教師と塔と子ども。子どもを助けたら面倒を見ることになりました
眠り人
第1話 草原と塔
これを読んでいるあなたは、どんな世界を”素晴らしい”と感じるだろうか。自分の思い通りになる世界、何不自由なく暮らせる世界、どんなものを思い浮かべただろうか。”素晴らしい”という言葉は人間が作り出したものだ。誰かが”素晴らしい”と感じれば、誰かは”糞くらえ”だとほざく、それが世界である。あなたはどちらだろうか。今から見てもらうのは、”糞くらえ”だとほざく二人が、それでも何かあるはずだと何かに手を伸ばす物語である。
目が覚めると、そこは大草原のど真ん中にいた。なぜここにいるかは分からない。知りたくもない。
「あー、どこだここ。」
あたりには、一つの巨大な塔があるだけだ。
まずは、現状確認だろう。僕の名前は長谷川 寝(ハセガワ シン)。男。一応、自分の股間に感覚を移し、確かめる。紛うことなき男だ。ああ、覚えている。それとともにいろんな記憶が蘇る。
「んー、僕自殺したはずなんだけどなあ。」
ここにいるということは死なずに何かあったか、死後の世界かどちらかだろう。てか、僕、案外落ち着いてんな。もう少し取り乱すものなんじゃね。普通。
しかし、明らかに鼻をくすぐる風は彼の知っているものではなかった。
「誰か居るかなあ。」
そもそも、彼は寝ることを最大の趣味としている。安心して寝られる環境を作ることが第一だ。そんなわけで、彼は雨風のしのげそうな一際大きな塔に向かうことにした。
「すみませーん。誰かいらっしゃいますかー。」
とりあえず塔の近くに来て、叫んでみた。塔はどれくらいの高さがあるか見当もつかないが、途方もなさそうなことだけは分かる。僕の懸命の叫びに対して、返事は無い。風だけが返事してくれる。
塔には、大きな扉があり、押すと中に入れそうである。
「入りますよー。」
彼は、扉を押して中に入る。中は螺旋階段のあるのみだ。
「え、登る?これ……どうすっかな。」
まあ、登らないとどうしようもないし、高いところに行けば街とか見えるかもしれないし、とりあえず限界まで登ってみるか。運動不足のこの体でどこまで行けっかな、これ。
彼の不安とは裏腹に一時間も登ると最上階にたどり着いた。まあ、息も絶え絶えではあったが。
「きっついわ、これ。はぁ、何かあるんかなあ。」
頂上からの景色は圧巻の一言であった。大草原を四方八方から見下ろすことができるようになっている。しかし、景色なんぞどうでもよくなるものがそこにはあった。檻と、鎖でぐるぐる巻きになっている人?らしきものだ。
「なんか、やばそうでね?」
おちつけ僕。分かっているだろう。短い25年という人生で危険なものに首を突っ込んだときほど面倒なことは無いと。ああ、そうだ、見なかったことにして帰るのがいい。ん?どこに帰ればいいんだ?帰る場所がないなら、こいつに触って見るのもいいか?よし触ってみよう。
彼はとりあえず行動してみるという悪癖があった。今回はそれが功を奏したと言ってもいいだろう。とりあえずこの場ではだが。
彼は目の前にある檻を”通り抜けた”。そして、鎖を触り、ある部分を”削り取った”。そしてその鎖をほどくと、見た目は12歳ほどの少女が出てきた。身体は所謂、繭みたいなものをまとっている。可愛い系というより、綺麗系?だろう。
「どゆこと?」
教師と塔と子ども。子どもを助けたら面倒を見ることになりました 眠り人 @sleeperwell
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