22、接近察知
話の内容に迷って先週の投稿がなかったです。申し訳ありません。
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「アンリちゃんナナネさんが来たよー」
樹木人の里から帰って来て数日。コービー一家の庭でエナノと罠作りをして遊んでいるとニーニョさんが来た。
「おはよ~。撫でに来たわ~」
ニーニョさんに着いて来たナナネさんがほわわんと笑う。
「はい、ソルおいで」
「ピピッ!」
小人の里では定番の罠作り遊び。最初はドッキリ程度の落とし穴から初めて徐々に殺傷能力の高い罠作りにグレードアップしていく。物騒な遊びだが魔物蔓延る森の中にある里だ。これくらいしなければ生き残れないのだ。
なので狩りは基本罠を仕掛けてそこにかかった獲物を仕留めるらしい。樹木人の里に向かう時にズバズバ魔物を倒していた里長は例外なのだ。
兎も角最近お姉ちゃんに覚醒したエナノに遊び方を教えて貰っていたアンリは手を止めて近くの木に止まっていたソルを呼ぶ。
「ふふ、嫌なところがあったら言ってね~」
ナナネさんとは樹木人の里から帰った時に話をしてそこからソルを撫でに来る約束をしていた。ソルも良いと言ってくれており、座ったナナネさんの膝の上に乗ったソルに嬉しそうに笑ってくれた。
「フワフワだわ~!」
撫で始めたナナネさんは優しい手つきで撫でてくれた。ソルも気持ち良さげでうとうとしている。
「どれ、俺も…イテッ!何で噛むんだ!」
「ピッ!」
何処からか現れた里長がどさくさに紛れて撫でようとしたがソルは嘴でつついて拒否する。
「チッ、本当に人見知りというか…」
「いえ、別にそこまで人見知りではないですよ。ニーニョさんとエナノちゃん、それにピグミーさん達も触れています」
他にも遊んだ子供達も触れているし里でも私と普通に話してくれる小人達は全員一回は撫でられている。
「ハッ!?…成る程。ソルは女好き………」
「パパとネンさんとかナンさんも撫でてたよ!ねっ!ママ!」
「そうね。イスンにも少し触らせてくれたし…」
里長の的外れな推理はエナノとニーニョさんによって即座に否定された。
「俺だけ!?触れてないの俺だけ!?ナンデ!?」
だが、逆に自分だけが触れていない事に気が付いて叫びだす。
「「「さぁ……」」」
里長だけが未だにソルに触れるのを許してもらっていないのか誰も分からないので首を傾げる。
「ピピィ!」
理由はソルのみぞ知る…………のかもしれない。
ナナネさんの気のすむまで撫でた後、ニーニョさんが持ってきた軽食を皆で食べていた時。
「………っ!ナノス、里の外に多数の人がいるわ。まだ距離があるけど恐らく小人の里を目指している可能性が高い」
急に顔を上げたナナネさんが何時もの喋り方ではない緊迫感のある声で里長に伝える。
「方角は?」
「日の出の方角から少し左。里への道があるところ」
「あそこか…分かった。見に行って来る」
里長も何時ものおちゃらけた雰囲気を引っ込めてナナネさんと二三言だけ会話すると走って行ってしまった。
「ごめんなさい。今日は帰るわ。またね」
「はい。また来て下さい」
里長が行ってからナナネさんも帰る支度をして帰ってしまった。
怒涛の展開に唖然としていた私にニーニョさんが説明をしてくれる。
ナナネさんは
それを聞いて最初に小人の里に着いた時、里長が直ぐに来たのに合点がいった。
「ナナネさんのスキルには〈敵意察知〉もあるという話だわ。里長がアンリを迎える決断をしたという事はナナネさんが反対しなかったという事。アンリは敵意がないと思ったから誰も意義を唱えなかったの」
弓の腕前が百発百中の里長に広い感知範囲のナナネさん。この二人が里の防衛に大きく役立ち、里の小人達に信頼されているのだとニーニョさんの話で知った。
◇◇◇
「あれか」
「数多いですね」
「この森で鎧か…友好的とは見えないな」
ナナネの感知に多数の反応があったと聞いた里長のナノスは手の空いていた数名を連れて反応した人の群を見付けて監視していた。
わらわらと数えるのが面倒になる位にいる人は魔物避けに仕掛けた小人の罠に数回かかっているらしく、警戒して進んでいた。お陰で速度がゆっくりなので辿り着くまで時間がかかりそうだ。
ナナネの感知は多岐に渡る。気配、魔力、敵意等々…
だから分かる。ナナネが何時もの喋り方をしない時は察知した者に敵意がある時。つまり目の前の人の群は小人に敵意を持って行動している。
「里長。見てくださいあの旗のシンボル。あれって…」
1人が指し示した旗を見るとそこには教会のシンボルがあった。わざわざ手間のかかった刺繍の旗が偽物な訳がないし、教会の名を謀るのは自殺行為。まず本物だろう。
「…帰るぞ。対処を考える必要がある」
教会が来る心当たりはある。というよりいると言うべきか。目を細めたナノスは2名を非常時の連絡係に置いて里に帰る為に木々を飛んでいった。
◇◇◇
ポールは苛立っていた。
「よしっ!この地面は平気ウワァァァ!」
拾った木の枝で地面を叩き、安全を確めた教会騎士が足を踏み出した瞬間、紐が現れて騎士の足に巻き付くと空中へと上昇する。
「た、助けてくれー!」
ぶらーんと揺れながら決して遊んでいる訳ではない騎士は必死に助けを求め、他の騎士が数名がかりで助ける。
………一体この流れを何回、何十回繰り返しただろうか。
憤る感情を押し込めて表面上は不機嫌に顔を歪める。本来ならもっと怒りたいくらいだが何とか押さえていた。
「も、申し訳ありませんポール司祭!卑劣な小人の罠がどんどん増えておりまして、中々進めず…」
「そんな事は分かっている。わたしが怒っているのは小人だ。教会の司祭と騎士をまさかこんな罠で迎えるとは、礼儀がなってない」
騎士達に守られている他の司祭はポールの言葉に頷く。確かに女神信仰であれば教会の旗を掲げて進むポール達を無視しないだろう。
「そうですねっ、やはり森に籠っているだけあり女神様の恩恵に対する感謝も薄いのでしょう」
近くの街が地元の騎士によると小人は大抵が10歳程度の身長で性格は素直。身長が低い為、弓等の遠距離攻撃を主体にするそうだ。
信仰している神については分からなかったが、こんなに自分たちが困っているのに来ないのなら恐らく土着信仰だろう。土着の神を信仰している亜人は多い。その神を創造したのは女神だというのに、女神は信仰しない。小人もそんな亜人の内の一種なのだ。
「だが。罠が増えているという事は里が近い証拠だ。早く行くぞ」
本来は魂喰らいの『超過勤務』を見ていないか聞きに行くという事だったが、更に目的が増えた。女神様の良さを伝え、どれ程魂喰らいが醜いのか教えてあげなくては。
やる気が出たポールは止める騎士を押し退けて罠を踏み抜き壊して歩み始めたのだった。
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