小説家スランプの乗り越え方~書きなおしたらうまくいった件~
月ノみんと
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ちょっと執筆のスランプを乗り越えたので、それについて書こうと思う。
誰かの役に立てばうれしい。
僕はもう長い間、自分の書くものに納得いってなかった。
それが今回新しく書いた小説で、一皮むけた気がする。
今小説で悩んでいる他の人に、これから小説を書こうとしている人に、届けばいいと思ってこれを書く。
そもそも、僕のことを知らない人もいると思うので、軽く説明します。
僕は主に異世界なろう系の、いわゆるテンプレ作品、流行りものを書くのを得意としている作家だ。
書籍化されているものも、その多くは追放ざまぁものだ。
僕自身の執筆スタイルは、PVや人気を追い求めて書くことが多い。
もちろんそうじゃない人も多いと思う。
だけどスランプは誰にでも訪れるものだから、僕の経験がなにか役に立つかもしれないので、まずはきいてほしい。
いわゆるテンプレ作品というと、知らない人からすれば、いっけんすれば、簡単に書けるものと思われがちだ。
人気のあるジャンルを書いて、流行のキーワードを組み合わせ、誰かのつくったテンプレにそって物語をすすめればそれでいい。
それはある種の正解でもあり、間違いでもある。
たしかに人気の出やすい定番のプロットというものは存在する。
だけど、それをただなぞっただけでは本当にいいものにはならない。
なぜならば、同じようなことをする人がたくさんいるからだ。
流行のジャンルはそれだけ競争率も激しいので、その中でもなにか秀でたものがないと人気にはなれない。
ストーリーに一定の型があるから、もちろんそこは書きやすい部分でもある。
じゃあ、なんで僕がスランプに陥ってしまったのか。
それはまさに、このテンプレというものが書きやすいからという性質にあるだろう。
テンプレは書きやすく、ある程度の人気も出やすい、そこがまさに罠なのだ。
話がとっちらかってしまっているかもしれないけど、とにかく思いついたまま書いてるので、もう少し付き合ってほしい。
小説とちがって、こういうエッセイでは、構成力には力を抜かせてもらいたい。
とにかく話を続ける。
僕はもともと、純文学やSFなどを好むタイプの人間で、異世界ものなどの軟派な作品はあまり好きなほうではなかった。
もちろんライトノベルは好きだったが、異世界ものには偏見もあった。
だけどそんな僕がなろう系にはまって、それを書き出して、最初にやったのがこのテンプレを学ぶということだった。
僕は面白いストーリーを研究して、型を身に着けていった。
物語にはなにか秘密のレシピみたいなものがあって、それに従って書けば面白いものがつくれるのだと信じていた。
そして僕はテンプレを身に着け、ある程度の小説の形になるものが書けるようになった。
おかげで、何冊か本を出すこともできた。
自信もついた。
最初のころはそうやって、順調に人気も出て、出版していけたのだが、しだいに僕の小説はまえほどは伸びなくなってくる。
もちろん一定のファンはいてくれて、ある程度までは人気が出るのだが、以前のような爆発的な人気はむずかしかった。
書籍化したのはどれも創作初期に書いたものばかりで、最近はランキングともご無沙汰だった。
それでも僕はひたすらに作品を作り続けた。
だけど、どれも前のような爆発はしないし、決定的ななにかが足りないように感じていた。
いつのまにか僕はスランプを感じていた。
なんでそうなったのか。
理由ははっきりしている。
小説が、物語が、うまくなったせいだった。
こなれてしまったのだ。
前は全身全霊をもって作品を緻密に練り上げていたように思う。
それがいつからか、手癖でつくってもそれなりのものができてしまうようになった。
ちゃちゃっと書いてもそれなりに面白いものがつくれて、それなりに人気はとれてしまう。
それがいけなかった。
もちろん、どの作品にも愛は込めているつもりだ。
だけど、以前のようななにかが決定的に足りない。
それは創作に対する熱のようなもの、初期衝動とよばれるようなものだった。
ある程度認められて、自分自身、満足してしまったのかもしれない。
反骨精神や、成り上がりの気持ちがなくなってしまったのだ。
いつしか僕は、プロットのために無理やりねじまげたようなちぐはぐな物語をかくようになってしまった。
なんというか、キャラクターがプロットのための舞台装置になってしまっていた。
たしかにコンセプトもよくできている、プロットもおもしろい。
だけど、なにかが足りないような感じがしていた。
ストーリーやキャラに血肉が通っていないとでもいうのか。
僕は悩んでいた。
また新作を書いたのだが、自分でもなんとなく納得がいっていなかった。
プロットもコンセプトもタイトルもいいのだけど、なにかが違う。
その作品の中でやりたい展開なんかは見えているのだけど、そのためにキャラやストーリーがねじまがってしまっていた。
じゃあ、なぜその状態から僕はスランプを抜けることができたのか。
それは、ある人からの助言のおかげだった。
その作品を読んでくれた作家さんから、アドバイス、フィードバックをもらったのだ。
その作家さんは数々の有名出版社から何冊も本を出している尊敬するかたで、仲良くさせてもらっている。
やはりその人の意見も、僕が自分で感じているようなことと同じだった。
そこでその人が言ってくれたことがある。
要約すると、「もっと感情を入れたほうがいい」とのことだったのだ。
ほんとうはもっといろいろ言ってもらったんだけど、まとめるとそういうことだと僕は受け取った。
そう、僕の小説にはなにか感情のようなものが欠落していたのだった。
ただストーリー展開をなぞるだけの、冷たい文章になっていたのかもしれない。
面白い展開、設定にこだわるあまり、感情をないがしろにしてしまっていた。
小説はキャラクターの感情をかくものだということを、わかってはいながらつい忘れてしまっていた。
僕の小説はたしかに自分で読んでもストーリーはおもしろかったのだが、そういうキャラクターの感情のようなものが描けてなかったように思う。
最初は初期衝動にまかせて感情をつかって書いていたのに、いつしか技巧をみにつけるうちに、技巧にはしってしまっていたのだ。
小説はもっと感情を使って書くものだということを、たくさんの言葉で思い出させてもらった。
読者が物語をおもしろいと思うのは、自分の感情が動いたときらしい。
脚本術の本に書かれていたことだ。
そう、いくらストーリーの筋がおもしろくても、設定がおもしろくても、感情が動かなければ意味がないのだ。
ストーリーや設定などの技巧部分はつたなくても、それよりなにより、キャラクターの感情をえがいて、読み手の感情をゆさぶること。
僕の小説にはそれが足りていなかったように思う。
だから僕は、新作を書きなおすことにしたのだ。
そしてこんどは、より感情をゆさぶることを重視して、自分も感情をめいっぱいつかって文を書いた。
そうすると、自分でも納得のいく物語が書けたのだ。
もちろん、その小説が人気になるかは、まだわからない。
だけど、自分で納得することができるようになったのは大きな前進だ。
やはり一番は自分が納得するものが書けるかどうかだと思う。
書きたいものを書くのが一番なのだから。
少なくとも、小説としての質はぐっとあがったと思う。
僕はその小説をこんどアルファポリスのコンテストに応募するつもりだ。
ゆくすえを楽しみにしてもらいたい。
ちなみに、今回話に出した小説の、ビフォーアフターはカクヨムで読むことができる。
なのでもし興味を持ってくれた人は、ぜひ読み比べてみてほしい。
確実によくなったのがわかるはずだ。
そしてよければ、どちらのほうがよいと思ったか、ぜひ感想をきかせてもらえると非常にうれしい。
タイトルを書いておく。
改稿前のタイトルは「追放された最弱テイマーは最強すぎる「モンスター図鑑」で無双する」
改稿後のタイトルは「転生貴族はテイマーの夢を見るか?~最弱スライムと「モンスター図鑑📖」を埋める旅に出ます~」
微妙にコンセプトもちがっていて、完全にあたらしいものになっている。
だけど、根本にある伝えたかったメッセージは同じだ。
人の優しさや絆をテーマにしている。
どちらも僕のユーザーページをフォローしてもらって、そこから探してもらえれば読むことができる。
ぜひ感想をきかせてほしい。
実際に、書き直したあとに複数のプロ作家に読み比べてもらったが、結果としてはみなさん改稿後のほうがよくなっていると言ってくれた。
ただ、改稿前のほうが雑だが人気はとれそうという意見もあった。
だが改稿後のほうが小説としてはクオリティが高いし、面白いとのことだ。
僕もそう思う。
改稿後のバージョンは、どうしても感情を入れてきっちり書くことを意識したので、テンポが悪くなってしまった。
そこはテンポをとるのか、感情をとるのか、一長一短で難しいなとも思う。
みんなはどう思うだろうか。
ぜひ読んでほしい。
もしこのエッセイが、創作で悩んでいる誰かの助けになれば、すごくうれしい。
みんなも納得のいかないときは、一度たちどまって何度でも書き直してみるといいかもしれない。
あなたの創作活動が、少しでもうまくいき、幸せなものになることを祈って。
小説家スランプの乗り越え方~書きなおしたらうまくいった件~ 月ノみんと @MintoTsukino
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