第6話 わたくしは泣き虫で惚れっぽい性格です

わたくしは小さい頃から泣き虫でございました。


高台から横浜港を眼下に眺めながら、豪華客船が大海へ出ていく姿に涙したことがあります。

その客船に友人が乗っているわけでも、乗組員に身内がいるわけでもありません。

ただ、そこには悲しい別れがあるんだろうなと想像しただけで泣いてしまったのでございます。

 

わたくしの誕生日に親戚一同が集まったことがあります。


そのときわたくしは白いドレスを新調してもらいました。


みなさまがお庭で会食していたところへそのドレスを着て行ったのです。

すると、麹町にお住まいの叔母さまが「まあ、お人形さまみたい!」とおっしゃったのです。


そのとき、わたくしは、ああ、自分は人間ではなく人形だと勘違いしてしまい、ワァワァと声を出して泣いたのでございます。

 

33のいまになっても、わたくしの泣き虫は治りそうにありません。


先日も、人前で大泣きいたしました。

わたくしが悪いのでございます。


わたくしが、焼き鳥のタレと塩を間違えたのでございます。


お客さまは「焼き鳥のタレを1つ」とおっしゃいました。

しかし、わたくしは「焼き鳥の塩」を渡したのでございます。


お客さまは、帰宅して食べようとしたときに気づいたらしく、すぐに店へ電話して来られました。


その電話をコンビニのオーナーさまが取られました。

「ふざけんじゃねえぞ!」

 と、お客さまは、いきなり乱暴なお言葉を発せられたそうでございます。


オーナーさまは住所を聞いて、すぐに代わりの焼き鳥を持ってお客さまの家へ伺うと電話でおっしゃったそうです。


オーナーさまは50過ぎの男性で、コンビニを3店舗経営しているそうです。

「あなたも一緒に行って、謝りましょう」

 オーナーさまはわたくしを誘ってくださいました。


わたくしは、店長のメイリンさんも好きですが、オーナーさまも大好きです。

おかしいでしょうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る