エルサの新装備
「喰らえっ!!」
俺は双銃を連射し、向かってくるゴブリンたちをハチの巣にする。
そしてエルサは、なんと回し蹴りでゴブリンをけん制し、さらに杖をロッドのように振りゴブリンを殴打……なんだか最近、エルサはよく前に出て戦っている。
サビューレ団長たちと話をしてから一週間……いまだに、リューグベルン帝国からの応援はない。
二週間ほどで応援に来るとは言ったらしいが、その間にもサルワが城下町上空を何度か飛んだ。
そしてついに、城下町にあった風車塔の一つを体当たりで破壊……被害が出てしまった。
俺とエルサは、冒険者として毎日討伐依頼を受けている。
おかげで、冒険者等級がE級に上がった。それに、弱い魔獣とはいえ何度も戦っているので、戦闘経験も積まれていく……自分で言うのは何だが、双剣、双銃、ハンマーの切り替え、連携攻撃も様になってきた。
好きなゲームキャラみたいに三種を切り替えて戦うのは気持ちいい。最初は双剣、チェーンソーみたいな剣、大鎌とか考えたけど……なんか凶悪だったからやめた。
と、こんな感じで冒険者をやっている。
戦いが終わると、エルサが考え込んでいた。
「エルサ、どうした?」
俺は銃のマガジンを交換しながら言う。
けっこう撃ったが、弾数にはまだまだ余裕がある。マガジンが二百個くらいあるけど、さすがに作り過ぎたかな。
エルサは、自分の服装や杖を見て言った。
「その……わたし、魔法師は基本的に前衛の補助って習ったんですけど……その、なんといいますか……わたし、もっと動けるし、戦える気がして」
「あー……確かにエルサ、前衛でもいけそうだよな。杖で殴るし、攻撃躱すし」
「はい。あの、見えるんです。飛んで来る矢とかも普通に躱せますし……」
最近わかったことだが、エルサの動体視力は半端じゃなかった。
飛んでくる矢を紙一重で躱したこともあるし、本来は俺が後衛の魔法師を守らなくちゃいけないんだが、接近されても動じずに攻撃を躱し、詠唱しながら近距離で魔法を叩きこんだこともある。
「何度か戦闘を経験して、自分の戦闘スタイルを見つけたのかもな」
「はい。わたし……接近戦もいけそうです。えへへ……学園に通っていたらわからなかったかも」
「あはは。よし、じゃあ依頼も終わったし装備変えにいくか?」
「……え?」
「その服じゃ動きにくいだろ? それに杖も、魔法を放つのと武器として使えるようにとあった方がいいだろ」
「で、でも……お金」
「共用の財布から出せばいいさ。グレイズさんからもらった謝礼もあるし」
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
「おいおい。甘えなくていいって。仲間の装備を整えるのは当然のことだしな」
というわけで……俺とエルサは武器、防具屋へ向かうのだった。
◇◇◇◇◇◇
やってきました武器屋さん。
この世界の武器屋に共通しているのは『店員がやたらフレンドリー』なところだ。
「あの、すみません……魔法師なんですけど、近接戦闘用の杖とかありますか? 属性は『水』で、等級は一級なんですけど……」
「はい!! もちろんございます。当店はあらゆるニーズに対応した武器を揃えております。地水炎風雷氷、どのような属性にも対応する武器がございますのでご安心を!! 気に入ったものがなければオーダーメイドも賜っておりますのでお気軽にお声がけください!!」
店員のお姉さん、勢いが良すぎる。
エルサは困ったように微笑みながらも相談し、そのまま店の奥へ。
俺も一人、店内をブラついている……うん、やっぱ剣はカッコいいな。
待つこと十五分。エルサが戻ってきた。
「レクス。お待たせしました」
「ああ、決めたのか?」
「はい。戦闘用のロッドと、蹴り用のレガースを買いました」
「け、蹴り?」
「はい。魔法で身体強化すれば、けん制の攻撃くらいはできるかなと思って」
そういや、ゴブリンを蹴ってたよな。
それから、エルサ用に調整したロッドを店員さんが持って来た。
今までのは木の杖に宝石みたいなのがくっついていたが、新しいのは鉄製で、先端が丸くなっている。そこに水色の宝石が埋め込まれていた。
エルサはロッドを手に軽く振る。
「思ったより軽いですね……」
「ミスリル製ですので頑丈です。殴ったくらいじゃ壊れませんので!!」
「ありがとうございます。気に入りました!!」
「はい。こちら、グリーブもどうぞ。となると……今の服装では少し動きにくいですかね。このまま防具屋に行くのでしたら、ご紹介することもできますが」
「あ、じゃあお願いします」
「はーいわかりました。新規お客様ご案内でーす!!」
そのまま隣の防具屋へ……別の店員さんにバトンタッチし(マジでその場でハイタッチした)、防具屋の店員お姉さんはエルサに言う。
「お客様、魔法師であり近接戦闘もこなしたいとのご希望で!! 武器はロッドにレガースなら……ふむ、今のロングスカートはやめて、ミニで勝負しましょう!!」
「み、ミニ……」
「はい!! ああ、もちろん下着は見えないように専用のスパッツを履きますのでご安心を!! それと……僭越ながらアドバイスを。上半身の装備も少し手入れをしましょうね~!!」
「あ、あの……お、お手柔らかにお願いします」
「はいは~い!! ではでは、身体のサイズを測ります。そちらの彼氏さん、彼女の身体を知り尽くしているならいてもいいですが、そうでないのなら店内をご覧になってお待ちくださいね~」
「あ、はい。じゃあエルサ、またあとで」
俺はその場から離れる。
防具か……そう言えば、俺も防具を何とかした方がいいかもな。
「俺も装備整えようかな……武器だけは立派だけど、ジャケットとズボンだけじゃ防御に不安あるぞ」
サビューレ団長みたいな全身鎧じゃなくて、軽くて邪魔にならない、頑丈なヤツがいいな。
適当に防具を眺めていると、別の店員さんが近づいてきた。
「いらっしゃいませ!! お客様、防具をお探しで?」
「あ、はい。まあ……」
「うちは何でも揃っていますよ!! 全身鎧から鎧用の肌着まで何でもござい!! ささ、ご希望は?」
こっちもテンション高いな……商売上手というか。
「えーと、今の服装のままで、急所を守れるような軽い装備があれば」
「ございます!! ふむ、お兄さんは双剣士ですね? では、ジャケットを脱いで、その上に胸を保護する胸当てなどいかがでしょう? それと、両腕を守る籠手に、足を守る脛当ても!!」
「え、えっと……軽いやつで」
店員さんがぐいぐいくる。
結局、胸当てと籠手と脛当てを購入。双剣用の新しいベルトもサービス価格で売ってくれた……やや押されて買った感があるけど。
まあ、手足の防御に心臓を守る胸当てがあれば文句ない。
籠手の具合を確かめていると、エルサが戻ってきた。
「あ、あの……レクス」
「ん? おお、装備は決まっ……」
振り返ると、エルサがいた。
今までと装備も、服装も全く違う。
店員さんが言った通り、下半身はミニスカートになっていた。膝まであるスパッツを履き、さらに足を覆うグリーブも履いているので露出は少ないが……ロングスカートの時とは全然違う。
上半身も、動きやすいように薄手のシャツに着替え、オシャレな皮の胸当てを装備。水属性を象徴する紋章が刻まれたマントを羽織り、腰のベルトにはロッドが差してあった。
長い薄水色の髪はポニーテールにまとめ、羽を模した髪飾りを付けている。
恥ずかしいのか、胸元を手で押さえモジモジしているエルサ……正直、可愛い。
ゆったりしていたローブだったから今まで気付かなかったけど……エルサってけっこう、胸あるんだな。って俺は何を考えているんだ。
「ど、どうでしょう……か」
「いや、驚いた……すごいな。似合ってるぞ」
「……っ、あ、ありがとうございます」
店員二名がニヤニヤしながら見守っているのが微妙に不快だ……おのれ。
支払いを済ませて外に出る。
「「ありがとうございました~!!」」
最後までテンションの高い店だった。
俺は恥ずかしがっているエルサに言う。
「さて……メシでも食いに行くか」
「……はい!!」
互いに新装備。これでさらに戦力アップだ!!
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