第28話 団結鉢巻きと米兵たちのガンの飛ばし合い!
団結鉢巻が2人、入ってきました。
1人が買い物カゴを手に取って、店内をゆっくりと歩きながら米兵たちを睨んでいます。
もう1人は、腕っぷしが強いのでしょうか、太い二の腕を見せつけるようにして、右手の拳を左の手の平に何度も打ちすえながら米兵たちを睨んでいました。
米兵たちは、相変わらず、若い日本人女性と騒いでいます。
ときおり、大きな声で笑ったり、ふざけたりしています。
ドリンク類を陳列している大きな冷蔵庫の先にある、スイーツのところで、カップケーキや大福餅などを手に取っては棚に戻して、笑っていました。
団結鉢巻たちは、缶ビールと缶酎ハイを大量にカゴに入れます。
その間もずっと米兵たちを睨んでいます。
冷蔵庫の扉を閉めて、団体鉢巻の2人はゆっくりと歩きます。
一歩一歩米兵たちが騒いでいるところへ近づいていきます。
見ているわたくしの胸がドキドキします。どうなるのでしょうか?
米兵の1人が気づきました。
胸板の厚い白人が、団結鉢巻の視線に気づいたのです。
その瞬間、白人の笑顔が引いていきました。そして、その白人は、太い二の腕をした方の団体鉢巻と視線を合わせます。
いわゆる、ガンの飛ばし合いです。なんだよ、この野郎、日本から出て行け! という団結鉢巻さんの心の声が聞こえてきそうです。
一方、米兵さんの心の声も、想像すると、おそらく、戦争に負けた弱虫ジャップめ、何をいきがってやがるんだ! と言っているのかもしれません。
そのときです。美しい日本人女性が店に入ってきました。20代後半でしょうか。
花がらのワンピースに薄いカーディガンを羽織った、清楚で上品な女性でした。
カーディガン女性はキャリーバッグをコロコロと転がしながら、まっすぐクリシュナさんのところへ向かいます。ヒールの音がコツコツと鳴ります。
何か思いつめたような、深刻な目をしていました。
そして、クリシュナさんに向かってこう言ったのです。
「家出してきた。私をネパールに連れて行って!」
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