第41話 警戒する魔王達

「ふぉ、通せ。」

ルーが答えた。


しばらくしてノックがされ2人の美女が円卓の間に入ってくる。


「失礼する。私が蜘蛛の一族の長 ナクアだ。」


「ふぉ、ルー・チャルロイドじゃ。忙しいところ急に呼び出してすまなかったな。空いている席に座ってくれ。元々ブーモルが座っていた席じゃ。」


「ブーモル?」

ナクアが不思議そうな顔をする。


「族長が倒した豚です。美味しいって食べてたじゃないですか。」

ナラがナクアがブーモルのことを忘れているので、後ろから伝える。


「え?あぁ、一番食べ応えがあった豚か。」


ナクアたちはそう言いながら言われた席に座る。


「ふぉ、ブーモルは手強かったかね?」


「いや、手強くはないな。強いて言うなら美味しかった。」


「ふぉふぉ、そうか。では、いくつか質問させてくれ、お主達はどこからきた?」


「死の迷宮 98階層からだ。」


「ふむ、それは情報通りじゃな。では、なんで急に迷宮から出て来たんじゃ?」


「負けたからだ。」


「ん?負けた?なににじゃ?」


「我々は死の迷宮の生存競争に負けたんだ。そして我々はなんとか地上に進出して難を逃れたんだ。」


「ぷっ!あはは!なんだよ!お前ら負け犬だったのかよ、迷宮から追い出されただけか?迷宮で追い出されれたから今度は地上で暮らそうってか?おめでたい頭しているな!?地上での生存競争でならやっていけると思ってるのか?」

モグがバカにしたように言う。


「モグ、黙りなさい。死にたくなければね。」

いつも楽しそうにニヤニヤしている三大王の1人始祖の吸血鬼 バーバルが真顔で言う。


モグはバーバルの威圧に口を閉ざす。

他の三大王を見ると三人ともいつも余裕のある表情なのに今は真面目な顔をしていた。竜王のダイヤはいつも腕を組んで目を閉じているのに、今は腕を組まず、目を開けてまっすぐナクアの方を見ていた。



「いいんですよ、事実ですし。」


「ふぉ、すまんの。では、お主達の目的はなにかあるのか?」


「あの森林を蜘蛛の楽園にすることだ。」


「そうか、では、お主たちは味方か?敵か?」


「それは貴方達次第。質問してもいいか?」


「ふぉ、なんじゃ?」


「どれが魔王なのだ?お前が魔王なのはわかる。そこの少女もドラゴンも。他は魔王なのか?魔王はこれで全てか?」


場が凍る。


この円卓に座っているものは各地で名を馳せている魔王達である。

誰がみても魔王にふさわしく、誰が見ても一目で魔王だとわかる覇気を纏っている。


「ここにいるみんなが魔王だよ。ここにいるのが全て魔王の魔王だ、他にはいない。貴方には彼らが魔王に見えない?」

バーバルがナクアを見つめて言う。


「まぁ、そんなものか。」

ナクアは顔を伏せて言った。


「それで、私は魔王として認めてくれるのか?」

ナクアは続けて言う。


「ふぉふぉ、もちろんお主の力なら申し分な…」


「俺は反対だ。こいつは俺たちの手に負えなくなる。そうなる前に始末するべきだ。」

ダイヤがルーの言葉を遮って言う。


「なんで?自分と同格の相手だから怖くなっちゃった?竜って本当に誇り高いねぇ〜。」

バーバルがダイヤを煽る。


「殺すぞ、小娘。」

ダイヤがナクアを魔王にしたくないのには理由がある。

3大王 ダイヤとバーバルは対立している。そして、ルーは2人の仲裁。そのバランスで世界で保たれていた。

しかし、ナクアほどの者が魔王となればこのバランスが崩れて、どうなるのかわからない。ナクアがもしもルーのように誰とも対立しないよう立ち回ればいいが、バーバルの派閥に入るないし協力されてしまうと厄介なのだ。


「やってみなよ、トカゲさん?」


「反対は誰だ?」

その争いを聞いたナクアが聞く。


「ふぉ、反対する者、挙手しなさい。」

ルーが反対派の挙手を求めると、手を挙げたのは三大王のダイヤ、ミンクだ。


魔王達は絶対的な力を持つ三大王を頂点に三つの派閥に分かれている。


ダイヤの派閥はブーモルとミンクだ。

ブーモルは殺されてしまったので今はミンクのみ。

ちなみに、ルーの派閥はシャールブ、ジンジュ。

バーバル派閥はモグ、アルモルド、アナスタシアだ。


「では、賛成は?」

ルーとダイヤ、ミンク以外の者が手を上げる。


「えっ?ルーは賛成じゃないの?さっきまで賛成だったじゃん?」

ルーが挙手していないのを見て、バーバルが疑問の声を上がる。

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