理不尽に対するささやかな抵抗 猿魔仮面視点
満足するまで泣いた俺は拡声器を持って外に出る。カウントダウンはもう1時間を切っている。
町の住民達が集まって居る避難所に行く。避難所は廃校である。今更何処に逃げても俺らは死ぬ。だからみんなで廃校の校庭に集まり最後の交流をしている。こうする事は元々町で決めていた事だ。
俺は廃校に着く。そしてボロボロのお立ち台に立つ。
住民達は何事かと俺を見ていた。俺は拡声器を使い集まった住民達に語りかける。
「信じられないかもしれないが俺は今日、本物の天使様に出会った。その天使様は創造神様に頼まれてこの世界を調査しに来た。
その天使様はこの世界の状況に対して本気で怒っていた。創造神様にこの世界の事を報告すると言っていた。そして「また会いましょう。」と去り際に言ってくれた。
天使様はこの世界をどうにかしようと頑張ってくれている。本物の天使様は俺らの味方になってくれた。」
住民達は俺の語りを聞いてくれている。
「だから俺らも直接は出来ないが神を名乗る女とユートピアの連中に抵抗をしよう。
天使様が頑張ってくれているんだ。俺らも絶望なんてせずに最後まで抵抗しようぜ。」
そう提案する。しばらく住民達は黙っていたが賛成の声を上げた。
そして最後の抵抗を行う。それは皆でお面を外してユートピアの連中に楽しく笑って騒いで、歌い踊っている光景を見せつけるのだ。
連中は地上の様子を見ている。今も俺らの周りをカメラが付いたドローンが何台も飛んでいる。もちろんアイツも俺らの事を見ている。
連中は俺らが絶望している所を楽しもうとしているだろう。対策としてこの町ではその絶望を見せない、その小さな抵抗としてお面を付けていたのだ。
しかしその抵抗も終わり。次はお面を外して絶望をしていないと言う意思を連中に見せ付けるのだ。
連中にとってこの光景はさぞ面白くないだろう。特に神を名乗るアイツは。
俺とアイツは元々幼馴染だった。ルッキズムと言う言葉が社会に染み込んだ頃、俺はアイツに告白をされた。
だが俺は不細工でアイツは美人で、アイツの周りはイケメンだらけで、俺はルッキズムに影響されていて、アイツから告白してくれたのに勝手に釣り合わないと思い込んで、俺はアイツの事が好きだったけどその告白を振った。
そしてアイツはその事が原因で振られた事を知ると怒って、「そんなにルッキズムが大事なら世界をルッキズムで染めるわ!そしていつか貴方を他の不細工と一緒に潰してやる!」と言って来た。
今になってその言葉通り俺はルッキズムの教祖になったアイツに潰されかけている。
ユートピアが出来てからは告白を振ったことをずっと後悔している、俺のせいでアイツは此処まで壊れたのだから。謝りたくても謝れない。今更好きだったと言っても多分信じてくれない。
だがその事を俺は一旦忘れることにした。アイツに謝るのは俺が先に死んでアイツが後で死んで地獄で再会した時だ。
だから俺はこの最期を楽しむ。絶望なんてしない。どうするかは分からないが魂を輝かせる。
「天使様見ているか?俺らはちゃんと輝けているか?」
そんな独り言を呟いて、住民達と共に最期の時間を楽しんだ。
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