第3話
桐花くんと私は思わず見つめ合った。
「えと、お知り合いですか? 桐花さん」
「あ、あぁ……。というか、なぜここに? 君は20年前行方不明に……」
「え?」
「ん?」
今なんていった?
行方不明? 私が?
「私が行方不明? ないない。ただ普通にトイレしに行っただけだけど」
「いや、そのあと戻ってこなくて捜索したが見つからず死亡届が出されてるが」
「うせやろ?」
「本当だ」
桐花くんが私の目の前に座る。
後ろの警察官の人がスマホで調べ始めると、たしかに20年前に行方不明として捜索願が出されていたらしい。
私も見せてもらうと、紛れもなく私の写真で私のかわいらしい顔が映っている。
「そっくり……てか本人? 若くね?」
「20年前で高校生ってことはもう30代だろ? 若くね? 女子高生でも通じる若さだぞ」
「いや女子高生ですけど」
どうなってるんだろう。
パラレルワールドっていう線じゃないの?
「……お前、もしかして20年前のままなのか?」
「ままなのかっていっても私普通にまだ女子高生なんですけど」
「……そういうことがあり得るのか?」
「そういうこと?」
「バックトゥザフューチャーとかわかるだろ。あれだ」
「あー……タイムスリップ!?」
え、うそでしょ?
ということは、私はトイレしたら20年先の未来にタイムスリップしたってこと!? こういうのは普通過去に飛ばされるもんじゃないの!? 懐かしいなーとか、過去の自分は何してるかなとかノスタルジーに浸りつつ自分の存在が消えないようにどうにか未来に戻るってのがストーリーだろうが!
「タイムスリップ……? 桐花さん、なにいってるんすか」
「水原、今の総理大臣は?」
「え、尾泉純二郎」
「違う。今は岸科という人だ」
「えっ」
誰?
「え、誰?」
「ニュース見てないんですか?」
「ニュースも何も……朝父さんがかけてるけど小泉純一郎だって!」
「……今のメジャーリーガーといえば?」
「イイチローでしょ? かっくいいよねー」
「今はコタニだ」
「誰だ」
さっきから知らない名前ばかりなんですけども。
コタニって誰だ。凄い人なの?
「今、お前が好きだったアイドルは?」
「Berry工房」
「今は星〇アイだ」
「誰だそいつ」
「べりー……なにそれ?」
「べりぃ工房?」
知らないんですかあのアイドルを。
「じゃあ最後。お前が最近買ったゲームタイトルは?」
「星のカー〇ィ鏡の大迷宮」
「今のカービ〇はロボボだろ?」
「いや、今の最新作はWiiリメイクだ」
なんか知らん単語ばかり出てくる。
これが未来の会話……?
「……マジで未来に来ちゃったの?」
「マジでお前過去から来たな」
「……未来の私探しても?」
「見つけられる自身があるなら」
……うそでしょ?
ということは異世界でもなくパラレルワールドでもなく、私は20年先の未来に来ちゃったということ?
「……SF!」
「お前テンション上がってない?」
「そりゃあがるよ! 未来だよ未来! 私が過ごしてた時より技術とか進歩してるんでしょ!? みてーーーーー!」
「ポジティブだなお前……。とりあえずこいつの身元は俺が保証する。介抱してやってくれ」
「わ、わかりました!」
「いろいろと手続きはあるが……。とりあえず今後どうする?」
「どうするって?」
「どこに住む?」
「そりゃ私の家でしょ! 未来の父さん母さんに……」
「あぁ、お前の家はないぞ」
「え?」
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