第7話 お風呂と新しい信徒


 新しい屋敷の中でも俺が一番こだわったポイントは「風呂」である。しっかりと大きな湯船があることを条件に、大工たちに相談した結果……よくファンタジーアニメで見るようなヨーロッパ風の大浴場に落ち着いた。

 大きな噴水みたいな湯船の真ん中には、女性の像が立っており、彼女が抱える水差しからお湯が流れ出る仕組みとなっている。

 その上、洗い場も広くなぜか時代背景に見合わないシャワーがあるがあれは魔法の力だと信じこむことにした。


「うぃ〜、極楽〜」


 大きく手足を伸ばして適温の大浴場に浸かると一気に疲れが取れていく。乳白色の魔法湯は少し甘い香りがして、浮かんだ花びらが高級感を漂わせる。

 西洋風の世界ではあるがFGGは完全に日本産のゲームなのでこういうところは日本人が考えた、日本人に都合の良い設定なのかもしれない。

 水も肌に合うし、石鹸もしっかりと髪用・体用で分かれている。バスタオルもふわふわだ。


 明日は、ユフィーのいうように街に出て困っていそうな子に声をかけて…・、そうだなメイドと料理人を探せれば良いか。

 メイド、ちょっとえっちなメイド服を受注して……2人くらいほしい。欲を言えば、庭師や大工なんかも常駐させておきたい。ユフィーのいうように全員俺に従順な信者の女の子ばかり。ビバ・ハーレムライフ。


「失礼します」


 ぽちゃん、という水音ともに細くて白い足が目に映る。

 湯気でよく見えないが、小さいタオルで裸体を隠した少女は桃色の髪を後ろでお団子にしていて、ぽっと赤くなった頬を綻ばせた。

 彼女はそのまま首まで湯に浸かると俺の方へ近寄ってくる。


「こうしてお風呂に入るのは初めですね。教祖様」


 ユフィーは恥ずかしそうに腕を組むと、胸の肉がぐっと寄る。確信犯か天然か、彼女は俺を上目遣いで見つめる。


「そうだな、前は狭くて暗い地下の一室だけだったからな」

「はい、このような大きなお屋敷で一緒にいられるのは嬉しいです」

「そうか、けど風呂はどうして?」

「それは、やっぱりお世話になっている教祖様のお背中をお流しするのはユフィーの役目だと思ったからです」


 背中を流す、という非常に日本的な思考をもっているのもこのゲームの開発元が日本だからだろうか。

 いや、今はそんなことどうでもいい。死んでもいいくらい幸せな状況なのだ。愉しむ他なかろう!


「ありがとう、クルネは?」

「クルネさんなら、夜に出現する魔物の偵察だ! とかいってお屋敷の外にいますよ。お誘いしたのに……恥ずかしかったのでしょうか」

「クルネは傭兵だからな。それに真面目だし」

「ええ、そうですね。いずれ彼女も信徒にしましょう」

「ユフィーは熱心だな」

「もちろんです! だって、教祖様は世界一ですもん」

「そうかよ、ありがとう」


 ちゃぽん、と彼女が動いて水が揺れる。横並びになった俺たちは腕がふれあうほど近くて、視線の先にはピンと呼ばしたユフィーの足が見える。お湯が乳白色だから全体像は見えないがそれがまた良い味を出していた。


「ユフィーはクルネさんと違って戦うのも苦手だし、回復魔法だってまだまだ全然だけど……おそばに置いてくれますか?」

「あぁ、もちろんだとも」

「では、ユフィーはずっとお側にいてもよいのですか?」

「俺はそうして欲しいと思っているよ。君がそれでいいのならね」

「そろそろ、お背中をお流ししますよ」


 俺は促されるまま、洗い場へと移動し用意してあった椅子に座った。すると、ユフィーは俺の後ろに立ってまずは髪を洗い始める。

 人にシャンプーしてもらう気持ちよさと時折、首や背中に当たる柔らかい感触。


「どこか、おかゆいところはございますか。まぁ……」

「ないです、ハイ」

「ふふふ、教祖様ったら」

 ユフィーは軽く上を向いている俺の額にそっと触れると「流しますよ」と言ってシャワーをかける。

 これ、好感度MAXになったらどうなってしまうんだろう。俺と俺の息子は果たして持つのだろうか。

「次はお背中を洗いますね」

 ユフィーはそういうと海綿に石鹸を当てて泡立てると、優しく俺の背中を擦った。首筋から背中、腰の辺りまでを優しく擦られてなんだか不思議な気持ちになる。

「前ももちろん……」

 ユフィーがあろうことか俺に後ろから抱きつくような形になって海面を俺の胸に当てた時、浴場のドアが開く音がした。


「なんて破廉恥なっ!」

 振り返るとそこにはクルネが顔を真っ赤にして立っていた。ユフィーよりも彼女の方がグラマラスなのでその分タオルで隠しているとはいえ、刺激が強い。

「破廉恥じゃありませんよ、こうして洗っているだけなのですから」

 としたり顔をしていそうな声色のユフィーは見せつけるように俺に後ろから抱きついてむぎゅむぎゅと押し当ててくる。

 それをみたクルネはさらに真っ赤になって……


 あろうことか、


「抜け駆けするなんて!」


 と言い放った。お堅いクルネのことだから俺に対して怒るパターンかと想像していたが違ったらしい。彼女は俺の目の前で膝立ちになると俺の足を洗い始めた。タオルで隠れているものの、大きな谷間が目に入り俺は血流が速くなる。


「あぁ、そっちもユフィーが洗うはずだったのに」

「クルネはお金をいただいて傭兵をしている身、奉公するのは私の役割なのです」

「えぇ〜、教祖様のお世話は信徒であるユフィーがするんですよ」

「わ、私だって……信徒……になります」

「じゃあ、クルネさんも覚悟と愛はあるんですか?」

「へっ?」

 クルネが手を止めると。ユフィーは俺の頬を後ろからそっと撫でて

「いずれ、私たちは教祖様の奥さんになるんですよ。教祖様のような優秀な方の子供たくさん……ふふふ」

 クルネはこの状況とユフィーの言葉から色々と想像して完全にショートしたらしい。真っ赤になって倒れてしまった。


「クルネさん⁈」

「クルネ⁈」

「私ったら、からかいすぎちゃったかも」

「ユフィー……クルネは純粋なんだからやめとけよ」

「けれど、信徒は1人増えましたよ?」

「ユフィーは本当に熱心だな」

 

 俺は腰にタオルを巻き、意識を失っているクルネを抱えて風呂場を後にした。にしてもユフィーのやつ……。さっき言っていたことは本当だろうか。

 俺は教祖として、彼女たちを……?


——けど、ホラー映画なんかではそういう行為をしている=死亡フラグであるし今は拒否っとこう


 俺は背中に感じた柔らかい推しの感触を思い出しつつ、フラグ回避のために我慢することにした。




***あとがき***


お読みいただきありがとうございます!

次章はハーレムメンバー集合編! お楽しみに〜!


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