第4話 彼の本名
その流れで、
青ざめてひきつり笑いを浮かべながら、ただ無言で相づちを打つしかなかった。
その中でも生粋の電波話は、
メレウトとは古代エジプト語なのだそうだ。
もっとも未来と言える位置が令和時代で、そこから先の未来に接続した事はない。
普段は、どこの未来とも過去ともつかぬ時空にメレウトは存在するとのこと。
その、地球上のいかなる時代からも孤立したメレウトの中にも、時間はひたむきに流れている。
それで、メレウトの中だけの時間と出来事を記録したのが
最初はメレウト暦と呼ばれる事はなかったが、
「
「時空……」
そんなことを言われても
(あるいは、聞いた事がないけれど、何かの新興宗教でもやってるのか……? その方が辻褄が合うような……?)
赤茶色の肩下まで伸びた髪を後ろで一つに束ねている分厚い眼鏡の青年である。よくみると女性的とも言えるほどの色白で優しげな面立ち。書生風の和装をしているが、何か芝居がかっている訳でもなく、親しみやすそうな笑顔を常時浮かべている。背は高くもなければ低くもない。
一方の
--それでも。
そのために起こった摩擦もあったし、彼だけの生きづらさもあった。
無論、本人は自分にそんなものがあるという事には気づいていないのだが。
そうこうしているうちに、巨大な洋館の食堂についた。食堂は、こじんまりしたレトロなレストランのようだった。
広さは八畳程度だろうか。昔風の重そうなテーブルと椅子が綺麗に並べられている。
その奥で、せっせと調理をしている様子の一人の男。
細身の背の高い彼は、正しく白皙といっていいような広い額を持ち、何故かやはり動きやすそうな和装で、肩に襷をかけながら鍋を菜箸でかき回していた。
艶やかなみどりの黒髪。
「
「新入り?」
「あ、彼--」
「
相手が犯罪組織が新興宗教団体なのかもしれない。その不安はある。だからこそ、勝手に決められた名前を通用させるのは危険のような気がした。そのため、
「……」
「この屋敷で、本名を名乗るのは厳禁だ。犬死にしたくないのなら、Ladyに与えられた名を守れ」
名を名乗れではなく、名を守れと言われた……。
「
親切な口調で、
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