第71話 お家デート、だけど

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次回更新時にお知らせがあります。嬉しいやつです。


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 俺達は黙々とテスト勉強に励んでいた。


 それはテストを翌日に控えた高校二年生としては正しい気がしたけど、初めて彼女の部屋にお呼ばれした彼氏としては間違っている気もした。俺の本能は「間違っている」と叫んでいるけど、理性は「これでいいんだ」と言っていて、そんな事ばかり考えているから勉強にも集中できていなかった。


「何だか今日は暑いね。そうは思わないかい、夏樹?」


 一織がふかふかの座布団から立ち上がる。休憩だろうか。視界の端でそれを確認しながら、数学の問題を解いていく。


「そうかな? 俺は何ともないけど」


 えーっと、ここがこうなるから……あの公式が使えるのか。この形にしてしまえばあとは簡単だな。この解き方はテストに出そうだし絶対に覚えておこう。


「あーあー、暑い暑い。浴衣の中が蒸れてきそうだよ」


 一織がベッドに腰かけて浴衣の胸元をぱたぱたと扇いでいる気がする。眼球が勝手にそっちを見ようとするのを、俺は必死に押しとどめる。今は勉強に集中しなければ。


「暑いんだったらエアコンの温度下げても大丈夫だよ」

「…………そうかい。じゃあそうしようかな」


 ちょっと拗ねたような一織の声。少しして、寒いどころではない冷風が直で俺の顔を襲った。それも台風のような強さの風だ。俺の勉強を妨害しようとしているのは明らかだった。


「ちょっと一織────」


 顔を上げ────俺は言葉を失った。


 そこには浴衣の胸元を大きく緩めた一織の姿があった。いつもはきつく締めつけている胸が大きな存在感を放っていて、俺の視線はどうしたってそこに吸い込まれてしまう。


「どうしたんだい夏樹。勉強に集中しなくていいのかな?」

「一織、わざとやってるでしょ」

「何のことか分からないな。ボクはただ休憩しているだけだからね」


 一織は挑発的な視線を俺に向けてくる。ベッドの上に片足を立てると、はだけた浴衣から艶めかしい太腿が顔を覗かせた。彼女にここまでされて何もしない彼氏なんてきっとこの世に存在しない────のだが。


「…………ダメダメ、勉強に戻らないと」


 俺は頭を振ってテキストに視線を落とす。夏を制する者が受験を制するのなら、春を制する者が受験を制するはずで、更に言えば二年生の秋を制する者が受験を制するはずだ。ここで欲望のままに勉強を止めるのは簡単だけど、その道はきっと未来に続かない。


「むぅ…………彼女より勉強を優先するのかい」

「一織とずっと一緒にいたいからね。テストでいい点を取って、いい大学に入って、いい会社に入って、幸せな毎日を一織と過ごしたいんだ。本音を言えば俺だって一織とイチャイチャしたいけどね」


 俺がそう言うと、一織が座布団に戻ってきた。浴衣の胸元はすっかり元に戻っている。


「…………そういう事ならボクも我慢するよ。夏樹とずっと一緒にいたいから」

「うん。今日は勉強頑張ろう」


 それから俺達は黙々と勉強に励んだ。今の頑張りが二人の未来に続いていると思うと、不思議なくらい集中出来た。

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