第6話 アウターリミッツ

前回のパッツォ・ファンファーノ・ディ・ムジカで中心となっていたグループ、

ある意味、ページェントとライバル関係にあったのが、アウターリミッツです。

(当人たちはどう思っていたかは知りませんが)


日本のプログレの有名なプロデューサーのU氏ことヌメロ・ウエノさんが、

あるイベントで見て以来、演奏は兎も角、楽曲のセンスに光るものを感じ取って、

プロデュースしたいと思わせたグループです。

大手のレコード会社から相手にされなかったので、

私財を投げ売り、(コレクションのレコードを売り払ったのですが)

自主製作盤を作って売りにだしたのですが、当然、売れはしなかったです。


それ以降、アウターリミッツは活動停止状態になります。

しかしながら、ライブはしないまでも練習は続けていたそうです。

再びウエノさんは、アウターリミッツに声を掛けます。

関西を中心に、ページェントやスターレスといった

プログレのグループが台頭し始めていた頃でした。


関東と関西のプログレが対決するような感じのオムニバスのソノシート

「プログレッシブバトル」にアウターリミッツも参加。

そして1985年5月のプログレッシブバトルライブというイベントは、

アウターリミッツにとって転機となるイベントでした。

参加したページェントに負けまいと、ヴァイオリンの川口さんに

女装をさせて演奏させるという事にも。

そしてその後も派手な衣装と女装は続いたといいます。


1985年にアルバム「ミスティームーン」を発売。

低予算ながら24チャンネルの録音に拘ったため、

3日で録音しなければならなかったのです。

その為、初期の頃から演奏されてきた曲が中心となっています。

しかしながら、初回プレスをすぐに完売させ、すぐに再プレス。

小さいシーンではありますが、認知度は上がっていったのでした。

https://www.youtube.com/watch?v=T2mYJFDcPx8


ラヴェルの「ボレロ」のリズムに合わせて演奏が始まる「プレリュード」、

(それ以外にもクラシックのオマージュを感じさせます)

中間部の間奏を何度となく録音し直して完成度を高めていった

グループの代表作の一つである、川口さんのヴァイオリンの演奏が冴えている

「ミスティームーン」、(個人的には大好きな曲)

ライブでも人気ナンバーだった「飽和溶液」等、どうしても

演奏し慣れた曲が中心となったのだけれど、インディーズらしからぬ

録音の良さと演奏の良さは流石です。僅かな日数で作られたとは思えないです。

なお、オリジナルメンバーの杉本正さんが、録音2週間前に

クラシックに専念する為に脱退というアクシデントがあったりもしています。

元々ギターをやっていた荒巻さんを2週間ベースの猛特訓をさせて

録音させたというのだから凄い話だと。


この時のメンバーは、

上野知己 ボーカル

川口貴  ヴァイオリン、ギター

塚本周成 キーボード

荒巻隆  ベース

桜井信行 ドラム      敬称略 



この頃が日本のプログレの歴史の中でも、一番盛り上がっていたと

されています。ライブハウスが満員御礼となる位だったのは、

なかなか想像がつかないです。

1985年に開催された14日にも渡る日本のプログレ史上最大のイベントの

「プログレッシブ・サーキット」は、大盛況だったといいます。

そこでアウターリミッツは完全に認知され、人気グループとなります。


1986年にはセカンドアルバムである「少年と不思議な角笛」を発売。

https://www.youtube.com/watch?v=RybT0cyA7gQ&t=75s


これはドラムの桜井さんが書いたファンタジーを元に作られた

コンセプトアルバムで、完成度は一番高いです。

オリジナルLPは、3面変形ジャケットで、中には絵本のようなイラストが

描かれています。

アウターリミッツは、クラシック関係の人も参加している為か、

クラシックをモチーフにしているものが多々あります。

この「少年の不思議な角笛」もタイトルはマーラーの歌曲集からだそうです。

物語を書いた桜井さんは、当時はマーラーやワーグナーに影響されていたそうです。

ヴァイオリンだけでなく、ゲストにチェロやコントラバスも加わった

一大プログレ叙事詩というべき作品ですね。

新橋ヤクルトホールで行われた、ページェントとのアルバム発売記念ライブは、

発売2時間で完売という人気ぶりでした。


1987年には、初期の頃の曲を新録したアルバム「ペールブルーの情景」を発売、

(ベースに石川正さんが加入、荒巻さんはギターに専念)

7月にはクラウンレコードから「マリオネッツ・ラメント」の

12インチシングルが発売されます。

ただ、この頃になるとあれだけあった勢いに陰りが見え始めます。

8月にサウンドの要だったヴァイオリンの川口さんが

オーケストラに専念する為に脱退、キーボードの塚本さんも

別グループの活動が本格化、1988年にはボーカルの上野さんが脱退。

結局、1989年に活動停止することになります。

(1999年に再結成後は、何度となく再結成し活動しています)

アウターリミッツは、間違いなく日本のプログレ史上で欠かす事の出来ない

重要なグループだと思いますね。


そしてメンバーについての補足。

ヴァイオリンの川口さんは、現在も日本フィルの楽団員の

第2ヴァイオリンの名簿に記載されているので、活動しているのでしょう。

元メンバーの杉本正さんもコントラバスで神奈川フィルに所属していましたが、

トラブルの為に退団しています。


そしてキーボードの塚本周成さんですが、ヴィエナというグループでの

活動もありましたが、実は塚本音楽学院の代表を長く勤めています。

(規模的には大きくないですが)

それでも小型のパイプオルガンも設置しています。


更にXJAPANのTOSHIのセカンドソロアルバムの編曲等や

当時のサポートメンバー、初期の頃のGACKTの編曲やオーケストラアレンジ等を

担当と、実は一番すごい人だったりします。

https://www.music-planet.co.jp/tma/tmats.html


驚いたのは、アニメ関係の仕事もShusei名義で少々やっていたこと。

『ピーター・グリルと賢者の時間』の音楽を担当していたとか。

コレってエ〇コメディなのに、いいのかと思ったりしますが。

挿入歌は美しい曲なんですけどね。(Shusei's Projectとしての曲)

https://www.youtube.com/watch?v=8kS8Ph3ZD60&list=OLAK5uy_lwE8movbbMrAht2lIK2Aq2PIVUeSUpTtM&index=1


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