ばんからな学生時代が黒歴史
逢坂 純(おうさかあつし)
偽ばんからが黒歴史
誰でもファッションリーダーというものを持っていると思います。僕にも尊敬すべきファッションリーダーがいました。大学時代のO先輩です。他の皆がファッション雑誌やテレビで活躍する芸能人の服装や髪型を真似ている時、僕はそのO先輩の服装を、仕草を、一挙手一動作を盗み見ながら、真似ていました。おそらく誰もが皆、そのことに気づいていたでしょう。
誰もそのことには触れませんでしたが、僕のBearのダウンジャケット、鉄板入りの安全靴、黒革のずた袋のバッグ、今思えば何ともおかしな出で立ちだと周りからは思われていたことでしょう。
O先輩は団塊Jr.世代だということもあって、後輩の面倒見も良く、誰からも愛されるような先輩でした。僕は学生時代ずっと、その先輩の後に付いて回っていたように思います。周りの皆が恋愛にいそしんでいる間、僕はO先輩よろしくばんからに振舞うことに夢中でした。しかし、外見だけO先輩のことを真似ても、僕はO先輩のように後から入ってきた後輩に対して自信が持てず、O先輩のように振舞うことができませんでした。O先輩のように後輩に優しく面倒を見ることもできずに、只々、O先輩が卒業していったあとの穴を埋めることができずにいました。
O先輩にくっ付いて離れなかったことは、自分からすれば黒歴史というわけでもなかったのですが、周りの皆が恋愛をしていた頃、僕はばんからよろしく鉄下駄でも履かんばかりのファッションとライフスタイルで決めこんでいたことは、やはり黒歴史なのかも知れません。そんな風変りな出で立ちをカッコいいと思っていた当時の僕でしたが、そんな僕を周りの人はどう見ていたのでしょうか。O先輩は本当に気さくな人で、後輩にご飯をおごってあげたり、遊びに連れて行ってあげたりととても頼れる先輩でした。僕はと言うと、先輩の恰好は真似できても、先輩の本質の部分はまるで真似できない偽物ばんから男だったのでしょう。僕が先輩になった時、僕は歳下の後輩に対して、あまりにも自信が持てず、ちゃんと後輩思いの先輩の役割を果たすことができませんでした。そう思うと、あのO先輩はとても立派な先輩だったんだなと思います。20代の頃、できなかった「面倒見がいい先輩」を僕は今更になってやっとできるような気持ちがしています。誇れるような自分でもないけれども、今はやっと自分に自信が持てるような気持ちです。
ばんからな学生時代が黒歴史 逢坂 純(おうさかあつし) @ousaka0808
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