第7話
家に帰ってきたのは夕方ごろだった。
20年で美味しい料理屋も増えていたし、見慣れないチェーン店もあり時代が経過したなぁとしみじみ感じる。
ただいま〜と帰ると、桐花くんが誰かに電話していた。
「はい……。では後日……」
電話を切り私たちが帰ってきたことに気付いたようだ。
「水原」
「なんですかい?」
「明日、お前の弟が俺の家に来るそうだ」
「冬樹が?」
「そうだ。お前の弟は東京で弁護士の仕事してるんだってな」
「へぇ。まぁたしかに私と違って頭良かったからな」
テストはいつも満点だった気がする。
勉強をしろと強制されてたわけではないけどめちゃくちゃ好きで勉強してたガリ勉?
「弟いるんだ夏月に!」
「そー! 私と違って出来がいいからねぇ」
「それとなんだが……。過去に水原と同じような事例がないかできる範囲で調べたんだが何件かあった」
「あったの?」
「鹿児島、大阪、愛知、神奈川、新潟でお前と同じような時期に謎の失踪を遂げた高校生がいたそうだ」
「そんなに?」
「同じ時期にだ。なんか不思議だよな」
同じ時期に5人……いや、私含めて6人か。
「この事件も全部とまでは言えないがタイムスリップしてる可能性はないか?」
「あー、あるかも」
「お前と同じようにもしかしたら警察に捕まってるかもしれんな」
「……助けるの?」
「助ける義理はないが……。一応、新潟県警に確認したところ住所不明の男子高校生が高校に侵入したとして留置されているようだ」
となると私と同じ時期にタイムスリップしたやつか。
私だけじゃなかったんだな。なんつーか少し安心。
「助けてあげましょうよ。きっと困ってるわ」
「事情が事情だからな。俺が行ってくる。悪いんだが明日、春那任せていいか?」
「任せて。弟くんとは面識あるから」
「頼んだ」
同じ時代に6人がタイムスリップだなんて不思議なこともあるもんだ。作為的なものも感じる。
月刊ムーとか読んでるとこういうオカルトとか興味出ちゃうよね。私割となんでも興味持つタイプだったからね。
「……明日になったら過去に戻ってないかなぁ」
「希望的観測だそれは」
「だよねぇ」
とりあえず明日弟と会ってからだな。
弟と会って……。それからどうしよ。弟と一緒に北海道へいくか。流石に冬樹は両親の住所も知ってるだろうし両親にただいまと言いたい。いや別に家出したわけじゃないんだけど。
「で、さっきの電話は母さんたち?」
「ああ。見つかったと言ったらバカ娘と怒ってた」
「……マジ?」
「事情は会って説明するっていったら弟が東京にいることを教えてくれてな。お前の弟が引き取りに来る」
「私家出少女扱いじゃん」
「家出のようなもんだろ」
「不可抗力でしょうが」
トイレしたらタイムスリップするなんて思わんやろ普通!
私だって戸惑ったんだぞ! トイレから出て教室戻ったら知らない人たちばかりで! ウキウキで授業に戻ろうとした私の高揚感を返してほしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます