キングレコード(ネクサス、クライム)編

第7話 KENSO

 もう絶滅したと思っていた古の日本のプログレのグループの新作が、相次いで発売される事がわかりました。これを機に、途中のままで放置状態だったものをタイトルも一新して再開しようかと思います。他に書いているものもありますので、マイペースになると思いますが。十数年以上、日本のプログレの新作はチェックしていませんでしたので、自分も勉強し直しながら書いていこうかなと。


 前回までは、ヌメロ・ウエノ氏によるメイドインジャパンレコード関係のものを中心にしていましたが、今回から暫くの間は、日本のプログレにとってのもう一人の重要な人物である、たかみひろし氏を中心に、キングレコードのレーベルであるネクサスとクライムから発売されたアーチストを紹介したいと思います。一部はプログレじゃないかもしれないものも含まれるでしょうけれど。


 キングからのプログレですと、最初に紹介すべきグループがありますけれど、今回は10年ぶりぐらいの新作を2024年11月に発売予定となっている、『KENSO』からとさせていただきます。2017年から18年にかけて、ネクサスレーベルのアーカイブコレクションが高音質CD仕様で全101タイトルが復刻されています。ネクサスレーベルは勿論プログレだけでなく、『アースシェイカー』や『アンセム』といったハードロック系のアーチストも含まれていますが、この時の復刻は、主要なアーチストだけでなく、なかなか復刻されないアーチストも含むありがたいものでした。しかも1枚1500円程度、2枚組でも2000円以下というお求めやすい価格です。『KENSO』も1stや2ndは復刻されなかったものの、(これはインディーズからの発売だから仕方ないですが)初期の作品が安価で買えるのは嬉しいものです。このシリーズには、たかみひろし氏によるネクサス創世記の秘話とかも共通で書かれていますので、興味のある方はCDを買ってみてくださいね。(まだ在庫が残っている作品も多々ありますので)


『KENSO』は、清水義央さんが中心となって結成されたグループとなります。前身となる『喧騒けんそう』 という高校生の時のバンドから数えると今年で50周年となります。その頃は『レッド・ツェッペリン』や『ディープパープル』のコピーを中心としていましたが、次第にプログレ色を強めていったようです。なお、このグループ名は、清水さんが通っていた神奈川県立相模原高校の愛称である「県相」から付けられています。

『喧騒』解散後は、清水さんは医科大学に通いながらも音楽を続けています。教育実習等で忙しくなる前に『1st』を製作、卒業してから製作された『2nd』を経て、メジャーデビューアルバムとなる『KENSO(Ⅲ)』が発売されます。(なお正式名称は『KENSO』。そのままだと『1st』と紛らわしいので便宜上(Ⅲ)を付けられています)

『1st』及び『2nd』は、軽音楽部の部室で8チャンネルのレコーダーで録音したという、如何にも自主制作という感じの音になりますが、清水さんの情熱に満ちたような素晴らしい作品となっています。その時の情熱のエネルギーがあったからこそ、初期の名作である『空に光る』、『氷島』、『さよならプログレ』が生まれたのだと。(いずれも『2nd』に収録)

 キングレコードから念願のアルバムが発売されたわけですが、そこまで至る過程については、『KENSO(Ⅲ)』の初CD化の時のライナーノーツに清水さん自ら書いていますが(自分が精神科医に通う患者となって、先生に愚痴を言うスタイルが面白いです)清水さんは自分の音楽に対しては高いプライドを持っていますね。自分達より先にデビューした人は自分達よりも優れた人であるべきだとか。一緒に演奏する人は大変だったなぁと思いますが、その期待に応えて演奏してきたんですよね。

『KENSO』のメンバーは、なかなかの実力者が揃っています。有名なのが『LOOK』というグループでも活躍し『シャイニンオン 君が哀しい』というヒット曲も出している山本治彦さん、アニメや特撮の作曲等で活躍する事になる佐橋俊彦さん、色々なグループでサポートをしてきた村石雅行さん。強者揃いですね。

 初期の頃の名曲から『空に光る』を。佐橋さんや山本さんがいた頃のライブです。


 https://www.youtube.com/watch?v=Cr9fVQxKEds


『KENSO』の音楽は、一応プログレの範疇に入るのですが、ジャズやフュージョンの影響も受けているインストのものとなります。確かに色々なロックの影響はあるでしょうが、それを上手く昇華して独自の音楽となっています。当然、ライブにも力を入れています。(ライブ盤も何枚も出しています)ここでも何度も名前が出ているPFMの影響はあると思いますが、一時期はアンコールで演奏したりもしていました。


https://www.youtube.com/watch?v=NLLJ6cQY6wE


更に特筆すべきは、清水さんは歯科医をやっているなかで活動してきたという事ですね。『ミスターシリウス』が傘屋のロックなら『KENSO』は歯科医のロックと言うべきでしょうか。

 ミスターシリウスに関しては、第2話を参照してもらいたいですが、清水さんは『ミスターシリウス』の『バレンドリーム』の解説も書いています。今一度リンクを貼っておきますね。個性の強い2人だから惹かれ合ったのだろうかと。


 https://news.kingrecords.co.jp/2023/11/22269/


 そして1991年に名作と言われる『夢の丘』を発売しています。一応、最高傑作と言われており、完成度は高いと思いますが、それで満足をするというわけではなく、更に上を目指そうとする姿勢は崩していません。その行動は尊敬に値するものですね。清水さんも自分にとって一番関心があるのが最新作という、前向きで歩んできた人です。だからなれ合いを嫌いながらも孤高であり続けてブレない作品を作っていく、そんな自分にとっては尊敬に値する人となりますね。


 https://www.youtube.com/watch?v=D91jzuVtNdc&t=78s


 その後もペースとしてはゆっくりながら、コンスタントにアルバムを出していますし、ライブも続けています。近年の活動はチェックしていませんでしたが、『KENSO』としてではなくてもライブは続けていたようですね。そして新作が出るというのも嬉しいものです。どのような出来なのか注目したいです。勿論、紹介した以外にも素晴らしいアルバムが多々ありますので、サブスク等でも確認していただければと。


 余談ですが、『KENSO』のメンバーだった山本治彦さんは、『LOOK』解散後は、アニメ系の曲等を、山本はるきち名義で提供したりしています。『おじゃる丸』の音楽もこの人の仕事です。そして佐橋俊彦さんに関しては、アニメ特撮系の音楽の第一人者となりました。『機動戦士ガンダムシード』の音楽を担当していたといえば、凄さがわかるかと。サントラをオーケストラアレンジで演奏されたものは、自分でも気に入っています。


 https://www.youtube.com/watch?v=h1SEETmVSbw


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