はなしてる

@SIGNUM

夜の学校で

「――だから、魔法って言うのはこの世で一番現実的な物じゃないかと思うんだよ。」


「おう……何の話?」


「昨日母親と喧嘩してさ。」


「おう。」


「母親が言うわけだ、「魔法なんて現実性がない」って。」


「まあ、普通はそう言うわな。」


「いや、確かにこの科学全盛の時代に魔法は流行らない、認める。」


「うん。」


「ただ、魔法使いでもない人間が魔法を現実的じゃないって言うのはおかしくないか?」


「まあ……使えないわけだからな。」


「わかるんだよ、そこが引っ掛かるのは。たださ、考えてみろよ。」


「何を?」


「今の世の中ありえなかったことの山だぞ、人は空飛んでるし、宇宙には人工物が浮いてる、量子コンピューターは限定的だが実用段階に来てる、ゴジラの新作は視覚効果賞も取った。」


「うれしいな。」


「うれしいねぇ。」


「それで?」


「もう世界は下手なSFを超えつつある、なのになんでまだ魔法だけ子供のお遊戯なんだ?大部分は調べたこともないだろう?」


「まあ、大部分はな。」


「なんで僕の好きなものに限って馬鹿にされる?理解できん!」


「原理が分かんないからじゃね?」


「大体の人間は電子レンジが何でマイクロ波出してるのか知らんぞ。飛行機が飛んでる理由もな。」


「まあ……そうだな、それは正しい、ところでさぁ。」


「ん?」


「なんでお前の声、?」


「そりゃ君、緊急事態で話せんからよ。テレパシーですわ。」


「……何してんの?」


「や、交霊術やってるやつがいるって妖精が言うから来てみたらマジもんでな、やべーのが出てきちゃって。」


「ほうほう。」


「全員で手ぇ離さないようにしてまじないかけて、目がねぇから、声も出さないように黙ってんだけどさ……」


「で、何でおれに?」


「いや、下手するとここで死ぬし、最後は友達にと思っ――あ。」


「どした。」


「これ多分心音もダメだな……悪い切るわ。」


「おう、明日また学校でな。」


「おう、死体になってないように祈っててくれ。」

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