第6話 多くは望まない

「むむぅ。みーちゃんみーちゃん……。ぽてと、みーみよりみーちゃんが好きだったら、許さない! 潰す!」

 みーみの他、その場に残っている男子全員の顔色が青くなるのを感じた。

 ボクもまた、その内の一人。一気に血の気がなくなっていくのがわかった。

 そうしたら、ぺんぺんがボクよりも先にボクのフォローをしてくれた。

「み、みーみさん? ダメですよ? そんな、下品な……恐ろしいことを口にしては。わかりますね?」

「なんで? 旦那さんが不倫したら、許せないよ? みーみ、どこもおかしなこと言ってないよ? 浮気するような人だったら、そもそもみーみ、好きにならない! だから、本当に、もしもの時だけ、潰すの!」

 どうやら、ボクはみーみに身も心も潰されないように、誠実に生きていかなければいけないらしい。それが人として当然のことなのだけれど、でも、それにしても、みーみって、結構な鬼嫁なのかなぁ。

「と、とにかく、この世界のことについて話しましょう! ね、ぽてと君!」

「そうだね! そうしよう! ありがとう。うーちゃん!」

 ボクは尻尾を揺らした。

「そういえば、ぽてと君の夢って、何なのかなぁ?」

 うーちゃんに聞かれて、ボクははっきりと、胸を張って答える。

「ぬいぐるみ王国を築いて、王様になること!」

 えっへんと、そう言ったんだけど、うーちゃんは首を傾げて不思議そうな顔をしていた。

「ぬいぐるみ王国って何?」

「ここにいる皆、元々はぬいぐるみなの。だから、ボク達を中心としたぬいぐるみ王国を作るの! そうすれば、お姉ちゃんがきっと喜ぶの!」

「お姉ちゃん? その、お姉ちゃんは君達のご主人様だよね?」

「うん! お姉ちゃん本人は自分のことが大嫌いなんだって。だけど、ボク達は知ってるんだよ。お姉ちゃんが凄く優しいこと! それに、変に人に期待しないから、全部自己責任で頑張ってることも! だから、いつも笑ってて欲しいの! 大好きな彼氏さんと、ボク達と一緒にいる時くらいは、ずっと!」

 ボクは笑みを浮かべた。これが、ボク達の本心。

 多くは望まない。ただ、一人だけ笑ってくれていれば、それでいい。

 お姉ちゃん。彼女だけが笑って過ごしてくれていれば、ボクはとても嬉しいのだから。

 きっとそれは口に出さないだけで、みーみも、ぺんぺんも、もーもーも一緒だと思う。

 でもなんでかなぁ。人間って、面倒臭い生き物のようで、人を貶したりすることはとても得意。

 蹴落とすことが得意な人があまりに多すぎる。

 助けようとしてくれる人も、もちろんたくさんいる。だけど、見返りを求めたがる人がいっぱいいるのも事実。

 もし、ぬいぐるみ王国が作れたら、自分のために、他人を助けられる人達をいっぱい作りたい。

 そのためにも、自分達が一番変わらなくちゃいけない。

 他人を動かそうとしても、動くわけがないから。

 これは、お姉ちゃんが口が酸っぱくなるくらい、ずっとボク達に言い聞かせてた。

 多分、お姉ちゃん自身が自分に言い聞かせていたということもあるのだと思う。

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