いつも通らない道を通ってみた

  

 小学校のときの友人とばったり会って、久しぶりにそいつの家に遊びに行った。


 それで、いつもあまり通らない道を通り、いつもあまり通らない――


 と、いうか、何故か通りたくならない幽霊階段を通った。


 昔から、此処には幽霊が出るという噂だが。


 妖怪が出るって言うのなら見に来るんだが、と思いながら、階段を下りた。


 階段の中程には、何処か知らない学校の制服を着た女の子が居て、若い男と話している。


 男の方はスーツを着ているが、不似合いに可愛らしい顔をしていた。


 だが、目だけが妙に冷めていて、違和感がある。


 まあ、男には興味ないので、女の子の方だけを観察した。


 可愛い顔だ。


 少し印象が薄いが。


 でも、おとなしめな感じは嫌いじゃない。


 それにしても、この制服、よく見るんだけど、何処のだっけなー。


 妙に深刻な顔で話している彼女らの傍を通り過ぎようとしたとき、声がした。


「あら、話しかけても、明日には全部忘れてる四条くん、こんにちは」


 えっ、と振り返る。


 彼女がこちらを振り向いていた。


「四条くん、今日、此処を通るんだったかしら」


 そんなことを彼女は言い出す。


「いや……特に通る予定はなかったんだけど」


 なんだかわからないまま、そう返した。


 この子、なんで、そんなこと訊いてくるんだろう。


 っていうか、なんで俺の行動を知ってるかのようなことを言い出すの?


 もしかして、俺に気が合って、いろいろ調べてるとか、いやいや。


 男の方が溜息をつき、


「お前、劉生か」

と彼女に向かい言った。


「そうですね~。

 劉生さんがいつも似たようなこと言ってましたね。


 『明日には忘れてる』って」


「もう劉生を過去形で語るか。

 恐ろしい女だ……。


 ま、あいつはお前みたいに厭味を込めて言ったりはしなかっただろうけどな」


「厭味というかね。

 淋しいんですよ」

と彼女は溜息をついて見せた。


「貴方にもいずれわかりますよ」

と少女は言ったが、男の方は胡散臭げだった。


 彼女がこちらに向き直り言う。


「四条くん」

「はい」


「学校で何か変わったことはない?」

「ないです」


 何故、俺、敬語?


「ああ……そういえば、町田が、なんか妙な顔で俺を見てたけど」

「町田くんが?」


 彼女は町田も知っているようだ。

 本当に何者なんだ、と思った。


 この近くの学校の子?

 塾が一緒とか?


 いや、俺、塾行ってねえし。


「何を考えてる」

と男が彼女に問うた。


「……ちょっと身体検査したいんだけど」

「四条の?」


「それが駄目なら、手荷物検査」


 この人、なんだか物騒なことを言っている気が……。


「それで駄目なら、町田くんを捕まえるかなあ」


 逃げろ、町田!

と心の中で思ったが、この不思議な少女に敵だと認識されたくなくて、ひたすら苦笑いだけを続けていた。

 

 


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