第二七話 『世界を統べる女神様の些細な些細な大殺戮』
この距離では魔法は使え無さそうと判断したメルナは口にする。
『踏み潰してしまいましょう』
そう言うと、メルナは帝都のほうへ歩き始め、この世の物とは思えない程の破壊音を地表で響かせながら迫ってくる。
メルナの言葉に、帝都の人々はパニックを起こし逃げ惑う。
「うぁわああああ!」
「いやぁああ!女神メルナ様に踏み潰されちゃう!」
「私を置いて逃げてぇええええ!あなた達だけでも生きてえぇえ!」
「ひぃぃいいい!お許しくだされ女神メルナ様ぁぁぁぁああああ!」
パニックになり帝都の全ての場所で人々が逃げ惑う。
今から天に聳える巨大な女神メルナ様に踏み殺されるのだと、帝都の全域が恐怖に包まれる。
逃げる者、許しを請う者、全てを諦め家に帰る者。
皆が様々な反応をするが、一様に恐怖で支配されている事は皆同じだった。
天に聳える巨大なメルナが近づいてくる。
ズッドォォォォオオオオン!
ズッドォォォォオオオオン!
この世の全てを破壊する足音を響かせ、女神の様に巨大なメルナは帝都の近くに来た。
帝都の全てを見下ろすメルナに静まり返り、息を呑む人々。
そんな帝都の人々の感情なんて知らないメルナはハイヒールの付いたブーツを上げ、帝都の外壁近くの魔物たちに振り下ろした。
ズッドォォォォオオオオン! プチプチプチプチプチプチッ!
たった一踏みで一万を超える魔物が死んだ。
帝都の外壁の傍に落下したメルナの脚は、帝都のあらゆる物と全住民を宙へ突き上げた。
建物が崩れ、ボトボトと人々が落下する。
あまりの衝撃に、叫ぼうにも帝都の人々は言葉が出ない。
痛みで静まる帝都の人々は這う這うの体で女神であるメルナを見上げた。
そこには、再度脚を上げた天に聳えるメルナの姿があった。
ズッドォォォォオオオオン!
ズッドォォォォオオオオン!
ズッドォォォォオオオオン!
ズッドォォォォオオオオン!
何度も脚を振り下ろされ、その度に帝都のあらゆる物と全住民が宙を舞い、そして落下する。
何度も何も繰り返される責め苦に、人々は只々涙を流し絶望する事しかできないでいた。
あらゆる人々が上空に飛び跳ねては落下する。
無垢な子供たちは涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら上空へ飛び跳ね続けた。
老人達は腕や脚を歪にしながら上空へ飛び跳ね続けた。
騎士達は受け身を取るのが精いっぱいになりながら上空へ飛び跳ね続けた。
若い女や年老いた女も関係なく皆平等に上空へ飛び跳ね続けた。
飛び跳ね続ける彼らには、もはや女神の様なメルナへの、畏怖と恐怖と懺悔しか頭にない。
逃げる程の体力は、もうどこにも無かった。
帝都の周辺の魔物を踏み潰していく女神の様に巨大なメルナだったが、次第に魔物は数が減るにつれ、散り散りになって帝都の外壁から離れていくのが見えた。
帝都の外壁に居る魔物をグルっとあらかた踏み潰し終えて、勝手に逃げていく魔物を眺めながら、一仕事を終えたメルナは帝都を見た。
相変わらず小さすぎて何も分からないが彼らは今どうしているだろうと、メルナは実際の帝都で起こっている事など知る由もない。
魔物が居なくなった帝都の外壁を見て、良かった良かったとメルナが満足している所に、それは現れる。
帝都の中心、そこは帝国の中枢である王城の天辺に、何かの魔法陣が現れた。
その魔法陣に気が付いたメルナは、急いで注視する。
『まったく、今度は何よ……』
王城を覆いつくす程には巨大だが、今のメルナから見てあまりにも小さいその魔法陣から、やがて一匹の魔獣が現れた。
体を黄金の体毛で覆ったゴリラの巨大な魔獣。
魔法陣から出た黄金のゴリラは王城の天辺によじ登り、咆哮を響かせメルナめがけて走り始めた。
町の建物が壊れる様子を気にしないその様は、まさしく悪魔といった様相で、上から見下ろしていた巨大なメルナは睨む。
『これは…… 新たな敵ってことよね?』
メルナがそう言う頃には黄金のゴリラは足元に来ている。
天に聳える女神の様な巨大なメルナの足元に来た黄金のゴリラ。
黄金のゴリラは何か力を溜める様子をすると体毛を光らせた。
なにをするんだろうと、身構える巨大なメルナに向かって、黄金のゴリラは口を開けた。
黄金のゴリラから光線が出た。
その光線はメルナめがけて飛び、メルナの体に当たる。
『うわぁ!』
その力強い光を浴び、メルナは怯み両手で顔を隠した。
やがて黄金のゴリラは勝ったと言わんばかりに、光線を出し切り目の前の巨大なメルナを見た。
静寂が帝都を包み込み誰もが固唾を呑む。
皆が思った。
あの光線なら、女神メルナ様でさえもただでは済まないだろうと。
あの恐怖の女神メルナ様だって、あの黄金のゴリラなら倒せるかもしれないと。
そんな期待を胸に、人々がメルナを見上げていたが、帝都の人々の期待は悉く潰え、それはさらなる絶望に落とした。
メルナは一切の無傷だったのだ。
巨大なメルナは何てこと無さそうに怒った様子で、黄金のゴリラを見下げる。
黄金のゴリラは焦った様子で再度、光線を口から出した。
その光線を身に浴びながら、うっとうしそうにする女神の様に巨大なメルナ。
どれだけ人々から明るく強そうに見えても、巨大なメルナから見た細く弱弱しい光線でしかなかった。
メルナからしたら、ほんの少し強い水量のホースで水浴びする程度の威力のそれでは傷などつけれる筈も無かったのだ。
必死に黄金のゴリラは光線を撃ち、それをうっとうしそうなにする巨大なメルナ。
メルナは黄金のゴリラに向けて脚を上げ、振り下ろした。
ズッドォォォォオオオオン!
しかし、黄金のゴリラは寸前でメルナの脚を回避してしまった様だ。
忌々しそうに黄金のゴリラを睨む巨大なメルナ。
そんな圧倒的な存在に睨まれ、黄金のゴリラは苦し紛れに帝都の中に逃げた。
黄金のゴリラは建物を破壊しながら帝都の中心に向かって走り、貴族区画を突き抜け王城に辿り着くや否や、王城を上って天辺で情けない声で吠える。
まるで元の場所に返してくれと言わんばかりの姿だ。
やがて黄金のゴリラは巨大なメルナに勝てない憂さを晴らすかの様に、帝都の中に向かって光線を吐き出した。
帝都の中が炎に包まれる。
メルナは焦った。
『ちょ、ちょっと……!?』
メルナは急いで黄金のゴリラを仕留めないといけなくなってしまった。
しかし、ゴリラが居るのは帝都の中心にある王城の天辺。
天を貫く程に巨大なメルナといえど、どうあがいても手が届かない位置に居る。
メルナは考え、そして意を決した。
帝都の城壁ギリギリに立ち、メルナは中の人々に向かって言い放つ。
『皆さん、踏み潰されたくないなら、私から逃げてくださいね』
メルナの言葉に帝都の人々が沈黙する。
そしてメルナの真意を理解した帝都の人々は一斉に甲高い悲鳴を上げた。
その声量高い悲鳴は、遥か彼方で見下ろすメルナにも聞こえる程だ。
『もう、そんな怖がらないでよ…… 私が怪獣みたいじゃない……』
そう呟きつつも、巨大なメルナは脚を上げ、帝都の中に入れる。
帝都に上空に入ってくる途方もない程に巨大なハイヒールのブーツ。
それを見上げ、人々は急いで逃げる。
タダでさえ甲高く声量高かった叫び声は、さらに大きくなっていく。
そんな帝都に、メルナは脚を降ろした。
ズッドォォォォオオオオン! プチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチッ!
帝都の中に破壊音が響き、軽く千人は超える人々を踏み潰した。
その巨大なハイヒールのブーツが帝都の中に落ちた。
それを理解した帝都の人々は悲鳴のボルテージが更に上がる。
声量上がった足元からの悲鳴を聞き、メルナは帝都の中の人々に向けて言う。
『悲鳴上げてないで逃げなさいよ。私は言ったわよね…… 死にたくないなら逃げなさいって』
そう言ってメルナは、もう片方の脚を上げ、それを次の一歩として帝都の中に落とした。
次の脚が帝都の中に落下する。
ズッドォォォォオオオオン! プチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチッ!
その一歩で、軽く二千人を超える人々が踏み潰された。
帝都の中で響く悲鳴は最高潮を優に超え、その様相は地獄がこの世に出現したかの様。
恐怖振りまく女神の様な巨大なメルナは、その悲鳴を聞きながら一歩、また一歩と帝都の中に脚を降ろす。
その度に千人、二千、三千人程が一踏みで死んでいく。
自身の足元でそんな惨事になっているなんて露知らず、メルナは黄金のゴリラが張り付く王城の元に来た。
聳え立つ巨大なメルナを見上げ、黄金のゴリラは許しを請う様に悲しそうな鳴き声を上げる。
そんな黄金のゴリラをに向かって腕を伸ばし、腰を下ろしてしゃがみ込む。
巨大な上半身と下半身が地表に降りてきて、王城の前方にはメルナのスカートの中の景色が広がった。
その白いショーツの土手を惜しげも無く王城の人々に見せつけながら、メルナは王城に張り付く黄金のゴリラに指を合わせる。
黄金のゴリラは、自身の胴の何倍も太いメルナの指に摘まみ上げられた。
暴れ、抵抗する黄金のゴリラ。
メルナはしゃがんだまま顔の前まで持ってきて、眺める。
許しを請う様にメルナの太い指を叩いている。
そんな黄金のゴリラを持った指を、メルナは絞めた。
ブチュッ! ビシャビシャビシャ……
黄金のゴリラは全身から大量の血を吹き出し、潰される。
大量の血がシャワーの様に王城に降り注ぎ、王城を真っ赤に染め上げた。
血が滴る王城の惨状に気が付く様子が無いメルナは、黄金のゴリラを更に念入りにこねて潰し、丸い肉塊になったソレを後ろに雑に投げ捨てる。
やっと終わった。
これだけの惨状を作ったメルナにとって、これでも帝都を救っているつもりである。
一仕事を終えた気のメルナは立ち上がり、数歩下がる。
ズッドォォォォオオオオン! プチプチプチプチプチプチッ!
ズッドォォォォオオオオン! プチプチプチプチプチプチッ!
その度に何千もの人々を踏み潰す。
そしてメルナは王城から離れて腰をおろし始めた。
帝都の出口には沢山の人々が押し押せ、我先にと出口を目指す人々でごった返していた。
そんな彼らの上空はメルナのスカートに覆われ、そのスカートの中の白いショーツが包む巨大な桃尻が彼らに迫る。
限界を超えた悲鳴のボルテージが更に上がり、それは何万人もの悲鳴の大合唱の境地だった。
「いやぁぁぁぁああああ!死にたくない――!」
「いやぁああああ!女神メルナ様許して――!」
「いやよ、いや! そんなぁぁぁあああ――!」
「ああぁぁぁぁあああああ!お尻がぁああああ――!」
「いやぁぁぁぁああああ!お尻美しゅうで――!」
「美しゅうぅぅぅぅうううう!美しゅうお尻で――!」
「俺は未だやるべき事が!うわぁぁぁぁあああ――!」
「退けよお前らっ!おれは死にたく――!」
「なぜじゃ女神メルナ様!なぜワシが死なないとなら――!」
「わしゃあまだ生きとうございますぞメルナ様ぁぁぁあああ――!」
ドッズゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウウン! プチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチッ!
ただ一心に生きたいだけの、そこに居た十万人を優に超える人々を。メルナは知らず知らずに自身の美しい尻で敷き潰した。
この帝都で生き残った誰もが見上げる。
その巨大で長い足を広げ、白いショーツを恥ずかしげも無く見せびらかす、その桃色ウェーブのロングヘアをした桃色の瞳の、その余りにも巨大な美少女。
誰もが思った。
この御方こそ、この世界の全てを支配し所有なされるべき御方なのだと。
帝都の人々が、その女神様を見上げ、その名前を口にした。
「「「「「あぁ…… 女神メルナ様……」」」」」
と。
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