第28話 魔物の大群


「俺は馬車で寝るわ」


 川沿いの宿屋に着いたとき、俺はすぐにこう言った。というのも、宿屋の部屋はゲームと同じく4人で1部屋。

 その上、ベッドはぼろぼろで藁が飛び出てちくちくしていそうだった。


「そうですか……、では私たちは部屋で」


 ユフィーたちと分かれて馬車に戻り、俺はふかふかの椅子に寝転んだ。最高級で広い馬車の中、やっと1人になれた。

 転生してからほとんどの時間を女の子と過ごしているが……


——渋いおっさんのマスターがいるバーとか行きたい……!


 まさか、ハーレム展開になるとこんな願望が出るなんて自分でも思っても見なかった。周りが女子だらけだと嬉しいどころか結構気を使う。

 そういえば、高校に上りたての時に女が多い学校へ言った友人が「男女比は半々が一番」って言っていた。

 当時の俺は「ふざけんな」と返した覚えがあるが彼の言っていることは正しかったのかもしれない。



***


 翌朝、馬車を宿屋に停めて俺たちは橋を渡った。

 橋を渡るまでは、スライムなどの弱い魔物しかいなかったが様子はいっぺん。ゲームの中では中盤に出てくるようなモンスターが次々に襲いかかってくる。


「くっ、火遁!」

 シズカが大きなツノを振り回すオオツノオニカブトや魔法攻撃を仕掛けてくる魔法スライムをシズカの炎が吹き飛ばした。

 後ろではジョハンナが、さびたよろいを纏った骸骨を切り倒しユフィーがバブ魔法を追加で唱える。


「キリがないな」


「これ、村にたどり着けるんでしょうか」


 ジョハンナが起き上がったシビレゾンビを倒してため息を着いた。


「よし、下がってろ」


 俺は杖を天に掲げて、精一杯の力を使って唱えた。


「ゴッドファイアー」


 すると巻き起こった大きな炎が当たり一体を燃やし尽くしていく。魔法スライムは蒸発し、オオツノオニカブトは飛び上がって逃げていった。

 俺は良いところで魔法をストップすると、俺たちの目の前には大きな道ができていた。まっすぐに村まで続いている。

 パリパリと草が焦げ、煙が立つ。それが魔除けにでもなっているのか俺たちに襲いかかってくるモンスターはいなくなっていた。


「す、すごい……」


 ジョハンナの声が漏れると、どんと俺の背中に抱きついたのはユフィーだ。


「教祖様、すんごい! うわぁ……、強いモンスターも一撃ですね。この道ができてしまったら村人さんたちを移動させるのも楽ですね。やっぱりうちの教祖様が一番ですっ」


 そうも褒められるとこそばゆいがちょっと嬉しい。


「さ、村へ向かうとしますか」


 そう言った時、少し遠くの岩陰で何か動いたような気がした。


——子供……?


「教祖様、どうかしましたか?」


 ユフィーだけでなく、シズカもジョハンナもきょとんとしている。


「いや、なんでもない。いこう」


 俺たちは村へと向かって歩き出したのだった。



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