第10話 30すぎたら女は終わりですのよ!

 横浜の母は反対しました。


わたくしがコンビニで働くなんて、恥ずかしいというのです。


わたくしは、女子大を卒業して、就職せずずっと家事手伝いをしておりました。

そして30手前で結婚しましたので、仕事というものの経験がないのです。


主人が大学を退職し、沖縄に引っ越しました。

沖縄で主人に適した仕事がなかなか見つからないので、わたくしが働くことにしました。


コンビニで働くことを主人は歓迎してくれましたが、横浜の母は大反対でした。

わたくしは、母に「それは仕事に対する偏見ではありませんか?」と反論しました。職業に貴賎はありません。

母が反対しようが、わたくしの決意は翻ることはありませんでした。


 わたくしが結婚したのは4年前でした。

お母さまがわたくしに毎日のように言うのでございます。


「30になったら、女は終わりですのよ。女には賞味期限がございます。いいかげん、決めてしまいなさい」

 わたくしは何度も見合いをしました。


お相手は、高学歴で高身長で高収入の方々ばかりでしたが、わたくしは、そういうものに興味がありませんでした。


ですから、見合いをするたびに、わたくしからお断りしていました。


わたくし自身が男か女かわからないのです。

男性を愛することができるか不安だったのです。

一生独身でもいいとさえ思っていました。性欲もありませんから、死ぬまで処女だったとしても後悔はないと思います。


 しかし、母は許してくれませんでした。


「誰でもいいじゃないですか。愛なんてものは、結婚したあとに育んでいけばいいのです」としつこく結婚を迫るのです。


繰り返し訴えられると、人間の価値観は揺らぐものなのでしょうか。

わたくしも、いつしか「結婚しなければ」と思うようになったのです。



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