第38話 大魔法使いアシュレイ
「ちょっとまったぁぁ!」
俺たちが局長室から出ようとした時、どかーんと扉が開いて1人の魔法使い風の少女が乗り込んできた。
可愛らしい魔女っ子風の装備品、オレンジ色の髪は、耳の下でツインテールに結ばれていて、気の強そうな猫目には見覚えがある。
——主人公パーティーの魔法使い アシュレイ・ヴァーブ
二次創作(大人)では圧倒的1位を誇る彼女、俺も彼女を見ると自然と二次創作の方を思い出してしまう。実際に3次元として見てみると……圧倒的エロさ!
「あなたよね、最近話題の魔術師団長って。私はこの街で1番の魔法使いよ。私を連れて行かないなんてそんなこと言わないわよね?」
勝ち気な女の子! 王道ツンデレ!
「あぁ、アシュレイ。今は緊急事態なの。聖女様のこと聞いたでしょう。ダヴィド様御一行はすぐにでも旅立っていただかないと」
「局長、お言葉ですが私は役に立てますわ。むしろ、私がダヴィド・イーゴさんと一緒に成長することで最強の魔法使いになれるわ! おほほほほ!」
アシュレイは厨二病的な発言も多いツンデレだが、実際に遭遇してみると……愛くるしいというか面白いというべきか。しっかり、本気で言ってるんだな。よし、連れて行こう。
「俺はかまいません。アシュレイさん、よければ力を貸してください。俺はダヴィド・イーゴ。こっちは回復魔法使いのユフィー、騎士のクルネに忍のシズカです。みな我が教団のメンバーです」
「へぇ……噂のマゴアダヴィド教ってやつね。ふーん、確かに粒ぞろいだわね。そっちのユフィーって子は魔法学園で見たことあるかも。回復と攻撃でクラスが違ったけれど。よろしくね」
コミュ力は高いらしい。アシュレイは俺たち全員と握手をすると丁寧にスカートを広げて挨拶をした。
「コホン。彼女はアシュレイ・ヴァーブ。この保安局・魔術師部隊の精鋭よ。少し性格に難があるけれど実力は確かよ」
「まぁ、ゴッドシリーズの魔法が使える人に出会える機会なんてそうそうないんだし。この優秀な弟子を持って幸せに思っていいのですよ? さ、行きましょう。師匠」
俺、弟子にするなんて言ってないが。
けれど、アシュレイの勝ち気な上目遣いにくらっときて思わず首を縦に振った。ユフィーたちは新しい仲間に大喜び。
「さ、一刻を争う事態だ。一旦、屋敷に戻ってグリコに魔力チャージだ!」
***
「南の山頂には、山が見えたら東側から着陸するのが良いわね。ほら、地図をみて」
屋敷に戻ってきた俺たちはグリコにたっぷりの魔力をチャージしたあと、食堂で腹ごしらえをしていた。
ローミアが作った栄養満点の肉料理に舌鼓をうちつつ、作戦会議を繰り広げる。アシュレイはかなり情報を確認してからきたらしく、アイス伯爵という魔王四天王について饒舌に語った。
無論、俺はゲームをプレイしたことがあるので知っていたが彼女、かなり優秀である。
「あぁ、そうしよう。ちなみに、魔王四天王のことはどこで?」
「それなら保安局で情報共有されていますわよ。それも、上層部だけね。私はたまたま聞いていただけだけど」
堂々と盗み聞きである。
「クルネ、シズカ。アシュレイさんのいう通り奴の弱点は火だ。そして今回の目標はアイス伯爵を倒すことではなく、聖女様を無事に助け出すことだ。俺たちは聖女様の魔力をサーチしてそこを目指す。クルネはモンスターの除外、ユフィーは回復を中心に。シズカは隠密行動を頼む。アシュレイさんは……」
「アシュレイでいいわ。弟子なんですもの」
「アシュレイは、クルネのサポートに周りつつマッピングを頼む。おそらく奴の根城のどこかにマップがあるはずだ」
ゲーム内ではダンジョンマップを手に入れると進みやすくなる仕組みだったが実際はどうだろうか。バフバッファローがいた洞窟にそれらしきものは落ちていなかったが……。
「えぇ、きっと屋敷の設計図か何かがあるはずね。やってみるわ」
なるほど、設計図という認識なのか。となれば今後のダンジョン系は難しくなるかもしれないな。
「お兄ちゃん、グリコ。早くお空をビューンで飛びたいよ!」
「了解、みんな準備はいいか!」
「お〜!!」
俺たちはこうして、終盤ダンジョンの一つ「アイス伯爵の屋敷」に向かったのだ。
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