第7話 子供

「与えたら与えただけ、自分に返ってくる。だけど、他人にそれを強要してはいけない。見返りを求めた瞬間、それは善意ではなくなる。聖人君子にはならなくてもいい。ただ、ぽてと達は、他人に期待して、勝手に裏切られた気分になるようなバカにはならないでほしい。私は、つい見返りを求めてしまう自分を恥じているんだよ。お金を貸す時は、あげる時。返ってこないのが普通。期待しちゃいけない。ただ、本心から何かしたいと思ったら、それをしたらいい。見返りを、求めずに。いいね。ぽてと達……」

 そういえば、あの時、お姉ちゃん、泣いてたような気がする。

 お姉ちゃん。お姉ちゃんは、何をして、何の見返りを求めていたの?

 それは、ボク達にも言えないようなことだったの?

 重たい心は、もう軽くなったの?

 そう聞きたいのに、お姉ちゃんはここにはいない。

 お姉ちゃん、待っててね。ぬいぐるみ王国を作ったら、まず一番に迎えに行くからね!

 だって、ボクはぽてと義光! お姉ちゃんの、大事な弟だもん!

 ぬいぐるみの皆も、お姉ちゃんを喜んで迎え入れてくれるよ。

 もちろん、そこに見返り欲しさなんてないんだから!

「……ぽてと君? どうしたの?」

 うーちゃんにハンカチを渡された。そのハンカチは、どこかで見覚えのあるものだった。

 あれ? でも、なんで? 目の前が、歪んで見えるよ……。

「ボク、ボクどうなっちゃったの? 目の前がぼやけて見えるよ」

「これはね、涙だよ」

 うーちゃんがボクの涙を拭いてくれる。

「あったかい心がないと流れない、優しい、優しい涙だよ」

 ボクはいつの間にか声を上げて泣いていた。

 どうして泣いてしまったのかはわからない。ただ、ボクは、凄く、凄く辛くて、胸が締め付けられるような、そんな感覚を味わっていたんだ。だけど、それは嫌じゃない。これは、嫌なんかじゃない。血の通った、生き物の証。そう、思えるから。

 気づけば、みーみともーもー達も貰い泣きをしていて、ぺんぺんは困った表情を浮かべていた。

 ボクは泣いて、涙が止まると、今度はみーみともーもーの涙を止めるためにこれからのことをたくさん話した。

 いろんな話をしたけれど、その中で、一番二人が興味を示して涙を止めたのは、お菓子の話だった。

 結局のところ、子供というものなんだなぁと、思った。

 でもそれはボクだって同じこと。ボクもまだ子供だからね!

 そう思ってぺんぺんの方を見ると、ぺんぺんは「よく頑張りました」と言って、ボクの頭を撫でてくれた。

 思えば、人前でワンワン泣いて、ちょっとみっともなかったかなあ……。

 お姉ちゃんも、人前では泣きたがらなかったから。

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