第21話 団結鉢巻きの方々はまだ帰らないつもりです


 次のお客さまは、70歳前後の男性でした。


背が低くて、どす黒い顔をしてらっしゃいました。

その客さまは、声を出さずに指でタバコを刺すのです。

わたくしは、すぐに、これはタバコを買いにきたお客さまだなと察知しました。


そして、「これですか?」とタバコを取り出して尋ねます。

すると、お客さまは、首を横に振って険しい表情になります。

わたくしは間違いを犯してしまいました。タバコが違っていたのです。


わたくしは、焦ってしまいました。


人差し指で隣のタバコを示しましたが、お客さまはそれも違うという合図をして首を横に振りました。

わたくしは、次々とタバコを取り出してはお客さまに正解かどかを尋ねました。


お客さまがイライラしていることは、わたくしにも伝わってきます。

どうしましょう。


今度ばかりは、マービーは助けに来てくれません。


マービーのレジには駐車場におられる団結鉢巻の方々が大量に買い物をされていたからです。

缶ビールや缶酎ハイ、ポテトチップや柿の種、サキイカなどを大量に買っていかれました。


まだまだ駐車場での宴会を続けるつもりのようです。

誰かが「みんなで初詣に行きたいねん。ええでっしゃろ」とおっしゃっていたのが聞こえました。


なぜか、関西弁でした。


初詣に行くのだとしたら、午前0時近くまで、ここにいるつもりなのでしょう。

困ったものです。


あとは、米兵や自衛隊が来ないことを祈るしかないでしょう。


どす黒い顔のお客さまが求めていたものはショートホープのメンソールでした。

やっと正解ができて、わたくしはホッと胸をなでおろすことができました。

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