第31話 クリシュナさんと米兵の喧嘩に団結鉢巻きが参戦
団結鉢巻は、遠巻きに見ています。
1人は、買い物カゴを抱えたままジッと白人米兵を睨んでいます。もう1人は、スタスタとやって来て、白人米兵とクリシュナさんの間に割り込みました。
筋肉質なほうの男性です。
筋肉質な団結鉢巻が言いました。
「とにかく、あんたは、まずは、この女性に謝罪せな、あかんやろ」
と、どうしたものか、関西弁でした。
黒人米兵はキョトンとしています。日本語がわからないのでしょう。
わたくしは、レジを離れました。
精算をしているお客さまも、ボウッとして、このやり取りを見ていましたし、行列しているお客さまも白人米兵とクリシュナさんがどうなるのか心配して見ていました。
わたくしは、いてもたってもいられない気持ちでした。
レジでお客さまの対応をしている場合ではないのです。
わたくしは、筋肉質な団結鉢巻の言葉を通訳して黒人米兵に伝えました。
黒人米兵は「ノー」と短く言って頭を横に振りました。
その態度に激昂した団結鉢巻が、黒人米兵の胸ぐらをつかみました。
「なめとったら、しょうちせんぞ、こら!」
団結鉢巻は、そう言ったあと、わたくしに向かって「通訳しろ」と命じました。
「なめとったら、しょうちせんぞ」というのはどう訳せばいいのでしょうか? わたくしにはわかりませんでした。
そもそも、そういう言葉は、生まれてはじめて聞いたのですから。
団結鉢巻は、続けて、
「いてもーたろうか、われぇ!」
と言いました。これも通訳しろと、わたくしに顎を振りました。
黒人米兵は、不敵な笑いを浮かべて、団結鉢巻の腕をねじ上げてしまいました。
「痛、痛、痛っ」
黒人米兵は、筋肉質な団結鉢巻をドンっと突き飛ばしました。
団結鉢巻は後ろに飛ばされ、新発売商品のスポーツドリンクが陳列してあるワゴンにぶつかり倒れてしまいました。
スポーツドリンクのペットボトルが床に散らばります。
そのとき、店入り口の自動ドアが開きました。
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