第38話 雨は咎人(とがにん)の上にも、善人の上にも降る

 外は小雨が降ってきました。


わたくしは、汚れたモップを洗うために、外の水場へ行きました。傘をさしながらモップを洗うのはちょっと難しかったですが、傘を顎と肩ではさんでおけば何とかできました。モップに水をかけていると汚れがどんどん流れていきました。


 自衛隊員たちは雨に濡れながら点呼をとっていました。


点呼が終わると装甲車に乗り込みます。


団結鉢巻さんたちも、雨を避けて車に急いで乗り込んでいました。


米兵たちは、外へ出てきて、両手を広げています。

沖縄の冬の雨はさほど冷たくありません。酔って体温が上がっている人には心地よいかもしれません。米兵たちは、雨に打たれて嬉しそうです。


 わたくしは沖縄のことわざを思い出しました。米兵たちが雨に濡れることを喜ぶ姿にちょっと感動したのです。


団結鉢巻さんたちも、自衛隊員たちも雨に濡れました。


沖縄には「雨は咎人の上にも、善人の上にも降る」という言葉があります。日本人もアメリカ人もなく、公平に雨は降るのです。


そのことが、何ともいえずわたくしの心を震わせたのです。わたくしは、雨に喜ぶ米兵たちをしばらく眺めておりました。



 わたくしは、店内に戻りました。



レジに入りお客さまの対応を深夜1時ごろまで行いました。その頃になると、お客さまの数も減っていき、3人もスタッフは必要ない状況になりました。


「お疲れさま。もう、大丈夫ですから、上がってください」

 とマービーがわたくしに言ってくださいました。正直、もうクタクタでした。立っているだけでも、辛い状況でした。疲労で足や腰に痛みがありました。


「ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えて、失礼させていただきます」

 わたくしは事務室に入りました。心地よい疲労感が襲ってきました。


椅子に座りふくらはぎをマッサージしました。揉んでいると少しですが楽になったような気がします。腰や肩もゆっくりと揉んでいきました。筋肉を弛緩させてリラックスすると、急に睡魔が襲ってきました。



わたくしは、そのままデスクにうずくまって眠ってしまったのです。



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