第三九話 『出会う貴族は命知らずばかり』
快晴の空の下、昼時を過ぎたあたり。
エトワールヴィルの首都、リスブールの外壁から程近い場所にある森の手前に設営された、私の為の巨大なテントに来訪者が来ていた。
身なりの良い恰好をした金髪碧眼の中年の男性が、にこやかに作り笑顔で私に話し続けている。
「――ですので、女神メルナ様。大陸首脳会議の参加国の関係者の皆様が一度、貴女様に謁見したいとの事ですので…… 女神メルナ様。ぜひ、謁見を許可して頂きたく……」
「ふぅん……」
「……ひぃ! わ、分かっています! 貴女様に面倒をおかけさせてしまう事は十分、承知しています! ですが! この私の命一つで納得して頂けたらと!」
私の生返事に怖がりながらも諸王国の貴族たちの謁見を頼み込むこの男の名前は、アルノーというらしい。
なんでもエトワールヴィルの国王の執政をしているのだとか。
そんなアルノー曰く、諸王国の国王や貴族や官僚たちが、私に謁見したがっているらしい。
まったく、なんで私が……
そう言いたくなるが、ここに来たのは外交の為だ。
一応私は隷属連邦の元首という事になっていて、その元首の私に会いたいと、そう大陸首脳会議の諸王国が言ったから、こんな場所まで来たのだ。
これを却下したら、何のために来たのかと。
怯えるアルノーに言う。
「わかったわ。アルノーだったかしら? 貴方がそこまで言うなら、その謁見、許可しましょう」
「っ!! おお、ありがとうございます! 寛大な貴女の御心に感謝を!」
そう言うとアルノーは一礼をしてテントから出ていく。
そんなアルノーを見送り、つい溜息をついてしまった。
まったく、なんで私が矮小な奴らを相手にしないといけないのよ。
そんなこんなで次の日から大勢の貴族たちが謁見にやってくるようになった。
目の前には着立ての良い赤い貴族服を着た気の強そうな老人男性と、口元を扇子で隠すクリーム色の貴婦人のドレスに身をまとった老人女性。
老人夫婦の貴族は声を荒げて怒鳴る。
「ふんっ! 女神メルナなどという仰々しい名前に、どれほどの奴かと思ったが! 気品など何処にも無い田舎貴族の立ち振る舞いではないかっ!」
「まあ、地面に座るなんて汚らしいっ!こんなのが女神を名乗るなんて恥ずかしくないのかしらっ!」
罵倒の言葉を投げかけてくる目の前の命知らず共に、つい溜息が出てしまう。
なんなんだ、こいつらは……
「はぁ……」
「なんじゃ、その態度はっ! 謁見に来てやったというのに、外交の礼儀もしらんとはなっ!」
「まあまあまあっ! 床に座ってはしたない! その椅子にさえ座れない気品にお似合いねぇ!」
私の溜息に、怒りと嘲笑を向けてくる目の前の老人夫婦の貴族。
正直、めんどくさい。
一応、大陸首脳会議の為に我慢して聞いているが……
未だにピーチクパーチク言ってくる老人夫婦。
「外交の礼儀を知らんとは、お前の帝国の文化が察せるな!」
「きっと野蛮な人たちが沢山なのでしょうねぇ!」
「違いないな、妻よ! 我らの王国に千年もの歴史があって良かったわい!」
あー……
もういいかな。
テントの隅に居る使用人たちを見ても、もう掃除道具を準備してるみたいだし、もういいか。
私が腕を動かし始めた事に老人夫婦は少し驚いた様子で見ている。
着立ての良い赤い服を着た気の強そう老人の前に手を持ってきて、中指と親指を合わせて力を込めた。
「な、なんじゃ! やっとワシらをもてなす気にな――」
ビシュ! ブシャアァァァァ!
指を中指を弾くと、着立ての良い赤い服を着た気の強そうな老人の全身が爆ぜた。
ボトボトと横にいた夫の血肉を浴びる中、自身の横で起こった事が理解できて無さそうな老人女性は呆気に取られている。
横に居る老人女性の夫だった赤い破片たちを眺め、しばらくして、やっと何が起きたかを理解したようだ。
「ギイィィィィアアアアァァァァァァァァアア!!」
迫真の悲鳴を上げてテントの出口に逃げる老人女性。
しかし足元がおぼつかずヨチヨチな足取りで、この巨大なテントの出口に戻るには何分もかかってしまう感じだった。
そんな老人女性を摘まみ上げ、顔の前まで持ってきてやる。
目の前の老人女性が叫ぶ。
「ヒイィィィィッ! 助けてぇぇぇぇえ! 殺されるぅぅぅぅう! 助けてぇぇぇぇえ!」
下に居る私の使用人に助けを求めている老人女性だったが、そんな老人女性に構う事無く、私の使用人たちは老人男性だった肉片の清掃を始めた。
全く相手にされない処か、気に掛ける様子も無い使用人たち。
なんか哀れだなぁ……
可哀そうだから外に逃がしてあげよう。
手に持った老人女性を出口に向けて投げ捨てた。
投げられた雑巾が吹っ飛ぶように無造作に出口へ飛んでいく老人女性。
「このテントから退出したかったみたいだし。私ったら、いい事してあげたわ」
そう私が言うと、掃除道具を持った使用人たちがテントの出口へ向かっていく。
まあ、あれで生きている訳ないか。
ご愁傷様ね。
老人夫婦を捻り殺してやってから数日。
そんな事があったのは知っている筈なのに、私に謁見に来る奴らはアホばかりだった。
夜に謁見に来た目の前の軍服姿の中年男性が下品に言う。
「お前、デカいが体はエロいな。ひひひっ! お前、俺の女にならないか? そうすれば沢山の良い思いをさせてやるぜ、ひひひっ! もちろん夜の営みもなぁ!」
「はぁ…… なら今日の夜の営みの相手をしてもらおうかしら」
頭が悪そうな事を言い連ねる軍服姿の中年男性を摘んだ。
「お、おおっ! そうだ! お前は俺の女に―― な、なにを、うわぁああ!」
そして胸の上に落とし、そのまま中年男性をパイズリしてやった。
「ひ、ひぃぃぃ! やめろっ! そんな事したら俺が死んで――」
ダップン! ドップン! ダッパン!
ボキボキボキッ! ブチュグチュグチャ! グチャア!
乳の側面でグチャグチャになったソレに言ってやる。
「大きな胸で死ねて良かったじゃないの。ふふっ」
その次に来たのは野心家そうな中年の男。
こいつも頭が悪いのか、私に婚姻の申し込みをしている。
「ワシは将来は沢山の王国を統べる皇帝になる予定の男だ! お前! 私と結婚して共に大陸の制覇を狙おうぞ!」
「はぁ……」
「なぁに。お前はワシに膣を用意すればいいのだ。最強の男の遺伝子を後世に伝えて――」
「あっそ。なら膣を用意してあげるわ」
アホな事を言う野心家そうな中年の男を摘まんでスカートを捲り、下半身に持っていく。
「そうだ! 私の最強の遺伝子を―― な、なにをするっ! うわぁああ!」
ぴとっ…… ずりっ! パキッ!
「あぁっ!」
ずりりっ! ボキバキベキッ!
しばらく楽しんでから手の中の中年の男を見ると平べったく潰れていた。
地面に投げ捨て、ベシャっと落ちたソレに言う。
「まあ、夜の玩具にしては楽しめたわ」
それからも沢山の貴族と出会うも、マトモな事を言うのは数が少なかった。
ほんとなんなのよ、こいつら。
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