第2話 二次元(表面だけ)の家

 確かに道路は崩れていた。

岬に白い家が二軒見える。

一軒は舞子の家。


 道路工事をしている作業員が居た。

舞子は声を掛けた。


 「すいませ~ん。あそこの家に行きたいんですが」


作業員は重機を止め、


 「何しに」

 「何しに? 私の家なんです」

 「やめた方が良いよ。誰も居ないし倒れるぞ」

 「うるさいわね。私の家よ! どう行けば良いの? 早く教えて!」


作業員はいぶった化な表情で舞子を見た。


 「忘れものでもしたのか?」

 「アナタに言う必要はないでしょう」

 「・・・今、トラックが来る。それに載せてもらいな」


舞子は道端(ミチバタ)に座ってトラックを待って居た。

遠くで潮騒が聞こえる。


『眼の前に見える舞子の遠い家・・・』


暫く経ってトラックが来た。

作業員が運転手に何かを話している。

運転手は舞子を見て、


 「乗りな」


舞子はトラックに乗った。

車内で暫くの沈黙が続いた。

運転手が、


 「・・・何処から来たの?」

 「どこから? ・・・青木」

 「アオキ? 」


運転手はチラッと舞子を見て、


 「青木病院て『アノ』? ・・・ う~ん。岬に家なんか在ったっけ?」

 「あそこに在るじゃない。見えないの?」

 「あ~あ、あれ? あれは『表面だけ』の家だ。裏は崩れて何も無い」

 「裏が無い!? そんな筈ないわ。早く行ってちょうだい」


トラックは白い家の近くに停まった。

トラックを降りる舞子。

運転手は妙な笑いを浮かべた。


 「気を付けな」


舞子は運転手を睨む。

                          つづく

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