第4話 夢幻

 とりあえず、ページェントからの流れでの紹介はある程度終わりましたが、日本のプログレ界は狭いものでして、メンバーの交流も色々あります。ここからは、その辺りの話で書いていこうと思います。


 まず、『夢幻』というグループから。因みにリーダー格の林克彦さんは、第3話で書いた夜来香にもキーボードで参加していたりしますが。


『夢幻』の歴史は古く、前身のバンドが結成されたのが1977年。プログレ志向のバンドを目指していたそうだけれど、キーボードを導入してから、シンフォニック系の色が強くなったと。一時期、オリジナルを作るために活動を休止しています。影響を受けたのは、19世紀の象徴派の文学や絵画、特にギュスターヴ・モローの絵画だったようですね。


 その後、デモテープの発売を経て、インディーズからアルバムを発売。当時はインディーズの規模は小さく、作られたのは数百枚程度でしたが、数週間で完売。それが『SINFONIA DELLA  LUNA』です。


 https://www.youtube.com/watch?v=JKYpe_Q7ACc&t=1050s


 ファンタジーに題材を求めた曲が多く、キーボードをたっぷりと使った楽曲は、不思議な世界を作り出しているよう。1曲目の組曲『月色のシンフォニー』の歌詞からは、パックやオベロン、タイタニア(ティターニア)が出てきます。シェークスピアの『真夏の夜の夢』をイメージしたものでしょうね。その他の曲も文学的な香りが漂ってくるような佳曲が揃っています。


 後になってからメイドインジャパンレコードから再発、そしてCD化もしています。 その時には、メロトロンを入れたりして一部は新録しています。(シングルのB面だった曲もボーナストラックで追加)

 残念ながら、現在は廃盤状態。再発は難しい所ですね。このアルバムは、自分にとっても非常に好きなアルバムで、CDのみならず、一番最初に発売されたアナログも探し出して購入。更に復刻版ですが、ライブ会場限定で発売したデモテープも購入。

それだけ思い入れのあるアルバムとなっています。モローの絵画を使ったアルバムジャケットも素敵な1枚です。

 人によっては、ボーカルが弱い、少しクセがあるとの意見もあります。確かに技術的からすると厳しい部分はあるかもしれませんが、個人的には、アルバムの世界観にピッタリ合ったボーカルだと思います。


 その後、セカンドアルバム発売の打診があり、さあこれからという時に、メンバーが脱退。話はおジャンに。しかしながら、今度はキングレコードのネクサスレーベルからの打診が。リズム隊がいないから無理と断ったら、何とノヴェラのリズム隊を用意するのだとか。(注:ノヴェラは一応、プログレ扱いですが、ヴィジュアル系の元祖ともいえる存在でした。中野サンプラザクラスの会場を満杯にし、女の子がキャーキャー言う様な日本のプログレバンドは彼らだけでしょうね)

 でも林さんは最初は迷ったそうです。理由は恐そうだったからだとか。(笑)結局、ネクサスからの打診を受け入れ、セカンドアルバム『レダと白鳥』が製作されます。


 https://www.youtube.com/watch?v=uUu66DL5ihY


『ノヴェラ』の西田竜一さん(ドラム)と笹井りゅうじさん(ベース)のドラゴンコンビに加え、『アウターリミッツ』の川口貴さん(バイオリン)、『ページェント』の宮武和宏さん(フルート)と中嶋一晃さん(ギター)まで参加のプログレオールスターズというべき布陣ですね。(こちらには参加していませんが、『冬夢』というシングルには、

『ページェント』で活躍していた、引頭英明さんと長島信行さんが参加しています。やっぱり『ページェント』との縁は深いです)因みに川口さんは、日本フィルハーモニー交響楽団で第2ヴァイオリンをやっています。


 神話やファンタジーの世界に、モローのような絵画やクラシック音楽が混じりあったというか、そんな美しい世界を感じさせる傑作ですね。レダに会う為にゼウスが白鳥に化けて会いに行くという『レダと白鳥』というモチーフは、多くの画家が描いていますね。ジャケットは当然、それをモチーフとしたものとなっています。

 そして美しい世界を彩るのがメロトロン。一般の人には馴染みのない機材でしょうが、プログレファンには、『キング・クリムゾン』の『クリムゾンキングの宮殿』に使われたといえばわかるかも。一般的にわかるようになら、『ビートルズ』の『ストロベリーフィールズ・フォーエバー』の冒頭に聴こえる音と言えばわかるだろうか。

 え?『ビートルズ』もわからない?ジェネレーションギャップというものですか……。(泣)


『SINFONIA DELLA  LUNA』がどちらかというと柔らかなイメージに対して、

『レダと白鳥』は、やや硬質になった感じですか。クラシックの影響は大きくなった感じですね。実際、ラヴェルの『亡き王女のためのパヴァーヌ』をアレンジして収録しています。しかしながら、本来は歌詞付きのものを収録する予定だったのが、この曲は歌曲ではないという事で許可が下りなかったそうです。仕方なくボーカル部分をリコーダーに変えて収録したとか。

 その後月日は流れ、なんと許可が下りたという事で、数十年後に再発した時には、本来のボーカル入りヴァージョンが収録されています。リコーダーバージョンは、今後はレアになるかも?


 https://www.youtube.com/watch?v=4kz0j2eNmF4


 その後は、3枚目のアルバムとして『過ぎ去りし王国の王女』をメイドインジャパンレコードから発売後、解散しています。


 https://www.youtube.com/watch?v=0fzTcJsR46U&t=916s


 そして1枚目と3枚目のアルバムは、その後も再発されていないので、レコードやCDの入手は非常に困難です。(フランスのMUSEAレーベルからCD化はされています)

 事実、自分も入手は苦労しました。新品もどこにもないですし。昔、運よく中古で入手は出来ましたが。(プレミアなしで)それ以後は、未だに中古さえ見かけないぐらいのレアな存在になりましたが、市場に出たらいくらぐらいになるのかは気になります。まぁ、日本のプログレを聴く人口は少ないから、とんでもない高値にはならないでしょうが。とはいえ、ごく一部のレア盤には、相当なプレミアが付いたものもあります。本当に極一部ですが。


 余談ですが、意外にプレミアが付いているのが、ゲームのサントラ。基本的に再発される事がないので、ものによっては凄いプレミアが付いています。

 例えば『スーパードンキーコング2  ディクシー&ディディー オリジナル・サウンド・バージョン』。〇ルカリとかで検索したら、唖然とするでしょう。某ジーパン刑事じゃないですが、「なんじゃこりゃあ」と言いたくなります。話がそれてすみません。


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