第2話 ミスターシリウス

 ミスターシリウスこと宮武和宏さんは、1985年に自らの名前と同じバンド、ミスターシリウスを結成します。当初のメンバーは……、


 宮武和宏(ミスターシリウス) フルート、アコースティックギター

 永井博子(後に大木理沙と改名) ヴォーカル

 藤岡千尋 ドラム          敬称略


 その時は、ページェントとしても活動していましたね。


 1986年にアルバム『バレンドリーム』発売。上記メンバーに加えて、大谷レイブンさん、小川文明さん、更にKENSOの清水義央さんもゲストで参加しています。


 https://www.youtube.com/watch?v=qDFLftFzjjo&t=2153s


 これも日本のプログレを聴くきっかけとなった、キングレコードのプログレッシブロックコレクションの中の1枚。(最初はメイドインジャパンレコードからの発売でしたが)

 穏やかな田舎の風景のジャケットもいいですが、中身を聴いたら衝撃でした。これはレベルが違うと。永井博子さんのボーカルも勿論魅力的ですが、かの日本のプログレシーンの重鎮の難波弘之さんも絶賛したという、まるでイタリアのPFMを思わせる楽曲。(真似というわけではないです)ページェントの音楽も素晴らしかったけれど、ミスターシリウスが本当にやりたかったのは、こんなスケールの大きいものだったのか。今風のデジタルな曲を好む人には勧められませんが、クラシックとか好きな人には聴いてもらいたいですね。勿論、プログレに抵抗が無い人にも。


 その後、ライブをするためにメンバーが補充されます。


 村岡秀彦 ベース

 釜木茂一 エレクトリックギター     敬称略


 年に1回、東京と大阪で行うライブの為に、練習は欠かせなかったとの事。


 そして1990年に、日本のプログレ史上でもトップクラスの作品である『DIRGE』が発売されます。


 https://www.youtube.com/watch?v=pZAi2zyNLdY&t=26s


『バレンドリーム』もヤバかったけれど、更にスケールアップした音楽観、

『バレンドリーム』が静なら『DIRGE』は動。

 プログレにアメリカンロックの爽快さを入れた感じとも言えるけれど、そんな薄っぺらい言葉ではないものがあると感じるでしょう。いや、言葉では表せられないというか、兎に角、脱帽です。


 最後の曲の『レクイエム(ニ短調)』が来るべきサードアルバムの予告編だと、CDの解説で宮武さんが自ら言っていましたが、残念ながら、サードアルバムは幻となりました。宮武さんが稼業を継ぐために、そちらの仕事に専念することになったからです。アルバム2枚と、前身であるバンドの『シリウス』の作品集、そしてオフィシャルブートレグの位置づけのライブアルバム。(あと、カセットテープのみの発売の作品集もありますが)

 残されたのはこれだけ。日本のプログレ史に残るバンドにしては物足りないです。



 そして近年、宮武さん自身の文を加えた解説が公開されています。配信記念の文との事です。


 ミスターシリウス『バレンドリーム』 オフィシャル ライナーノーツ

 https://news.kingrecords.co.jp/2023/11/22269/


 ミスターシリウス配信記念、アルバム制作当時の貴重な話の数々が蘇る

 https://news.kingrecords.co.jp/2023/11/22548/


 まぁこれがあれば、自分の駄文なんていらないですが……。

 特に後者は、本人公認の2時間にわたるミスターシリウスのライブ映像を

 MC含めて公開しています。(Youtubeに登録されています)あの美しいフルートを奏でているのが、コテコテの怪しい関西オヤジですからねぇ。ページェントの中嶋一晃氏の指導による賜物か、抱腹絶倒のトークも面白いです。っていうか、あの難曲をライブで再現するのは脅威以外の何物でもないです。お客さんの目はステージに釘づけで、離さないでいますよ。やっぱりタイムループして…… (こればっか)



 少々手抜き感があるので、その後のメンバーの事について書きますね。


 ミスターシリウスこと宮武さんは、経営不振となっていた稼業に専念します。稼業というのは、明治からの歴史を持つ傘屋の『心斎橋みや竹』。そして彼が取った方法が、何と当時はまだ確立されていなかったネットショップを利用した事です。ノウハウも何もなかった頃に自ら挑戦し、それを軌道に乗せたのは驚嘆以外の何物でもないです。ネットショップの先駆けとして伝説の存在ですね。

 また当時は、傘屋なのにネット通販のCD販売もやっていました。現在の肩書は、アンブレラマスターです。(日本洋傘振興協議会認定)


 https://www.kasaya.com/


 ドラムの藤岡千尋さんですが、実は元々ゲームクリエイターだった人です。スクウェアに移籍した時は、大阪開発部の部長を務めたとか。任天堂との共同開発の『スーパーマリオRPG』のディレクターをやったりしたとか。成程、凄い人だ。


 ギターの釜木茂一さんですが、藤岡さんから話をもらってゲーム音楽に関する仕事をしていたのだとか。昔のPC9800とか、ファミコンのゲームで使用されているのがいくつかあるみたいです。そして関わった中で一番有名だろう曲は『FINAL FANTASY Ⅹ』の『Otherworld』という曲。そこでギターを弾いているとか。(ドラムは藤岡さんが叩いています)


 https://www.youtube.com/watch?v=HHdnzcACcCs


 そして最近知った事実。何と釜木さんとザ・ピーズ、頭脳警察、人間椅子で有名なドラムの後藤マスヒロさんがミスターシリウスの『エターナルジェラシー』を2004年に録音していたのだとか。(現在は公開していません)マスヒロさん、守備範囲広すぎ問題。


 最後に永井博子改め大木理沙さんですが、アニメ系の曲を歌ったり、ディズニー映画の吹替に参加していたりしていますね。やはり魅力的なボーカルですからね。『剣勇伝説YAIBA』イメージソングの『あたたかい雨』とかいい曲ですね。


 https://www.youtube.com/watch?v=4_C3MM6Uzv8


 そして白眉は『ファイナルファンタジーシリーズ』のボーカルアレンジ集。2種類。


 https://www.youtube.com/watch?v=Sg-BUmx6428&t=393s  (PRAY)


 https://www.youtube.com/watch?v=tyl03gn4q6o (Love Will Grow)

 これは野口郁子さんとの共同名義  


 初期のFFの音楽に欠かせない人である植松伸夫さんが大のプログレ好きだからこそ実現したと思われます。そして現在はボイストレーナーとかやっていますね。それでも歌は歌い続けています。


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