第47話 アリアの帰宅

「やっとつきました?もうクタクタですのぉ。」

アリアがそう言いながら俺に寄りかかってくる。


ー結構長い道のりだったなー

俺らは馬車に揺られながらアリアの故郷のハールド伯爵領に向かっていた。


「遠すぎますの。私は別に帰らなくてもいいんですけどね!」


ーそういうわけにも行かないだろ。学校もしばらくやらないだろうし、クーリッヒもあの状態だー


「そういう時こそ冒険者として依頼をこなさなければならないのです!」


「お嬢様、絶対ハールド伯爵の前でそんなことは言わないでくださいね。」

執事の男が不安げに言った。


「当たり前ですの。お父様に言ったたら絶対辞めさせられますもの。」


それはそうだろう。貴族の娘が冒険者をしているなど聞いたことないし、貴族社会的にもあまりいい顔をされないだろう。


「失礼します。もうすぐ伯爵邸に到着いたします。」

外の護衛の騎士の隊長が馬車と並走して報告する。



「お父様!お母様!ただいま戻りましたわぁ!」


「おぉ、アリアおかえり。大丈夫だったかい?」

厳しそうな顔をした壮年の男性。アリアの父親が満面の笑みでアリアを迎える。


「大変だったでしょ?ゆっくり休みなさいね。」

アリアと同じ金髪の美女。アリアの母親がアリアを抱きしめながら言う。




それにしても、アリアの家はお金持ってるなぁ。

家も城見たく大きくて綺麗だし、ところどころに飾ってある美術品も高そうだ。


街も豊かで整備されているし、人も多く活気がある。

ハードル伯爵、アリアのお父さんは優秀なのだろう。


一息つき、アリアとアリアの両親はアリアのお父さんの執務室でまた集まっていた。


「ア、アリアその隣のスケルトンは従魔なのかな?」


「はい!スケさんといいますの。授業でテイマーの選択授業がありまして、それを受講していますの。」


「そうか。どこで従えたんだい?」


「死の迷宮ですの。」 


「もっといいモンスターをテイムしたほうがよかったんじゃないかな?騎士も連れて行ったんだろ?」


ギクっ!

アリアが目線を逸らす。


「この子がよかったのですの。」


「…まさか迷宮に行くのに護衛を連れてなかったのか?」

お父さんがそう言い、隣のお母さんの目が釣り上がった。


「おほほー。連れて行ってましたわよ?」

アリアは汗を流しながら目を逸らして言う。


「あとで騎士達に聞いておこう。」


アリア怒られること確定である。


「まったく。ほんとにお転婆なのですから。誰に似たのでしょうか。」

お母さんがやれやれといった雰囲気を出すが、となりのお父さんがジト目でお母さんのことを見つめていた。

たぶんお母さん似なのだろう。


「そうだ。着飾ってパーティーにでも行ってくるといい。オラーツ公爵家の招待状が来ていたぞ?ここはうちと仲が悪いが有力な貴族の子女たちも大勢来る。行って損はない。」 


「えー、私あの子嫌いですの。」


「オラーツ公爵の子がか?なんでだ?学校でなにかあったのか?」


「あの子いつも嫌味を言ってきて、従魔のワイバーンを自慢して来ますの。」


あぁ、あの縦巻きロールのお嬢様のことか。


「なに?ワイバーン?」


「はい、ワイバーンです。」


「ハードル伯爵家とオラーツ公爵家は仲が良くないのは知っているな?我らは国王派、向こうは貴族派だ。とくに我らハードル伯爵家とオラーツ公爵家とは度々問題を起こしている。貴族としての格はむこうのほうがかなり上だが、財力、武力では我らの方が上だ。だからいつも決着が着かずわだかまりある。貴族とは舐められてはいけない。騎士をつけてやるから新しいモンスターを捕まえてくるといい。彼女も私兵を使ってワイバーンを捕まえたのだろう。この辺だと…ダブルヘッドベアーなんかどうだ?ワイバーンにも負けないランクのモンスターだ。」


なるほど、だからあんな小娘がワイバーンなんかを従えられていたのか。


「いやです。スケさんで十分です。」


「いやいや、スケルトン1匹では馬鹿にされてしまうぞ?」


「ふふん、スケさんはその子のワイバーンを追い払っちゃうくらいすごいんですの。それにお話できますし!」


「おいおい、さすがにワイバーンとスケルトンではランクが違いすぎる、相手するのは難しいだろう。それに話すことができるくらい知能をもつモンスターはかなり上位のモンスターだぞ?」


ー話せるよ?ー


「「喋った!?」」

アリアの両親は前のめりになって驚いた。






珍しいモンスターを従えてるからまぁ、オッケーってことになりました。




アリアは学校に通うことができなくなったので、しばらくは実家で貴族社会の勉強と家庭教師がつくようになった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る