第11話 迷惑配信者がいたんですよー。なぁにぃー?
「なぁあにぃいい? もう一回言ってみろ! がはははは!」
TV局プロデューサー樺沢は笑って、アシスタントプロデューサーに先程の発言を繰り返すよう促した。
「は、はい! 先週放送したごいまい回のネット配信、元々かなりいい数字でしたが、今日急激に伸び始めバラエティでは今週一位の視聴数とれそうです「がははははは!」」
被せ気味の樺沢の爆笑がスタジオに鳴り響く。
樺沢が担当するバラエティ番組の1つが飛びぬけたことで上機嫌になり、周りのスタッフは複雑な表情ながらほっと胸をなでおろしていた。
「だから言っただろう!? 顔の良いダンジョン配信者を呼びゃあ、あとは昔の危なくねえバラエティパクればなんとかなんだよ! なあ!?」
樺沢が笑って話しかけるアシスタントプロデューサー。彼がダンジョン配信者を絡めた番組作りを提案したのだが、樺沢の功績になっておりやはり複雑な表情を浮かべている。
その上、彼の新しい番組アイディアは散々こき下ろされた上で使いまわしのバラエティ番組。樺沢の考えた組み合わせがうまくいった事実はあるのだが誰もが素直には喜べない。
「いやー、絶好調だな。×でも奴らとの打上の写真も確かに結構いいねがついてたし。次は生で呼んでやったし、絶対数字伸びるな。次は、誰呼ぶかな? ああ、この前見た美人のネーちゃんがいたな。なんだったかな、黒髪のポニーテールの福井だか、徳川だか」
「福富恵ですかね?」
「そうそう! あのネーちゃん呼んでちょっとだけエロい感じなる画つくりゃあ一発だろ。まあ、TVは初心者だし事前にちょっとテレビのバラエティってもんを身体に教えてやる必要はあるかもしれんがなあ」
「あー、でも、福徳さんのチームは基本テレビに出ないので……いたっ!?」
「それをなんとかすんのがテメーの仕事だろ! 何年この業界にいるんだよ! カス! ゴミか!」
樺沢がアシスタントプロデューサーに罵声を浴びせ蹴り飛ばすが誰も何も言えないままに気まずそうに樺沢の気が済むのを待つ。
だが、そういう時こそ色んなことが重なるもの。
部屋に飛び込んできたスタッフが叫ぶ。
「た、大変です! ご、【GoinMyWaY】が!」
「あん? あのニーちゃん達がどうしたあ? なんか不祥事起こしたか? がははは!」
「はい!」
「がは?」
樺沢は大きな口をあんぐり開けたまま大きくうなずいたスタッフの方を見る。
「あんだって?」
「【GoinMyWaY】が……他の冒険者に魔物を擦り付けした上に、なすりつけした事実をもみ消そうと襲い掛かって、しかも、返り討ちにされたとかで……警察に捕まりました!」
「なあにぃいいいいいいいいい!?」
スタッフが差し出したスマホを見ると、×のトレンドに『ごいまいたいほ』の文字が。
そして、冒険者に襲い掛かる場面と覆面を手でとられ魔力をケツでとられている動画の切り抜き。
「報道もさすがにこれだけ拡散されたら結構しっかり扱うらしく……!」
「くそ! 動画配信の奴らの回を消せ! くそ! くそくそ! 所詮冒険者なんざゴミクズばっかり、か……?」
樺沢は何かに気づきスマホにかぶりつく。それは【GoinMyWaY】に襲われ返り討ちにした男が、ボロボロの【GoinMyWaY】にTKB相撲を挑みネット上で盛り上がっているという動画。
だが、動画の内容は今問題ではない。その動画に映っている男が樺沢にとって問題。
「おい……この元動画、バズってんのか……?」
「え? そ、そうですね……ダンジョン初配信でイレギュラーを倒し、ダンジョン業界では有名人である【剣姫】を助けて、しかも、【GoinMyWaY】の悪事も暴いた上に、何故かTKB相撲を始めて、ケツで魔力を吸ったのが視聴者に大ウケで、この数カ月で日本でトップクラスに入る伸びだそうです」
「なあにぃいいいいいいいいい!?」
「あ、【GoinMyWaY】逮捕された時に暴れて問題になっています」
「やっちまったなあ!」
「その上、過去にダンジョン闇討ちに遭ったという被害者らしき人物がどんどん出て来てます」
「やっちまったなあ!」
「ウチの番組で出た時の発言も切り抜かれてこんな発言OKにする制作側どうなんだと言われてます!」
「やっちまったなあ!」
「あ、さっきのチャンネル主が放送してます」
スマホの画面に映るのは樺沢がつい先日もう業界には戻ってこれないようにしてやると追放宣言した後藤鐵郎が。
『何はともあれ、この配信を見て面白かったと思う人は、クレイジーモンスターズチャンネル、登録してくれもん! じゃあ、最後に、保存液で魔素化防いだイレギュラー蠍を勝利の生喰いしまーす! うーん、まずい! ばいばーい!』
《ごとうちゃん、マジクレイジーモンスターwww》
《ごとうちゃん、次も期待してるぜ》
《ごとうちゃんファンになりました!》
《ごとうちゃん、大好きです》
みるみる内に登録者数が上がっていき登録者数は10万人に。
「やっっっっっちまったなぁああああああああああああああ!」
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