第9話

 昨日まで東京にいたのに今は北海道の新千歳空港にいた。

 一度行ってみたかった北海道! こんな形で来るとは思わなんだ。


 で、冬樹の車に乗り向かったのは北海道のとある農村。

 父さんは脱サラし思い切って農業を始めたらしい。20年前から。


「北海道っていっても暑い……」

「最近は温暖化も進んでるからな。そろそろ親父たちの家だ。今は時期も時期だし田んぼにいるかもな……」


 インターホンを押してもなんの反応もない。

 とりあえず探すことにした。周りに家はほとんどなく、納屋のようなものがありトラクターが何台も置いてある。

 トラクターの方に向かっていると若い男性がトラクターを弄っていた。


「あ、お客さんすか」

「あ、うん。父さんと母さんは……」

「父さん? 父さんと母さんならそこに」


 と言いかけた時だった。

 母親と目が合う。そのまま母親が駆け寄ってきて私も思いっきりビンタしてきた。


「ふぼぉっ!」

「母さん!? 何してんのお客さんに!」

「バカ! バカ娘がっ!」

「ちょ、話聞いて……。言い訳を聞いてくれ!」

「バカっ……」


 母は涙を浮かべていた。


「おかえり、夏月」

「た、ただいま……」

「若いな。あれから20年経ってるっつーのに」

「これから訳話すよ……」


 ということで訳を話した。

 母さんと父さんが目をギョッとさせている。


「タイムスリップ?」

「この時代に?」

「あぁ。僕も耳を疑ったんだけど本当らしい。この若さもそうなんだけど……。2004年以降の知識がない」

「え、マジで? てか夏月さんって何者?」

「お前の姉だよ秋人」

「うぇっ!?」


 秋人って言うんだ。ってか私の弟?


「……いつの間にか弟もう一人できてんの?」

「姉さんが消えた2年後にな……」

「俺の姉っつーけど若くねえ?」

「16だからな。2004年からタイムスリップしてきたって言ってんだろ」

「マジ?」

「マジだ」


 世界って不思議だよね。


「じゃあ出て行った訳じゃないのね?」

「うんこしてたらタイムスリップしてたんだよ。私にも何が何だかわかってない」

「不思議なこともあるもんだなぁ……。この時代に来たからいなくなってたってわけかい」

「そゆこと。20年後の未来で父さんたちが農業始めてるなんてビックリだよ」


 むしろサラリーマン時代より生き生きしてないか。

 父さんはなんか複雑な顔をしていた。母さんもなんか訳わからない様子。


「ってことで、ただいま」

「おう……」

「……夏月、さん。今何歳ですか」

「16」

「歳下……。歳下の姉かぁ」


 歳下ですね。

 だってまだ高校一年生ですしね。


「で、これからどうするんだ?」

「どうしよ」

「うちに残るなら残るでもいいんだが」

「流石に田舎には……」

「……僕のところくるの?」

「そうしよう。弟になら気兼ねなく迷惑かけられる」

「昔から変わってねぇー……」


 変わる訳ないだろ昨日の今日だぞ。私はまだ高校生の青二才なのだ。

 子どもだし仕方ない。東京の方が色々と便利だし。ほのかちゃんもいるし。


「そうか。ま、それならいい。行き先わかってるならまだいい」

「そうね。ふふ。とりあえずご飯にしましょうか」

「オッケー」


 私は立ち上がり台所に……。


「あんた座ってなさいよ」

「ご飯にすんでしょ。手伝わされてんじゃんいつも」

「そうだけど……。うーん……」


 なに、手伝わない方がいいの?









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