第18話 コンドームにドキドキするわたくしです
さあ、いまは、レジ係です。
掃除を指示されたら、リエンさんに負けないくらいこの店をピカピカに磨き上げる所存でございますが、いまは、レジに立ってお客さまへの対応に全力を尽くさなければなりません。
1ミリでも手を抜くとおもしろくないですし、そもそもカッコ悪いと思います。一生懸命こそがカッコいいのではないでしょうか。
しかし、わたくしは失敗してしまいました。
20代の若くて可愛い女性客に対応しているときでした。
栄養ドリンクにアイスクリーム、そしてコンドームをご購入されたのです。
わたくしには経験がございませんが、コンドームが、そういう行為をするためのものであることは存じあげております。
その小さな箱を見た瞬間、わたくしの胸はドキドキしてはち切れそうになったのでございます。
どうしましょう?
指先も小刻みに震えてしまいました。
そして、あろうことか、わたくしはその小さな箱を床に落としてしまったのです。
「あ、ごめんなさいませ。新しいのに、取り替えさせていただきます」
わたくしは、すぐにレジカウンターから外へ出ようとしましたが、若い女性は
「いえ、いいですよ。そのままで」
とおっしゃってくださったのです。
若い女性にとって、そういう商品を購入することは恥ずかしいはずです。
勇気を出して買ったのに、それをレジ係が落としてしまったわけですから、恥ずかしさは頂点に達していたのではないでしょうか。
本当に、申し訳ないことをしたなと反省しております。
その後、しばらく、その動揺がおさまりませんでした。
3人ほど、お客さまのレジ清算をしたころ、トイレ掃除を終えたリエンさんが帰っていきました。
「お疲れさまです。ご機嫌よう」とわたくしは元気よく声をかけさせていただきました。
リエンさんも「ありがとう。ご機嫌よう」とわたくしの口調を真似て返してくださいました。再度、胸がキュウンとしてきました。
リエンさんがいなくなったあと、この店の美化はわたくしが責任をもって勤めさせていただきますと、リエンさんの背中に誓いお辞儀したのでございます。
そのころ、やっと、わたくしの動揺が鎮まったのでございます。
交代にマービーが入ってきました。
マービーはカレー弁当を食べたのでしょうか、口の周りにカレールーがついていました。
「マービーさん、お口に・・」
とわたくしが、指を口にかざしてみせてあげると、マービーはすぐに気づいて制服の袖で口元を拭いてしまいました。
「外の連中、盛り上がってて、帰るつもりないみたいですね」
と団結鉢巻の人たちのことをマービーさまは言われました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます