第18話 聖女様からのクエスト
「えっと……おはようございます?」
朝、シュカに起こされて食堂に降りるとそこにはさも当然のごとく、いけしゃあしゃあと聖女様が鎮座していた。
「おはよう、ダヴィドさん」
寝起きの俺、ボサボサの頭に寝巻きのローブで中途半端なイケメン顔も台無しである。
一方で美味しいバターの匂いがキッチンからするのはローミアが自慢のパンケーキを焼いているせいだろう。
「えっと……我が屋敷にどうしてアマリス様が?」
「それはね、貴方たちマゴアダヴィド教にお願いしたいクエストがあってやってきたの」
アマリスは優しく笑っているが、なんだか含みのある瞳をしていた。もしや、俺が彼女と距離を置こうとしていたことに気がついている……?
確かに、慈善活動団体として協力するとは言ったが積極的に彼女に会いに行くとは言っていなかった。基本的に彼女から呼び出しがあれば行くくらいで、できれば付かず離れずに良い印象だけ残しつつ、こっちはこっちの作業をしようと思っていたのだが。
「わざわざいらしていただくなんて」
「だって、ダヴィドさんはお忙しいでしょう? だからね?」
あぁ、バレてら……。女の勘怖いな。
「ははは……とんでもないです。ところでクエストとは?」
「西の洞窟の奥にある水晶を取ってきてほしいの。普段なら優秀な保安局の騎士がいってくれるのだけど、最近欠員が出たそうで難しいと言われてしまってね」
——そんなクエスト聞いたことがないぞ。
俺は、主人公に振られるべきクエストが来るのかと思いきや全然聞いたことがないものだ。
「欠員、ですか?」
「はい、なんでもかなり優秀だった騎士が辞めてしまったとか」
アマリスは事情を知らないがおそらくそれはクルネだろう。俺がマゴアダヴィド教を一旦解散したことで物語が少しずつ変わっているのかもしれない。
「そうでしたか、水晶といいますと?」
「西の洞窟にはね、魔法の力がこもった泉があってそこに沈む水晶を、聖女の間にある聖水のツボに沈めることで利用しているのです。けれど、つい先日にその水晶が何者かによって盗まれてしまって。その上、西の洞窟には魔物が出るようになったでしょう?」
なんか、アマリスの話し方がすごく親しげだ。タメ口と敬語をうまく混ぜられるとこう……心を掴まれてしまう。その上、じっと目を見つめて話してくれるのもすごくいい。すごくいい……。
「教祖様、ぜひお受けしましょう」
ユフィーはノリノリで目を輝かせている。クルネの方を確認すると「モンスター、強い、戦う」とこちらも戦闘狂モード発動中。
いつも通りだ。
「かしこまりました。そのクエストは我が教団で引き受けましょう」
俺の返事にアマリスは笑顔になる。聖女様に恩を売ると考えればお安い御用だ。
「あの、聖女様。西の洞窟に巣食うモンスターとは?」
クルネがたまらず質問するとアマリスの表情が曇る。
「怒り狂ったドラゴンが……いるとの目撃情報が」
「ドラゴン⁈ ダヴィド様! このクルネにお任せを! お任せを!」
クルネがいつものクールを忘れて取り乱すとユフィーも同じく目を輝かせる。
そう、この世界で「ドラゴン」は強い物に従う存在である。FGGの主人公も物語の中盤でとある火山地帯のドラゴンを倒し、従えるストーリーがあるのだがそれがまた最高に気持ちがいい。
「ドラゴン、ですか」
「はい、目撃情報によればそのドラゴンはかなり攻撃性が高く近寄ることすら難しいと。しかし、そのようなドラゴンがなぜ西の洞窟に止まっているのかもわかりません」
この付近は、物語の2周目でもあまり強いモンスターがいなかったはずだ。だが、俺が行動を起こしたことによって何かしらの変化が生じているのかもしれない。
「では、調査も含めて行ってきましょう」
「でも、人手が足りないのではと思って、こちらでもう1人メンバーを用意してみたの。だから出発する前に、聖女の部屋にいらしてね。祝福を授けたいし」
話が一通り終わるとアマリスはシロップたっぷりのパンケーキをお上品にナイフで切って口へ運ぶ。
あまりの美味しさに頬を押さえてリアクションをする彼女は「聖女」というお堅い職業を忘れてただの女の子になっていた。
「さ、カリカリベーコンも焼けましたよ」
ローミアが俺のパンケーキの上にカリカリベーコンと溶かしたバターを乗せる。甘さとしょっぱさで最高の朝食だ。
本当は味噌汁も恋しいけど……いただきます!
***あとがき***
お読みいただきありがとうございます!
次章ははじめてのクエスト編! 新しいヒロインも登場します!お楽しみに〜!
読者の皆様に作者からの切実なおねがいです。少しでも「面白い!」「続きが気になる」「ヒロインが可愛い!」と思っていただけたら広告下の☆で評価するの+ボタンからぽちっと3回よろしくお願いします。
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