第5話 おばんざい
もしも新興宗教団体ならば、一緒に飯を食うのは、何らかの戒律など、嫌な意味があるかもしれない。
盆にのせられた夕飯を見て、
困った事に、夕飯はうまそうだった。
献立はごく普通のおばんざいだ。
かぼちゃと豚肉を他の野菜と甘辛く煮込んだもの、桜えびの入った青菜のおひたし、旬の浅漬けと、豆腐の味噌汁に豆ごはん。
それだけなのに、何が違うのかわからない。盛り付けがいいのか、腕がいいのか、恐らく双方なのだろう。
本当に、古風で高級なレストランの出す食事のように彩りがよく、匂いもよく、喉が鳴るほどうまそうに見えた。
正直、高校で昼休みにパンと牛乳を食べただけの
「食べないのか?
(宗教団体じゃなくて、犯罪組織でも、妙なルールがたくさんありそうだし、ここで一緒に飯を食うのは、何か宗教的儀礼になるんじゃ……だけど、腹は減ってるし、食べなきゃ食べないで変に思われるだろう。どうすりゃあいいんだ)
そういうことが気がかりになるぐらい、Ladyをはじめとするこのメレウトの住民の行動は変だった。
「あー……腹減った!!」
そのとき。
ただでさえ不安でならず、あらゆる意味で食事も喉を通らない
夕飯時の食堂に、また別の男が入ってきたのである。
血しぶき浴びて。
「!?」
戸口で、血まみれの白刃を持ったまま、ふらふら入ってきたまた別の美青年を見て、
返り血だと思うが、上半身に生臭い血を浴びた、これまた時代劇に出てきそうな服装の若い男が、……かなり絢爛たる衣装ではあったが……彼が、何故か闊達な笑顔でこっちに、何でか抜き身の刀のまま寄ってくる。
正確には、
「
「ああ、すまんすまん。刀の手入れが面倒で……」
「
「いつもと同じようなもんだ。今用意するからとっとと喰って、刀の手入れと掃除洗濯をしろ! 何を考えているんだお前は」
「ん? お前誰だ。……俺の顔に何かついているか?」
よくよくみると変なところはもっとある。何故か白髪だし、昔の人間ではなく今の男性としてもかなり大柄だ。精悍な顔立ちで鮮やかな印象を残すが……。
ちなみに顔には血糊がついている。
それを言おうとして
そのとき、
「
「
「うん。そうだよ。
そこは
「仕方ねえだろ、異形が出たら斬るのが俺の仕事だし、斬ったら血しぶきぐらい浴びちまうんだから」
異形とは何の事かわからないが、
人間かどうかはわからないが、赤い血を流す生物相手ということはよくわかる。
……映画の撮影でもない限り。犯罪組織が映画撮影しているのか??
「ご飯食べる前にお風呂入ってきてよ」
「腹減ってるんだよ。異形から守ってやってんだから、文句言うな」
話ながらも
「どうした、お前。食べないのか。料理が冷めちまうぞ。早く喰え」
「お腹すいてないの?」
とりあえず、
「異形と戦ってきたんだねー。今度はどんな奴?」
「まあな。後でLadyに報告にいってくるが、結構しぶとい奴だったんで、腹が減ってかなわねーわ」
そんな会話を聞きながら、生きた心地もせず箸を取って夕飯を開始する
(あ、……うまい)
まず、まだ暖かい味噌汁に口をつけてみて、はっきりと感じた。こんな状況でも味がわかる。……美味しいのだ。ちゃんと出汁から取った味噌汁が。
気がついた時は、味と匂いに負けて、
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