第7話 才能と覚悟

俺は二人の後に続いて部屋を出て、別の棟にきた。

学校のような三階建ての棟、ここは教育棟と言われているそうだ。

中に入ると、学校の教室のように机やいす、教卓がある部屋がいくつもあった。

そのうちの一つの部屋に入った。


部屋に入るや教卓の上の端末を操作した。するとカーテンがかかり、扉のガラスも外から見れないように白く曇りガラスのように曇った。


九条はポケットから護符のようなものを取り出し魔法を放つように魔力を込めて机の上に護符を張り付けた。


するとその護符から俺たちを囲うように半径二メートルくらいの球体の白く透明な結界ができた。


九条はこの結界が俺たちの周りを取り囲んだのを確認し口を開いた。


「これは魔護符と言ってね、魔力を込めれば護符に書いた効果が使えるんだ。この魔護符は「静穏」の効果が書かれている。これはこの結界の中での音は出なくなる。時間制限はあるけどね。隠密や潜入によく使う護符だしね。」


俺は

「なんでそんな護符を使ったんだ?」


そういうと九条はまた少し口角を挙げた後話し始めた。


「君の魔法に関することなんだが、ちょっと厄介でね。ちなみに君の家系に魔法を使えたり、何か見れたりする人はいた?」


俺は寝耳に水で少しびっくりしたが俺の家族のことを思い出してみた。


俺の家族は祖父母と両親と姉が一人だ。だが、俺が七歳の頃、当時通っていたスイミングの林間合宿で他県に行っているとき家が漏電による火事で全焼した。両親と姉はその火事に巻き込まれて亡くなった。それ以降、俺は父方の祖父母に引き取られた。それまで、祖父母との面識はほとんどなかったが、愛情深く不自由なく過ごさせてくれた。感謝している。俺は昔の事故の事が頭をよぎり少しモヤっとした。


(今更、なんだっていうんだ。もう、いないだろう。)

俺は自分にそう言い聞かせて九条の言葉を思い出していた。


振り返ると俺の家族にそんなことしている人や超能力や霊感を持っている人はいなかった。祖父母もそうだった。特にそのような話を聞いたことはなかった。


俺は九条に

「いや、そういう人は知っている限りいないと思う」

と言った。


九条は

「そうか。それならちょっと後々厄介だな。まぁ、そん時考えればいいか。」


(適当だなぁ)俺はそう思ったが言葉には出さなかった。


「君はあの水晶に触れたとき白く発光したよね。まず、白色の発光というのが魔法師としてとても稀有でね。さっき光の三原色と適応の魔法の関係については話したね。適応が複数あると八乙女のように三原色同士が混じって別の色になるのも見せたから知っているよね。この三原色なんだけど三色すべて混ぜると何色になるか知っているかい?」


俺は急な質問で戸惑っていた。

「え、いや、、わからない」


九条は

「白色になる。つまり君は三つの魔法”すべてに等しく”適応がある。まぁ、私もすべてに適応があるからそこはあまり珍しくない。ただ、"等しく"というと話は別だ。私も適応の中でも強度の違いがあるから色はついている。だが、白色というのは魔法師をやっていて見たことがない。厄介といったのはこの稀有な適応能力を持っているから魔法師として色目で見られたり、色々厄介なことに巻き込まれるよということ。」


俺は、その話を後半の半分は聞かず、魔法が使えることと才能があることにうれしくなり高揚感が全身をめぐっていた。


「まじかぁ!!才能あんじゃん!!」


そういい目を輝かせていると九条が


「後半の話聞いてた?」

といったが俺は待ってく聞いていなかったため首を横に振った。

すると、

「はぁぁぁぁ。まぁ、いいか。それと、もう一つ厄介なことがある。君の魔法適性のほかに君は固有魔法を持っている可能性がある。まぁ、使えるかどうかは君次第だけど。厄介なのはこのことが他の魔法師に知られることなんだ。」


俺は

「なんでほかの魔法師に知られるとまずいの?」


「魔法師ってね、結構古くてね、平安の時代には陰陽師や祈祷氏がいて今、魔法師界でも有名なのが摂家の五家なんかは数多くの魔法師を輩出している。その魔法師達って結構自分たち大事みたいな考えの人多くて君のような特異な才能を持つ人なんか、囲い込んで自分のものにするか、魔法師として力が付く前に排斥させるかのどっちかなんだ。さっき、静穏の護符を使ったのも君の情報が私たち以外にわからないようにするために結界をわざわざ張ったんだ。ばれて一生こき使われる奴隷は嫌だろ?」


俺はそう言われてさっきの高揚感はなくなり冷静になっていた。


「あぁ、、それは嫌だ。」


そういい終えると俺に銀色のメビウスの輪のようなリングを差し出した。

「これは、擬態リング(カメレオンリング)と言って擬態させたいものを指定するとそれの擬態をしてくれるんだ。今回は君の魔法適性の擬態をするために君に渡しておく。あ、あと君魔力量も魔法を習っていないわりにかなり多いからそこも少し擬態できるようにしてあるから肌身離さずつけといてね。」


俺はもらったリングを右腕につけるとリングは俺の腕にくっつくように大きさを変えた。九条は俺がつけたのを確認すると


「これをつけてるときは強化と精霊魔法に適性のある黄色になるようにしているから忘れずに。もし君が魔法師として生きていかない選択をしても一度魔法の適性があると子は、それを隠して生きないと魔人や利用しようとする魔法師に見つかる可能性が高い。だから厄介ごとに巻き込まれたくなかったらこのリングはつけ続けるように」


おれはリングを見つめながら

「わかった。」と返事をした。


俺は自分の置かれている状況は今の話で理解できた。


九条は俺に選択をさせるようように


「君の力は君の心で悪人にも善人にもなれる。君の心はどっちかな?」

といった。


俺は、その言葉を聞き、魔法で襲われた時の場面が頭をよぎった。初めて見たときの焦燥感、恐怖、簡単に人が死んでいく様を見て怒りが蘇ってきた。


(人を生かし、救う人間になりなさい。)

優しい俺にささやくように誰かの声が頭をよぎった。誰の声だろう聞き覚えがない。


(俺の力で誰かを救えるのなら)


「俺、魔法師になるよ。」


そういうと九条はにやりと早乙女は少し安堵したようにため息を一回ついた。


九条は

「そういってくれてうれしいよ。これからは仲間だ。よろしく。」

そういい、俺の右手に手を差し伸べ握手を交わした。

話も終わり八乙女は結界の外に出た。俺も出ようとした時、気を失う前に九条が俺に何か言っていたことを思い出した。


俺は九条に聞いた。

「そういえば、助けてもらって気を失う前なんか言ってなかったけ?」


九条はその問いに


「いや?なんも。気のせいじゃない?」

ニヤッとしながら返答した。


俺のこの日から魔法師生活が始まった。








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