第12話 酷いこと
お腹いっぱいになって、ボクは周りを見る。ぺんぺんもボクと同じく食べ終わっていて、微笑ましそうにみーみともーもーを見ていた。みーみも、もーもーも、苺が凄く気に入ったみたいで口の周りを苺で汚しながら食べていた。仕舞いには二人は最後の一つをどっちが食べるかで揉め出す。
「ダメ! これはみーみの! もーもーはいっぱい食べた! だからこれはみーみの!」
「もも? ももももももー!」
もーもーはそう言うと、最後の苺を食べてしまった。
「あー!! みーみの、みーみの苺ー!!」
みーみはそう叫ぶと、大粒の涙を流して泣き出してしまった。
もうボク達は慌ててみーみを慰めたりもーもーに謝るようにと説得したりと突然忙しくなった。
もーもーは何だか得意げな顔をしている。って、もーもー。そんな顔してないで謝ってよ……!
「みーみ、傷ついた。傷ついた! もーもー、嫌い!」
どうしよう。みーみが凄く怒ってる……。
もーもーも少しするとそのことに気づいて、ようやく焦り始める。
もーもーは必死になって謝っていると思うのだけれど、みーみはその謝罪を受け取らない。
傷ついた顔をしたもーもーは、大樹の窓から外に飛んでどこかに行ってしまった……!
「もーもー!? どこに行くの!?」
ボクがそう言うと、もーもーが「もーももももー!」と言って、空を飛んでいく。
うーちゃんもこの事態にどうしたらいいのかわからないようで、窓から顔を出してもーもーに「戻ってきてくださーい!」と必死に言う。しかし、もーもーは帰ってこない。そのまま、もーもーの姿は遠くなり、見えなくなった。
どこに行ってしまったんだろう! 今すぐにでも探しに行った方がいいかもしれない。
だって、もーもーはまだ赤ちゃんだ! やっと歩けるようになった、小さすぎる男の子なんだ!
「みーみ、もーもーのこと、許してあげて? みーみだって、本当にもーもーのことを嫌いになったわけじゃないでしょ?」
そうボクが言うと、みーみは強がる。
「ふん。みーみ、寂しくないもん。もーもーなんて、いなくても、大丈夫だもん」
「みーみ、これ見て?」
ボクは頭にあるタンポポの花冠を見せる。
「これを作ってる時、楽しかったんじゃないの? もーもーと、一緒になってタンポポでいっぱいのところで遊んでたよね? 本当は、もーもーと一緒がいいんじゃないの? このままでいいの?」
そう言うと、みーみはぐずぐずと鼻を鳴らした。
「でもみーみ、勢いで、酷いこと言った。もーもーは、みーみのこと、嫌いになった」
みーみは涙目だ。それにワンピースの裾を両手でぎゅっと握りしめて、足元をずっと見ている。
きっとみーみは自分の言ってしまったことに凄く後悔しているんだと思う。
だからこそ、ボクはこう言う。
「大丈夫だよ。もーもーも、みーみのことはわかってるよ。きっとね。本心じゃないことくらい、わかるよ。だから、一緒にもーもーを探しに行こうか」
「……うん!」
ボクとみーみは手を繋いでもーもーを探しに行くことにした。
ぺんぺんは、もしかしたら大樹に戻ってくるかもしれないから、お留守番を頼んだ。
そしてボクとみーみは外に出て、もーもーを探し回る。
でも、どこにももーもーはいなくて、みーみはどんどん元気がなくなって、涙を見せて嗚咽を漏らし始めた。
「もーもー……、もーもー……!」
みーみはついに泣き出してしまった。
「大丈夫だよ。同じ世界にいるんだから、絶対にすぐに会えるよ。それに、もーもーの飛ぶ速度はゆっくりだから、そう遠くには行ってないはずだよ。一緒に探そう? ね?」
「やっぱりみーみのことが嫌になったんだぁ! もーもー、みーみのこと嫌いになっちゃったぁ!」
みーみはそう言ってしゃがみ込んで泣いていた。
その姿にお姉ちゃんの姿が重なって見えた。
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