第4話 固有スキル鑑定と串焼き屋
「それでは鑑定の儀を始めさせて頂きます」
彼女の言葉が聞こえてきたと思うと次第に身体が熱を帯びたようにぽかぽかとした感覚が身体を覆いつくす。
(これが鑑定魔法を受けた感覚なんだろうな)
ほんの数十秒ほどでその感覚は消え失せて彼女の声が聞こえる。
「もう目を開けられても良いですよ」
その言葉に私が目を開くと目の前に彼女が立っているのが視覚に入る。
「それで、結果はどうでしたか?」
結果の報告を待ちきれなかった私が彼女にそう問いかけると彼女は困った顔を見せて告げた。
「誠に申し訳ありませんが、先ほど判明した固有スキルについての説明をすると言いましたが、その件についてはご期待に沿うことが出来そうにありません」
「どういう事ですか? まさか私には固有スキルが無かったのでしょうか?」
「いえ、我々は身分性別を問わず神様からの祝福を授かっていますので、スキルの種類はそれぞれですが必ず存在するものです。ただ、あなたの固有スキルについては私がこの役目を授かってから初めて見るものでしたので詳しい説明が出来そうもないのです」
「初めて見る? そんなに珍しいものなのですか?」
「はい。今回鑑定した結果、あなたの固有スキル名には【カード化】とありましたが詳細な情報はほとんど出てきませんでした。名前からすると何かをカード状にするスキルだと推測は出来ますが、具体的には使ってみないと分からないとしかお答え出来ません。本当に申し訳ありません」
そう言って彼女は深く頭をさげた。
「そんなことで謝らなくても良いですよ。スキルの名前が分かっただけでも希望が持てますからね。自分で調べたり使ってみたりして何としてでも使いこなしてみますよ」
「ありがとうございます。そう言って頂けると非常に助かります。それと、もしスキルの詳細が判明したら教会へご一報頂けると情報共有が出来ますので今後同じスキルを発現された方へのアドバイスとする事が出来ますのでご協力をお願いします」
「わかりました。うまく使えるようになりましたら報告したいと思います」
私はそう伝えるとお礼を言って教会を出た。
(カード化スキル……か。教会の記録にもないくらい珍しいスキルって事よね。
私はすぐにでもスキルの検証をしたかったが、先ずは拠点となる宿を決めるために教会の近くで露天を開いている店主に声をかけた。
「ご主人、串焼きを二本ほどくださいませんか?」
「はいよ。銅貨二枚だ。熱いから気をつけて食ってくれ」
私は店主に料金を支払うと串焼きを受け取りその場でかぶりついた。
「美味しい!」
「そうだろ、そうだろ。うちの串焼きは新鮮な肉しか使ってないからな。ところで君はこの辺りでは見かけない顔だが他所から来たのかい?」
「ええ、つい先ほど街に着いたばかりで今は教会に行っていたんです」
「なら宿はまだ決めてないんだろ? 俺の知り合いに美味い飯を出すいい宿があるんだがどうだい?」
「美味しいご飯ですか、それはいいですね。何処にあるのでしょうか?」
「あー、ちょっと説明には分かりにくいかもしれんな。もし良ければ案内をしても良いが……。いや、こんな若い娘さんにそんな事を言っても怪しいだけだよな」
串焼き屋の主人はそう言って頭を掻いた。
「えっと、だいたいどの辺りかとお店の名前を教えてくだされば周りの人に聞きながら向かいますよ」
「お、おお。そうか、その手があったか。じゃあちょっと待ってろ」
串焼き屋の主人はそう言って紙に宿の名前と大まかな道順を記したメモを渡してくれた。
「俺の姪が給仕をやっている店で『からっと』という店なんだよ」
「ありがとうございます。是非とも行かせて頂きますね」
私は串焼き屋の主人にお礼を言うと地図に記された方へ向かって歩き出した。
◇◇◇
「――食事処からっと。見つけたわ、このお店ね」
串焼き屋の主人が休憩時間で案内をしてくれると言っていたのでそれほど遠くではないと思っていたが歩いて十分くらいの場所にそのお店はあった。
「大通りから少し中に入った場所にあったから見つけにくいだけで、彼は迷路の中にあるような言い方をしてたけどそれほど難しくは無かったわよね?」
私は首を傾げながらも見つけた喜びのままにお店に入っていった。
――からんからん。
小気味の良い音が店内なや響きカウンターの方から元気な声がかかる。
「いらっしゃいませ! お好きなお席へどうぞ」
カウンターの前で両手に注文の品を持ちながら声をかけてくれたのはまだ十五〜十六くらいの女性だった。
時間帯が少しずれていたからかお客はまばらだったので私は店内を見回して一番奥にボックス席を見つけそこへと向かう。
「ご注文は何にしますか?」
私が席につくとすぐに彼女が注文を取りに来たが、まだメニューもろくに見ていないタイミングで来られても困るなと思いながらも何となく待たせるもの悪いかと思い彼女に言う。
「初めてこのお店に来たのでオススメの料理をお願いしますね」
「分かりました。最高のものを出しますよ」
彼女はそう言って笑顔を振りまきながら厨房へ向かった。
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