ言って話を続ける。
「僕の力の秘密については良くわからなかったけど、アスの件については何となくわかったよ!」
自分の件についてはわかったと言われて、アスは興味深そうに翔哉の事を見つめていた。
場合によったら本人がショックを受けかねないので、翔哉はあくまで「マリーザ様の言葉だけど」と前置きした上で話出す。
「アスは女神の使徒になった時、あまり嬉しく無かったりしたんじゃない?」
「えっ!? あっ...う、うん、実はそうなんだよね......」
普通は泣いて喜ぶべき女神の使徒の啓示。それを嬉しく無かったと言うその時の気持ちについて、彼女の口からその理由が語られ始めたのである。
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