第3話 お客さまが発した言葉とは?

 先ほどのことでございます。19時を少しまわった頃でございましょうか。工事現場の作業服を着たお客さまがわたくしの遅い動作を見て、

「早くしろよ!」

 と荒々しくおっしゃったのです。


大晦日でもお仕事をされていたのでしょうか、お客さまはイライラしているようなご様子でした。

 

しかし、わたくしは、その言葉に泣いたわけではありません。


3か月の間に同じことを何度も言われて慣れていましたので、わたくしの心は動揺いたしませんでした。


最初はたしかに早くしなければと焦って失敗することが多々ございましたが、いまでは正確さを優先することに腹を決めております。

 

わたくしは、その作業服を着たお客さまが発した次の言葉に傷ついたのでございます。

「お前、女かよ。男かと思った。どっちだよ」


実は、10代のころ、わたくしは女の子らしくするように躾られました。


赤い縮れ毛の髪を黒く染め、ストレートになるようにパーマをかけ、女の子らしい服装を着て、女の子らしい所作を身につけました。


ところが、結婚して一変したのです。

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