第12話 駐車場に変な人たちがいます!

「駐車場に変な連中がたむろしてますよ。円陣組んじゃったりして、缶ビール飲んでます。なかにはタバコのポイ捨てもしてますよ」

 事務室に豊里さまが入ってきました。

夜のシフトの30分前に出勤して、いつも弁当やサンドイッチを食べておられます。


マンガのキャラクターがプリントしてあるTシャツとキャップをかぶっていて、わたくしとさほど変わらない歳なのに、どことなく子どもっぽいところがございます。


本名は豊里清志さんですが、なぜかみなさんからマービーと呼ばれています。

マービーというマンガのキャラクターがあるのでしょうか? 


「なぜマービーと呼ばれているのですか?」と本人にお聞きしても


「ええ、まぁ。小さいころから、みんなに言われてたんです」

とはぐらかされてしまいました。


マービーは肥満体ですから、Tシャツの胸のあたりが盛り上がっていて、ちょっと女性っぽく見えます。

歩く姿は、どことなくお相撲さんみたいですけどね。


「注意したほうがいいんじゃないですか?」

 とマービーはオーナーさまに言います。


「暴走族?」

 オーナーさまは眉をひそめて言います。


「いえ」


「半グレ?」

 オーナーさまは怖々と言いました。

半グレというのはどういう意味でしょうか? 


半分グレた人たちのことでしょうか。

暴力団員ではないけど、暴力を振るう犯罪集団のことをいうのかもしれません。

いずれにしても怖い人たちのことだと思われます。


「半グレじゃないです。何と言えばいいんでしょうか・・・」

 マービーは適切な言葉が見つからずに困っている様子でした。


「とにかく、駐車場へ行ってみてください」


 オーナーさまとマービーは事務室を出ていきました。

わたくしも、好奇心にあらがいきれず、駐車場へと向かいました。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る