第13話 事件が起こる予感しかしません!


 たしかに変な連中がそこにいました。


鉢巻を頭に巻いている人、その鉢巻を首にかけている人、マフラーみたいに巻いている人などさまざまでした。


その鉢巻には「団結」とあります。

ノボリやプラカードがワンボックスカーに立てかけてありました。


そこにはこんな言葉が描いてあります。


『オスプレイ配備反対!』


『追加配備を許さない!』


『海兵隊は撤退を!』


 駐車場が即席の宴会場になっていました。


ワンボックスカーの近くで車座になって缶ビールや缶酎ハイ、缶の泡盛などを飲んでいる一群と、円柱形の灰皿の周りでタバコを吸っている一群とがあり、総勢20人はいたでしょうか。


「大晦日だっていうのに、国際通りをデモ行進したみたいですよ。県庁前広場で街頭演説しているのを見ましたからね。その興奮が冷めやらないって感じですね」


「どうしよう? 警察、呼ぼうか?」

 オーナーさまが小さな声で言いました。


「うちの駐車場は広いですからね。他のお客さまが駐車できなくなることはないですし、暴力沙汰を起こしたわけではありませんからね」

 とマービーが冷静に言います。


「そうだよね」


「でも、毎年、大晦日になると、酔っ払った米兵たちが来るじゃないですか。今夜も来るんじゃないですか。そのときまでに、彼らが帰ってくれていればいいですけどね」


「そうだね。去年は、ガラの悪い海兵隊が若い日本人女性を肩にかついで店に来てトイレに入ったんで、すぐに警察を呼んだけどね。あのときはレイプ寸前だったね」


「怖かったですよ」


「酔っ払った米兵を、あの人たちが見たらどう思うだろうね」


「この店は自衛隊の人たちも、よく来るじゃないですか。いつでしたか、ヤクザの車が駐車スペースの枠からはみ出して止めていて、自衛隊の車が止められず、自衛隊員がヤクザに少し移動してくれないかと依頼してモメたことがありましたよね。あのときも怖かったですよね」


「そうそう、そういう事件、あったね」


「自衛隊とあの人たちが遭遇したらどうなりますかねぇ?」


「どうしよう」

 オーナーさまは心配そうに言いました。


「ま、でも、さすがの自衛隊も、大晦日ぐらいはお休みだと思いますよ」

 とマービーは気休めにもならないようなことをおっしゃいます。


「このお店、いろんなことが起こるんですね」

 と、わたくしは、正直な感想を申し上げました。


「ヒドイ事件がいっぱい起きてるよ。酔っ払いが陳列してある商品を片っ端から投げ出したこともあったし、レジをガンガン殴りだすお客さんもいたしね」

そう言い、オーナーさまは駐車場で酒を飲みタバコを吸っている人たちを眺めながら


「あの人たちが、変な事件を起こさなければいいけどね」とつぶやきました。


「そうですね」

 とマービー。


 そして、オーナーさまはこうおっしゃいました。

「ま、とにかく、ここは私が注意して様子を見てるから、マービーは仕事前の腹ごしらえがあるでしょ。与那嶺さんも、事務所に戻ってください」


 マービーは事務所に戻りながら「何もなければいいけどね」と1人ブツブツと言っていました。


わたくしは、何も言わずに、マービーのあとについて事務室へ戻りました。



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