4章 初めてのクエスト!
第19話 新しい仲間と……
ドラゴンを使役できるようになれば、開拓も一気に進む。荒野に散らばる枯れ草や瓦礫を全部烈火で溶かし、山々に住んでいるモンスターもドラゴンを見れば一目散に逃げ出すだろう。
そのうえ、ドラゴンが落とす素材はかなり高く売れるので資金繰りも潤沢になる。
また、領民を集めるのにもドラゴンがいれば安心感を与えられるに違いない。
「そういえば、クルネさんのジョブって戦士ですか?」
ユフィーが準備をしながらそう聞くとクルネは「いえ、私は上級ジョブの騎士です」と答えた。
FGGというゲームに出てくるキャラクターには「ジョブ」と呼ばれる役割がある。例えば、戦士というジョブであれば物理型で魔力は低いがHPが高くて打たれ強い。
ユフィーは「回復魔法使い」なので魔力は豊富にあるが打たれ弱く物理攻撃や魔法攻撃もできない。
ちなみに、このゲームはこのジョブがかなり多くてそこが面白さの一つだ。例えば、上級職である騎士の中でも炎攻撃に特化すればさらに上の「炎の騎士」に派生でいたりする。
聖女は回復魔法使いの最上級職でユフィーを聖女にするのは非常に大変だった思い出ある。
「騎士、かっこいいなぁ。教祖様は大賢者なので完璧ですね」
ちなみに大賢者とは攻撃魔法使いの最上級職で炎・氷・雷・水の魔法を全て覚えていること、さらには補助系の魔法をコンプリートする必要がある。
最難関ジョブだ。
「シュカさんは行かれないのですか?」
クルネに言われてシュカはプイッとそっぽを向く。
「私はただのメイドよ、行かないわ」
「盗賊でしょ?」
ユフィーに言われてシュカはため息をついた。
「そうだけど、今はここのメイドよ。それにモンスター相手に戦ったことはなしい。ローミアのそばにいないと。悪いけどパス」
初期ジョブはキャラクターの適性によって決まっているが、どうやらその設定はこちらの世界でも同じらしい。盗賊は器用さや素早さが高くトリッキーな攻撃が仕掛けられたり、素材を入手しやすくなったり宝箱の鍵を確率で開けられたりする。
「ユフィー、留守はシュカたちに任せて出発しようか」
過激なビキニアーマーと過激なバニースーツの破壊力に興奮しつつも俺は屋敷をでて聖女の部屋へと向かった。
***
「まぁ、2人ともお強い装備をつけているのですね」
アマリスは少し羨ましそうにユフィーたちを見ながら言った。この世界の露出感覚は少し狂っているのでユフィーたちは自慢げに胸を張る。
「さて、紹介するわね。はいってらっしゃい」
聖女の部屋に入ってきたのは、黒髪に真っ白な肌。黒いミニ浴衣にニーハイ網タイツソックスを履いた忍びの女だった。
「シズカと申します。この度、聖女アマリス殿の命で同行するようにと……」
「シズカさん。そんなに硬くならなくていいのよ。ふふふ、可愛いでしょ?」
アマリスはシズカの頬を撫でると俺に自慢するように彼女の背中をぽんと押した。シズカは照れながらも俺に無礼にならないようにと頭を下げた。
——まじかよ
一方で俺は大混乱中。
なぜならこのシズカは主人公パーティーに仲間入りする「忍」である。物語の中盤で主人公が船を手に入れたあと訪れる忍びの国での一悶着のあと、彼女はパーティーに仲間入りするのだ。
「初めまして、ダヴィド・イーゴと申します」
俺は思わず日本風のお辞儀をすると、シズカは不思議そうに、そして期待に膨らませた顔でこちらを眺める。
その顔を見てから俺は「ここは日本じゃないのに」と気がついて慌てた。
「ダヴィド殿、忍びの国の作法をご存知で?」
「え、あぁまぁその昔に行ったことが」
「なんと、我が村にぜひ」
「あぁ、機会があれば訪ねさせてもらいたいが……私は忍びの国にとってみれば異教徒の教祖。難しいかと」
シズカの顔を少し曇る。忍びの国はかなり閉鎖的な設定になっていて主人公も最初に訪れる時は苦労したんだよなぁ。
この顔をみるにシズカの村で起こっている事件は解説していなさそうだ。主人公が問題を解決すると忍びの国との国交がさらに活性化して平民街に温泉宿ができるんだっけか。
「期間限定のメンバーとなりますが、よろしくお願いいたします。私は忍。隠密調査や特殊な技が使用できます。よろしくお願いします」
ぺこりとシズカは頭を下げた。
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