第9話 剣姫リーナ

あぁ、この反応たまらないな。








アルドがアッシュを連れて帰ってリーナが残った。


「アリアさん、本当にすみませんでした。」


「いえいえ、いいんですの!それより剣姫リーナさんに会えて光栄ですわ!」


「ふふ、ありがとうございます。…ところで、スケルトンさん。私とお手合わせしてくださりませんか?」


ーえ?あぁ、いいけど。なんでだ?ー


「私、実は行き詰まっていまして、ご指導していただきたいのです。」


ースケルトンにか?ー


「貴方にです。」


ーあはは!いいよ。あんまよくわかんないけどなー


俺たちは街の外の草原に場所を移す。



「行きますね!お願いします。」

リーナはそう言ってお辞儀をして俺に向かって剣を抜きながら駆け出した。


「疾風の剣!」

リーナは持っている剣に魔力を通すと風がリーナを覆いスピードが上がった。


リーナが鋭い突きを繰り出してくる。

俺はそれを見切り、剣でいなしたあと蹴りを放つ。が、ステータスが低くスピードも遅い。

俺の蹴りは易々とかわされる。

リーナが連撃してくるのを俺は下がりながら受け返す。

ちなみに俺の思考速度は完全に人外だ。集中すれば全てがスローモーションのようにいや、ほぼ止まっているくらいまで時間がゆっくりとなる。だから、この子の剣は全部見切れてるんだが、やっぱ俺が雑魚モンスターだからなぁ。少しでも見切りが遅れるとバラバラになっちまうな。

それにしてもこの子強いなぁ。あのアッシュとか言うやつよりは全然強い。


「やっぱり、ただのスケルトンではありませんね。これだけステータス差があるのに互角だなんて…相当な技量、実力差がなければできません。」


ーあはは、楽しいけどもう終わりにしようー

俺は駆け出す。リーナは当然防御しようと構えるが俺が剣を振り下ろす直前に恐怖のオーラを発動させる。


「うっ!」

リーナは動けなくなり俺の攻撃が直撃し、後ろに尻餅をつく。


もちろん防御力がかけ離れているためかすり傷にどどまる。


ー俺の勝ちでいいよな?ー

俺はそう言って剣先をリーナに向ける。


「えぇ、もちろん私の負けですわ。私のなにがいけなかったのでしょうか?」


ーなにもいけなくなかったんじゃないか?でも感じたのは…経験不足かな?ー


「経験不足ですか?」


ーあぁ、ほんとの強者との戦いでは読みと見切りのほかに絶対に必要なものがある。感だ。第6感と呼んでもいい。君にはそれがないー


「感ですか?」


ーあぁ、たとえば最後に使った俺のスキルも本当に強いやつは何か仕掛けてくると必ずと言っていいほど察する。予測できないものを予測する力、第六感。君は技術もフィジカルもかなりいいと思う。戦いのセンスもとてもいいんだろう。たくさん努力したんだろう。でも、感は実戦でしか身につかない。死線をなんども乗り越えて身につくものなんだー


「死線ですか…」


ー君は何度も戦いを潜り抜けている歴戦の戦士だろう。でも、死にそうになった場面は何回あった?死を何回感じた?才能があるが故にそういう場面はあまりなかったんじゃないか?ー


「死を感じる?」


ー君の手に入れたい力は死線の先にあると思うよ。今回は特別に死を感じさせてあげよう。俺を楽しませてくれた褒美だー


そう言って俺はリーナに手を向けて死神から奪い取った死の権能を行使する。リーナの目の前まで濃密な死の気配が迫る。


「はっ、は、くっ。」

リーナは死の恐怖で息が吸えずら身体も震えている。

それはそうだろう。これはさっきの恐怖のオーラとは比較にならない。


これ以上は死んじゃうかな。


俺は権能を収め、ふっと空気が軽くなる。


「はぁ、はぁ、はぁ、今のは…」

リーナは過呼吸になりながらも俺を見る。


ーこれで君は一つ死線を垣間見た。なんとなくわかるようになるだろう。死の気配がねー


「貴方は一体、本当になにものなんですか?」


ー俺か?俺はただのアリアの従魔のスケルトン、スケさんだよー











アリアはスケさんがリーナを圧倒したのをみて思った。


やっぱりスケさんはただのスケルトンではない。ダンジョンの第一線で戦っているAランク冒険者 剣姫 リーナを圧倒するスケルトンなんているの?

私はなにかとてつもない化け物を抱え込んでしまったのかもしれませんわ。

でも、悪い化け物ではないと思いますの。とっても優しい方というのが伝わってきますの。

スケさんなら、私を強くしてくれる。

私は強くありたい。伯爵家の令嬢としての責務を果たすためというのもありますけども、やっぱり冒険は心躍りますもの!せっかく受けた命なのです。楽しむために私は強くなりたいんですの!







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