第17話 お好きなように
翌朝、ボクが目を覚ますと、皆いなかった。
ぽつーんという、漫画みたいな展開で。
あれ? ボク、ひとりぼっち?
そう思ったけれど、きっと皆何かしらあって今いないだけで、その内戻ってくるだろうなと思って待っていた。
でも一人の時間は長過ぎて、ボクはちょっと焦ってきた。
心臓がドクドクして、冷や汗も出てくる。
ボク、もしかして、置いてかれちゃった?
でも、なんで。みーみ、もーもー、ぺんぺん……。なんでボクに一言もなくどこかに行っちゃうの?
ボクは窓から外を見た。子供が歩いているけれど、そこに皆の姿はない。
「……」
手をぎゅっと握りしめる。
大丈夫。皆はボクを捨てるような人達じゃない。そんな人でなしなんていないんだから。
でも、待つのは、辛いな……。
「ぽてとー!!」
「!?」
声のするドアの方を見ると、みーみ、もーもー、ぺんぺんの三人がドアを開けて入ってきた。
「み、皆……!」
ほら、やっぱり。皆、ボクのことを嫌っていないんだ。きっと、何か用事があったんだ。
本当、ボクってバカだなぁ……!
「――信じることを出来る人は中々いないんだ」
お姉ちゃんは昔そう言っていたけれど、ボクは、ボク達は信じ合えるよ。だから、ちょっとでも疑っちゃったボク、大反省!
「皆、おかえり。どこに行ってきたの? ボク、一人で寂しかったんだからね!」
「みーみ達、ご飯貰ってきた! ぽてと、お腹空かせてると思ったから!」
「もーももー」
「もーもーさんもそうだと言っています。ということで、僕達は食事を貰ってきたんですよ。ただ、時間が掛かってしまったことに関しては本当にすみませんでした。お金というものがないので、働いてお礼をしなくちゃいけなかったので時間が掛かってしまったんです」
お金……。そういえば、この世界でお金って見たこともないし聞いたこともないや。まだ一日しか経ってないけど、お金がない世界なんだなぁ。でも、なんでお金がないんだろう……。うーん、いつかわかる日が来るのかなぁ。
「さてと、テーブルに食べ物広げちゃいましょうか。早く食べないと、熱々のものが冷めてしまいますからね」
「わーい!」
「もーもー!」
ボク達は食べ物をテーブルに広げていく。
あっという間にテーブルは食べ物でいっぱいになっった。
やっぱりと言うか、フルーツとか野菜が中心の食べ物ばかりが並んでいる。
もし、牛肉……なんてなったら、牛さんのもーもーが泣いちゃうもんね。
って、思ってたんだけれど……。
「も、もーもー? 何を、食べてるのかな……?」
「もーもも!」
「牛肉、だそうです」
「え」
ボクとみーみの声が重なった。
「もーもも、もーもー、もももー」
もーもーはキリッとした表情を浮かべながら何か語っていた。
それをぺんぺんがわかりやすく教えてくれる。
「牛肉ともーもーは違う、とのことです。確かに、もーもーさんはぬいぐるみの牛さんですから、普通の牛さんとは違いますからね」
なるほどとも違うとも言えない……。
ボクとみーみは顔を見合わせると、もーもーはもーもーの好きなようにしていればいいと、口を出すことはしなかった。
そして和やかに食事の時間が過ぎていく。
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