第14話 わたくしはマービーさまをお慕いしております!


 わたくしは、レジの仕事をマービーから学びました。

この店はセミセリフレジのシステムになっていて、スキャナーを商品バーコードにかざして「ピッ」としたあと、精算はお客さまがレジに現金を入れるか、クレジットカードやプリペイドカードを使って支払います。『何とかペイ』で支払いたいとうお客さまも多いですので、そのときはお客さまのスマホのバーコードをスキャンして精算します。


「最初にレジ袋はお使いですか?」とお客さまに尋ねます。


お使いになる場合は、商品の量を見て、大中小のレジ袋を用意します。

小と中は3円、大は5円かかります。あれはたしか、若くてハンサムな環境大臣がレジ袋の有料化を決定したのだと記憶しております。


環境を守ることと、レジ袋がどれほど関係しているのかわかりませんが、環境に優しい生活をしようという意識改革にはなったように思います。


しかし、現場のコンビニ店は、よけいな手間が増えただけのような気もします。


 マービーは袋詰め職人です。


お客さまが機械のなかにお金を入れている間に、わたくしたちはレジ袋に商品を入れるのですが、この作業が遅くてわたくしはしばしばお客さまからお叱りをうけるのでございます。


しかし、マービーは素早く、しかも美しく袋詰めをされます。


まさに神技としか言いようがありません。

もしも、「袋詰めオリンピック」なるものがあったらマービーは間違いなく金メダルが取れるのではないでしょうか。


そんなマービーさまを、わたくしは尊敬し、お慕いいたしております。


 ひと言で袋詰めと言いますが奥の深い作業でございます。


たとえば、お弁当を温めるお客さまの場合、お弁当が温まるまで袋詰めはできませんし、温かいお弁当の上にアイスクリームを乗せるのは厳禁です。


大量に買い物をされるお客さまには、レジ袋が2つ必要な場合があります。


以前は無料でしたから、こちら側の判断でレジ袋を2つにしていたそうですが、いまは有料ですから「レジ袋を2つにしてもよろしいですか?」とお客さまに尋ねなければなりません。


さらに、お箸やスプーンやフォークなどを不要だというお客さまもおられますから、いちいち尋ねなければいけません。


ペットボトルを横にするのを嫌がるお客さまもおられますので、基本的にはペットボトルを立てて袋詰めしますが、どうしても横にせざるを得ない場合は、お客さまに指示をあおがなければいけないのです。


袋詰め1つとっても、いろんな注意事項がありますし、技術が必要なのです。


マービーはそれらを見事に習得されています。

まさに、プロフェッショナルです。


わたくしも、早くマービーのような袋詰め職人になりとうございます。


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