第4話

 私の家があった場所はマンションになっていた。


「えぇ……」

「お前の家の人はな、お前が見つからず探し続けたが行方不明になって7年が経過して死亡扱いになってな……」

「……心中?」

「北海道に引っ越した」

「そこはちゃうやろ」


 っていうか北海道!?

 ずいぶん思い切った場所に飛んだなー。てか生きてるんだ。よかった。私がいなくなって憔悴してただろうけど北海道で生きてるんならよかった。いつか会いに行こう。

 だがしかし、私の家がないとなると……。


「私、もしかしてホームレス? 野宿?」

「になるな」

「……桐花くん! 泊めて!」

「とくると思った。一応妻には連絡しておいた」

「妻? 結婚してんの!?」

「あぁ、19歳の時にできちゃった婚を」

「お前できちゃった婚とか……計画性……」

「うるせえ」


 というか未来の桐花くんは結婚してるのか。まぁ、顔立ちは整ってるしな。でも誰と結婚したんだろう?

 春那の好きな人が桐花くんだったんだが……。春那は失恋しちゃったんだろうか。と思いながら桐花くんが運転する車で桐花くんの家に向かう。


 桐花くんは一軒家にお住いのようで、桐花くんが扉を開けた。

 すると、女の子がソファに座っていた。


「ん、パパおかりー」

「おうただいま。母さんは?」

「パパをしばくためのもの取りに行ってる」

「……なんで?」

「女を連れて帰るって言ったらそりゃ怒るでしょ」


 伝え方。

 すると、背後に殺気を感じ振り返った。


「あなた……」

「ひっ!?」

「そっちが連れ帰った女……」

「ん? 春那?」

「え……」


 なんと桐花くんと結婚していたのは親友の春那だった。

 春那は高校生の時より顔立ちが少し落ち着き、エプロンが似合う女性になっていた。

 春那は私を見て驚いていた。


「……夏月?」

「夏月? 母さんも知り合いなの?」

「夏月!」


 春那は私に抱き着いてきた。


「どこいってたの! あんた……。私ら必死に探したんだから!」

「それについて今から説明する」

「説明?」


 食卓に座り、桐花くんが事情を説明していた。


「つまりその夏月さんは母さんたちが高校生時代だったときの時代からやってきたってこと?」

「そんなことがあるの?」

「本人が高校生の見た目なのと、2024年今現在のことを何も知らない。そう考えるのが妥当だろう」


 あ、春那の手料理美味い。肉じゃがの味がちょっと濃いめで私の好みの味。


「母さんの同級生が私と同い年って信じられねー……」

「そうね……。でも、よかったわ。夏月の顔を久しぶりに見れた」

「春那もなんか母親の貫禄……」

「そりゃ一児産んでますもの」

「同い年だったはずなのに年齢離れちゃったなぁ」

「本来同い年なら年齢離れることもないんだがな」


 もう二人はいい大人になったわけだ。

 ……私はまだ高校生のままなんですけどね。私ってどうなってるんだろ。戸籍とか。もう死亡扱いになってるから戸籍はないわけだし。

 

「春那お母さん」

「……あんたにだけはお母さんって言われたくないわ」

「だってその年齢差じゃん」

「あんたの母親じゃないわ」

「じゃあ春那おばさ」


 そう言いかけた時、横に包丁が飛んできた。


「おい! 包丁掠めたぞ!?」

「おばさん?」

「その年齢差だろうが! お姉さんって柄じゃねえじゃん!」

「おばさんも気に食わないわ」

「わがままー! ってか包丁投げるなよ!」

「レプリカよ。安心しなさい」


 安心できるか!


「今まで通り春那でいいだろ」

「そうする……」


 私は味噌汁を啜った。


「んで、これからどうするのよ。夏月が過去から来たとして戸籍は? 住所は?」

「しばらくはうちで面倒見るしかねえだろ……」

「面倒言うな。いやならもう諦めてホームレスになる」

「それはやめて。心配だから」

「この歳だと働くにもいろいろハンデあるし家だって借りれないだろ」

「だよなぁ。未成年だから保護者の同意必須だよな」


 保護者は今北海道だし、今戸籍がない。

 死亡届が出てた人間の戸籍ってどうなるんだろ? 


「戸籍は復活できるはずだ。認定死亡じゃなくて失踪宣告だから……見つかったという報告があれば復活はすると思う。その手続きは俺がする。春那はとりあえず今の時代の常識を教えてやってくれ」

「え、昔は常識違ったの?」

「昔はな……2000年代くらいからやっとデジタル化が進んでいったんだ。だが……スマホはなかったな」

「そうね」

「すまほ?」


 なにそれ。

 と、疑問に思っていると春那が見せてきた。薄い黒い板一枚。


「これなに?」

「スマホ」

「すまほ?」

「老人でももっとわかるのに基礎知識がない分なにがなんだかわかってないわね」

「まぁ、夏月は割と頭悪かったから……」

「……運動大好き少女でしたので」

 

 頭悪いのは関係ないだろ!









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